流行時期(いつ流行った?)
チャビー・チェッカーさんの「ツイストNo.1(ザ・ツイスト)」は、昭和37年(1962年)にヒットしました。
『ミュージックマンスリー』の月間売上ランキングによると、下記の売上推移を記録しています。
年月 | 順位 |
昭和37年03月 | 6位 |
昭和37年04月 | 3位 |
昭和37年05月 | 10位 |
昭和37年06月 | 13位 |
参考)『ミュージックマンスリー』洋楽の月間売上ランキング
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 UMG(ABKCO Music and Records, Inc. の代理); LatinAutor, UMPI, BMI - Broadcast Music Inc., LatinAutor - PeerMusic, Exploration Group (Music Publishing), LatinAutor - Warner Chappell, UNIAO BRASILEIRA DE EDITORAS DE MUSICA - UBEM, CMRRA, EMI Music Publishing, Wise Music Group, ARESA、その他 19 件の楽曲著作権管理団体
動画の音源はレコードとは異なっており、おそらく後にステレオで再録音された音源ではないか?と思います。
原盤では、バックのコーラスがそれほど表に出て来ず、チャビー・チェッカーさんの歌唱がメインになっています。キーも低いように感じます。
日本でも話題、しかし大ブームにならなかった?
チャービー・チェッカーさんの「ザ・ツイスト」は、アメリカのビルボードチャートで、1960年と1962年に1位を獲得したという、とても珍しい記録が残っています。
1962年の方が人気が高く、ブームとなったこの年に日本で発売されています。
「日本ではどれくらい流行ったんだろう?」と考えていますが、おそらく海外に比べるとヒットの規模は小さかったように感じます。
ヒットチャートでは首位を獲得しておりませんが、初登場6位という、わりと上位でランクインしている点が気になります。おそらく前評判はかなり高かったと推測されます。
「アメリカでは"ツイスト"っていうのがすごく流行ってるんだって!」という噂は、レコードが発売される以前から日本で報じられていたようです。
3月に発売された小林旭さんの「アキラでツイスト」の歌詞カードには、以下のようなコメントが印刷されています。
ことしのはじめ二週間ばかりアメリカに遊びに行ってきましたが、アメリカはツイスト一色にぬりつぶされていました。どこの街角でも、どこのドラッグ・ストアでも、ジューク・ボックスから流れるツイストにあわせて若い人たちが楽しそうに踊っていました。
二週間のあいだに、ツイストというニュー・リズム、ニュー・ダンスにぼくのハートはすっかりしびれちゃいました。アメリカのえらい評論家は「これは現代文明に対する革命である。ツイストで破滅することによって、人間本来のナマの姿に立ちかえろうとする意義ある革命だ」といっていますが、そんな理屈は抜きにしてもとても楽しいダンスです。
アメリカでは、「ダンスのできない人たちのためのダンス」とツイストのことをいっていますが、そのようにだれでも踊れるのがツイストです。きまったうるさいステップは何もありません。アフター・ビート、つまり後打ちのツイストのリズムを聞いていると、自然にリズムにあわせて足がスイングしてきます。それでいゝんです。このリズムにあわせて足、ひざ、そしてヒップをスイングしましょう。それでもう十分。あなたはツイストが踊れます。
踊るアホウに見るアホウ、どうせアホウなら・・・・・・・・・。そうです。ぼくがあなたのお相手をしましょう。さあ、ぼくといっしょに楽しくツイストを踊りましょう。
小林旭さんの取材?によると、アメリカでは年明けにはすでにツイストが流行していたようです。売上ランキングを掲載している雑誌の『ダンスと音楽』でも1962年2月号~4月号で、3か月に渡ってツイストの踊り方を特集しています。
1962年の日本は、海外で流行している音楽を積極的に取り入れていた時代です。おそらくレコード会社は、ツイストが日本でも大ヒットする事を見据えて、かなり力を入れて宣伝や企画をしていたのだろうと推測されます。
邦題が「ザ・ツイスト」ではなく「ツイストNo.1」となっていますが、これは1950年代に日本でブームとなったマンボの流行に匹敵すると予想していた事の現れだと考えています。
マンボの代表的なヒット曲であるザヴィア・クガート楽団さんの「マムボ第五番(Mambo No.5)」を意識した邦題と感じます。
誰でも踊れるダンス
小林旭さんの解説がツイストを的確に表現していますが、誰でも踊れるダンスである事がブームのきっかけだったようです。「ツイストNo.1」には、1970年代のディスコサウンドのようにステップの説明が印刷されています(下図)。
動画で実際の踊り方を確認できますが、男女が手に手を取ってペアで踊るのではなく、一人で踊るスタイルが特徴です。1960年代のダンス事情は詳しくありませんが、後に登場するゴーゴーやモンキーダンスと呼ばれるダンスに共通しているような気もします。
日本ではツイスト関連の作品が色々発売されたものの、1962年4月をピークに姿を消し始めます。
ヨーロッパではブームが続いていたようで、「L'éclipse twist」や「Go-Kart Twist」がヒットしています。
映画を経由して2曲とも日本でもヒットしましたが、それぞれ「太陽はひとりぼっち」(1962)や「太陽の下の18才」(1963)と、"ツイスト"という表現が消えた邦題でレコードが発売されています。
DA PUMPさんの「U.S.A.」(2018)で"ツイスト"が登場します。日本では1980年代に5、60年代の洋楽がオールディーズとしてブームとなった時期がありますので、その時期に若者の間で人気が再燃していたのかも知れません。
楽曲分析
バンドプロデューサー5の分析では、「ツイストNo.1」はEメジャー(ホ長調)です。
用いられている音階は全音階的長音階です。
「ツイストNo.1」は冒頭のサックスの音色を聴いた時点で、作品の世界に引き込まれる印象を受けます。
おそらく同時に聴こえて来るドラムが刻むリズム、4拍子で刻まれるリズムが聴き手の心をとりこにする要素を備えているのだろうと思います。
このリズムは、途中にブレイクで鳴り止む部分があるものの、最初から最後まで聴こえてきます。
聴いている間、何も考えなくても済むような、なぜか聴き手を楽にさせる不思議な力を備えたリズムと感じます。
曲情報
1962年 年間 15位(洋楽)
レコード
発売元:日本ビクター株式会社
品番:JET-1054
全世界を風靡する新しいロック・ダンス、ツイストの本命盤!!
A面
「ツイストU.S.A.」
原題:TWISTIN' U.S.A.
演奏時間:2分31秒
B面
「ツイストNo.1」
原題:THE TWIST
演奏時間:2分35秒
参考資料
「ツイストNo.1」レコードジャケット
「アキラでツイスト」レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
『ダンスと音楽』ダンスと音楽社
「バンドプロデューサー5」