今回は、音楽ではなくデザインに偏ってしまう内容かも知れません。昭和43年頃のレコード業界に目に見える形で登場した、大変奇妙な流行である“サイケデリック”と呼ばれるジャンルについて取り上げます。
この流行は、レコードジャケットでの流行と捉えています。初めに登場したのは昭和42年のヒット曲、ジェファーソン・エアプレインさんの「あなただけを」です(下図:レコードジャケット抜粋)。
画像の“あなただけを”のように、特徴的な輪郭の中に、文字がピッタリ収まるようにデザインをする手法が、日本のレコード業界で流行した“サイケデリック”です。
このデザインが、昭和43年の日本でヒットしたレコードジャケットでもたくさん登場しました(下図)。
この流行がブームとなっていた時期に、ザ・ヒューマン・ベインズさんの「ノー・ノー・ノー」がヒットしました。
昭和43年3月に発売され、順位は低かったもののロングセラー型の売れ方をしました。
“サイケ”と略されるこの分野の定義を調べると、当時合法だった幻覚剤LSDを服用したときに見えてしまう幻覚と言いますか、要は“薬物による陶酔した感覚を表現しよう!”と試みたジャンルであるようです。
幻覚が見えるような薬物を禁止するのは当然であると思いますが、LSDは2年後の昭和45年には危険な薬物に指定されました。
世の中の様々な流行を吸収できるレコード音楽ですが、音楽作品に対してこの定義をした事は大変理解しがたいです。
サイケデリックは、先ほどのようなレコードジャケットのデザインの中での流行であり、音楽性には何の関連性も無いと捉えています。
薬物など無くとも、音楽には聴き手に中毒性を与える性質を備えている、と考えています。“好きでもないのに、なぜか頭の中で繰り返されるメロディ”や、“何度も同じ曲を聴きたくなる”といった経験は皆さんお持ちだと思います。
「ノー・ノー・ノー」のようにテンポの良い楽曲も、「あなただけを」のように歌唱力を備えた楽曲も、表現に違いはありますが、聴き手の気持ちに高揚感を与えてくれます。
バンドプロデューサーの分析では、「ノー・ノー・ノー」はDメジャー(ニ長調)です。演奏時間が短く、単純な繰り返しが印象的ですが、これは前年にヒットした「バラ・バラ」や「ハンキー・パンキー」のヒットの流れも汲んでいるように感じます。
曲情報
発売元:東芝音楽工業株式会社
品番:CR-1858
A面
「ノー・ノー・ノー」
原題:NOBODY BUT ME
演奏時間:2分16秒
B面
「スエノ」
原題:SUENO
演奏時間:2分12秒
参考資料
「ノー・ノー・ノー」レコードジャケット
「あなただけを」レコードジャケット
「ケメ子の歌」レコードジャケット
「花の首飾り」レコードジャケット
「悲しくてやりきれない」レコードジャケット
「サイモン・セッズ」レコードジャケット
「愛のさざなみ」レコードジャケット
「愛の奇跡」レコードジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
「バンドプロデューサー5」