ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。戦前戦中をけんきゅうちゅう。

「霧のカレリア」ザ・スプートニクス(昭和41年)

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流行時期(いつ流行った?)

 昭和40年代、エレキギターの演奏は世界中で流行していたようです。日本ではベンチャーズさんが支持されましたが、ベンチャーズさんに続いて支持を集めたのは、北欧スエーデンのグループ、ザ・スプートニクスさんでした。

 

 ザ・スプートニクスさんは「霧のカレリア」が昭和40年末から昭和41年初めにかけてヒットしました。年単位で区切ると、昭和41年の方がヒットの規模が大きいため、昭和41年のヒット曲にさせていただきます。

 

 『ミュージックマンスリー』のランキング推移は下記の通りです。

 

集計日付 順位
昭和40年10月 15位
昭和40年11月 4位
昭和40年12月 1位
昭和41年1月 1位
昭和41年2月 1位
昭和41年3月 2位
昭和41年4月 14位

 


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注)ザ・スプートニクス - トピックの動画

 

 

 

テンポよりメロディの価値観を持つ作品

  ザ・スプートニクスさんの作品は、ベンチャーズさんが表現する音楽とは全く異なる価値観を備えています。それは、新しい楽器が奏でる音色をスピード感で表現するのではなく、メロディを重視されている点です。

 

 『アメリカのベンチャーズさん 対 ヨーロッパのザ・スプートニクスさん』といった構図でしょうか、ヨーロッパのエレキサウンドは、メロディが良いかどうかが作品の評価基準だったのかも知れません。

 

 たしかに映画音楽の世界で考えると、日本人でも理解できるメロディの良さが尊重されているように感じます。昭和3、40年代に登場したエレキギターという電子楽器に対しても、ヨーロッパの人たちは、「そのような音色でどのような音楽を作るつもりなのか?」と疑っていた事と思います。

 

 結果として評価されたザ・スプートニクスさんの作品は、米国と西洋の音楽に対する価値観の違いを暗に示しているようで興味深いです。

 

 そして、それを支持された方々はベンチャーズを支持する層とは若干異なるように思います。

 

 それが年齢層だったのかどうかは、月間の売上ランキングだけでは分かりませんが、3ヶ月連続で首位を獲得した「霧のカレリア」のヒットの背景には、レコード会社が1、2年かけても見つけられなかった支持層がいた事を物語っているように感じます。

 

昭和41年もエレキギターブームが続いていた

 エレキギターの演奏曲が初めて登場したのは昭和39年です。この年の代表的なヒット曲には、ノッテケ×2のアストロノウツさんの「太陽の彼方に」や、ウイリーと彼のジャイアンツさんの「恋のときめき」があります。

 

 昭和40年にベンチャーズさんが次々とヒット曲を記録し、『勝ち抜きエレキ合戦』というテレビ番組が企画されるくらいのブームとなりました。おそらく、ピークとなったのはこの年と思われます。

 

 ザ・スプートニクスさんが登場したのは、日本中にエレキギターの演奏曲が浸透した昭和41年です。

 

 登場されるまでに、日本で支持されていたエレキギターのインストールメンタル作品は、テンポが早く、同じメロディを繰り返すような、リズム感のある作品ばかりでした。

 

 その中で、エレキギターの音色で愁いを感じさせるメロディを演奏する「霧のカレリア」が支持を得ました。

 その後「空の終列車」、「涙のギター」と、ザ・スプートニクスさんのヒットが続きます。

 

 

洋楽と邦楽のあいだ

 昭和41年はヒット曲の歴史では特別な年です。それは、洋楽レーベルと邦楽レーベルを別々に集計する事が一般的だった時代に、洋楽を目指した邦楽作品が洋楽レーベルのランキングに登場し始めた事です。

 

 「バラが咲いた」やスパイダースさんの作品が、洋楽ランキングに登場し始めた年です。

 

 エレキギターで演奏するグループの作品にも変化がありました。ベンチャーズさんは、昭和41年の代表的な日本のヒット曲、加山雄三さんの「君といつまでも」をレコード化され、ザ・スプートニクスさんも、すぎやまこういちさんの作曲された「涙のギター」の演奏をレコード化されています。

 

 どちらもヒットしましたが、海外歌手が国内の作品を取り上げた事、その作品が支持された事に価値観の変化を感じます。

 

 コニー・フランシスさんをはじめとして欧米の人気歌手がファンのために日本語で吹き込んでくれたカヴァー・ポップスの時代とは違い、エレキの時代では、「海外アーティストが日本の音楽を認めてくれたのではないか?」と個人的に感じています。

 

 

 バンドプロデューサーの分析では、「霧のカレリア」はBマイナー(ロ短調)です。演奏曲なので聴く作品と感じますが、分かりやすい繰り返しで気分を高揚させる作品というより、鑑賞するような、癒し系という表現も違うと思いますが、方向性は似ていると感じる作品です。

 

曲情報

 発売元:日本グラモフォン株式会社

 品番:DP-1449

 A面

  「霧のカレリア」

  原題:KARELIA

  演奏時間:2分20秒

 

 B面

  「ハバ・ナギラ」

  原題:HAVAH NAGILA

  演奏時間:2分14秒

 

参考資料

 「霧のカレリア」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 「バンドプロデューサー」