流行時期(いつ流行った?)
ザ・キング・トーンズさんの「グッド・ナイト・ベイビー」は、昭和43年(1968年)5月に発売されました。オリコンの記録によるとヒットしたのは翌年の昭和44年(1969年)でした。
最も流行したのは、昭和44年3月です。「グッド・ナイト・ベイビー」は春が来た頃にヒットしています。
注)ザ・キングトーンズ - トピックの動画
オリコンのヒットチャートでは首位を獲得できておりませんが、その理由は、いしだあゆみさんの「ブルー・ライト・ヨコハマ」が大ヒットしたからです。
本来なら首位の座に着くはずだった「グッド・ナイト・ベイビー」ですが、同時期に支持を集めたライバルが、昭和歌謡の代表作の1つである「ブルー・ライト・ヨコハマ」ですので、やむを得ないと感じます。
後世に残る作品が同時期に複数ヒットする事は、流行歌の世界では自然な現象と捉えていますが、無機質に数値で表すヒットチャートの世界で見ると、少し残念です。
昭和に流行ったR&B
「グッド・ナイト・ベイビー」は、昭和歌謡と分類されている印象を受けます。しかし、作品を聴くと、音楽の根っこというか、ルーツが歌謡曲では無い事が分かります。
それはレコードジャケットの解説に記載されている"ヴェテラン・グループ"が歌うR&B(リズム・アンド・ブルース)の作品だからです。
流行歌について語るとき、昭和43、4年は、グループ・サウンズやフォーク・ソングの流行が取り上げられます。しかし、その流行より短期間で規模が小さいながらも、R&Bが流行していました。
海外に由来する音楽であるR&Bは、平成時代のカッコイイ歌手が扱うジャンルと捉えていましたが、昭和40年代末に登場していました。
きっかけは昭和43年の洋楽ヒットである「ドック・オブ・ベイ」、「ホールド・オン」の存在だと思われます。
ヒットの規模で考えると、オーティス・レディングさんの「ドック・オヴ・ベイ」が、日本でのR&Bブームの立役者かも知れません。
小規模に終わったR&Bブーム
フォークソングと異なり、数人の若者の想像力だけでは表現できない音楽であるR&Bは、ピンキーとキラーズさんやザ・キング・トーンズさんといったコーラスが出来るグループの作品で企画されました。
ソロ歌手では、和田アキ子さんがデビューされたのがこの時期で、R&B調の作品を発表され、支持を得ていました。
もしかすると、歌謡曲やフォーク、アイドルポップスとは異なり、和製R&Bは、曲作りには大変時間が掛かったのではないか?と思われます。
それだけこの時期にヒットした和製R&Bのヒット曲は独特の世界観を備えていると感じさせる作品が多いです。
R&Bはルーツが日本の土壌とは異なる事がハンデとなるため、楽曲を製作する難易度が他のジャンルに比べて高く、気軽に作品を生み出せず、大きな流行にはならなかったのではないか、と感じています。
西洋の価値観で描かれた歌詞
エレキギターの音色が印象に残るグループサウンズのブームが落ち着き、フォークのギターで歌われる作品が増え始める時期の合間に「グッド・ナイト・ベイビー」はヒットしました。
曲調はとてもゆっくりとしていて、タイトル通り子守唄の印象を受けます。サウンドだけで海外の文化を感じますが、歌詞がその世界観とピッタリだと感じます。
子守唄の対象となっているのは赤ちゃんでは無く、自分の恋心を親に否定されて悲しんでいる女の子です。
年齢は分かりませんが、リード・テナーの内田正人さんが優しい歌声でなぐさめる言葉に”きみのパパ”というフレーズが出てきますので、中学生くらいの若い世代だと思われます。
いつか君のお父さんも、我が子の気持ちを尊重してくれる時が来る、と歌われていますが、この視点の歌詞は、それまでの歌謡曲には存在しなかったと感じます。
登場人物が、喜びや悲しみの心情を口にするのが歌謡曲の歌詞ですが、「グッド・ナイト・ベイビー」は、主人公の心情を代弁する第三者の視点で歌詞が書かれています。
もしも、その姿が見えたら、泣いている女の子も「えっ、誰?」となってしまいます。そのため、キューピットのような天使が女の子に語りかけているような想像します。
その言葉が主人公の耳に届いているのかどうかも描かれていませんので、“見えない存在が見守っている”という印象を受けます。
パパと表現する点でも充分ですが、若い女の子の恋愛に関する悲しみなので、歌詞の世界観を解釈する際に、どうしても海外の文化を取り入れているように感じてしまいます。
「バンドプロデューサー5」の分析では、「グッド・ナイト・ベイビー」はB♭メジャー(変ロ長調)です。
曲情報
発売元:日本グラモフォン株式会社
品番:SDP-2023
A面
「グッド・ナイト・ベイビー」
英題:GOOD NIGHT, BABY
作詞:ひろ・まなみ
作曲:むつ・ひろし
演奏時間:3分14秒
B面
「捨てられた仔犬のように」
英題:LIKE A CASTOFF PUPPY
作詞:加生スミオ
作曲:加生スミオ
演奏時間:3分9秒
参考資料
「グッド・ナイト・ベイビー」レコードジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
「you大樹」オリコン
「バンドプロデューサー5」