流行時期(いつ流行った?)
ザ・トルナドース(THE TORNADOS)さんの「テルスター」は、昭和38年(1963年)にヒットしました。
月刊ミュジック社発刊の『ミュージック・マンスリー』に掲載されている「今月のベスト・セラーズ」のランキング推移は下記の通りです。
ベストテンに入ったのは4月のみですので、それほどヒットしなかったのかも知れません。
年月 | 順位 |
昭和38年03月 | 12位 |
昭和38年04月 | 4位 |
昭和38年05月 | 13位 |
レコードには"ザ・トルナドース"と書かれていますが、後年では”ザ・トルネイドース”と表記されているような気がします。
注)The Tornados - トピックの動画
宇宙時代をイメージした演奏曲
「テルスター」は人工衛星の名称です。地理的に遠く離れた国のテレビに、同じ時間に同じ映像を送る技術を実現する目的で打ち上げられました。
衛星中継はこの時期に話題となっていたようです。この作品がヒットした1963年には日米間での同時中継も実現しています。
歌詞カードの解説には当時の雰囲気が感じられる説明が書かれています。
1962年のマス・コミュニケーションの最大の話題は何といってもアメリカの通信用人工衛星「テルスター」の打上げ成功だったでしょう。パリの放送局とニューヨークのそれとの電波を交互に受け取って、テルスターを中継して大西洋を越えての同時TV放送が実現したのですから、これは欧米各国にとっては、リンドバークの大西洋無着陸横断飛行以来の快挙であり、話題であった訳です。そのテルスター衛星に最初に乗った歌い手は、シャンソンのイヴ・モンタン、時々画面はゆれながらも、鮮やかに歌ってのけたのです。
1960年代の宇宙に関する出来事では、アポロ月面着陸だけが語り継がれているように感じますが、有人宇宙飛行に続いて衛星中継と、科学技術の進歩を物語る出来事を次々と目の当たりに出来る時代だったのだと感じます。
おそらく多くの人たちが、未来は明るいと感じていた時代と感じます。
未知の世界の探求は人間の想像力をふくらませてくれます。この作品が製作されたきっかけも、 不可能と考えられていた事が実現されていく事が原動力だったと思われます。
音楽で表現される宇宙
この作品が独特の音楽表現をしていると感じるのは、曲の始まりや終わりに聴こえて来る謎めいた効果音です。出だしのエフェクトは、人工衛星を搭載したロケットの発射のシーンを表現していると思います。
演奏では電子オルガンがメインになっています。当時の演奏曲で人気だったサックスやトランペットといった、人間の息遣いを感じる吹奏楽器ではなく、押せば音のなる鍵盤をメインの楽器に選んだ点は興味深いです。
エレキギターも用いられていますが、音を増幅させ、従来の楽器では出せない音色を表現できる電子楽器の響きは、信号のような無機質な響きを備えているためか、頭で描く宇宙空間のイメージに結び付きやすいです。
エレキギターの演奏が始まるころは宇宙空間に到達しているイメージなのかな?と思います。
曲の終わりに聴こえて来る効果音は、何をイメージしているのかよく分かりません(^^;A。この音はどうやって作り出したのでしょう?
楽曲分析
バンドプロデューサー5の分析では、「テルスター」はAメジャー(イ長調)です。終盤にDメジャー(ニ長調)に転調しているような気がします。
電子オルガンの響きが最も印象に残りますが、コーラスが吹き込まれている部分もあり、聴こえて来る音が変化していく様子も聴いていて面白さを感じます。
この作品で面白いのは、1つのフレーズが終止するタイミングで、次のフレーズの演奏が始まっている点です。
曲を聴いている側にはひと段落する間がなく、「演奏はどこまで続くのだろう?」という気持ちにさせてくれます。
16ビートのリズムも、聴き手にスピード感を与えていると思います。
途中でエレキギターも登場しており、翌年に登場するサーフィンサウンドに共通する要素を備えている作品と感じます。
曲情報
1963年 年間35位(洋楽)
レコード
発売元:キングレコード株式会社
品番:HIT(L)-23
A面
「テルスター」
原題:TELSTAR
B面
「ジャングル・フィーヴァー」
原題:JUNGLE FEVER
参考資料
「テルスター」レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
「バンドプロデューサー5」