流行時期(いつ流行った?)
エミー・ジャクソンとスマッシュメンさんの「涙の太陽」は、昭和40年(1965年)にヒットしました。
『ミュージックマンスリー』の"洋楽の月間ランキング"によると、2月に発売されたレコードは、6月~9月にかけてヒットしています。
年月 | 順位 |
昭和40年05月 | 13位 |
昭和40年06月 | 3位 |
昭和40年07月 | 1位 |
昭和40年08月 | 3位 |
昭和40年09月 | 3位 |
昭和40年10月 | 12位 |
昭和40年11月 | 19位 |
注)エミー・ジャクソン - トピックの動画
すぐにバレたであろう日本人製作の洋楽盤
当時、洋楽で人気を集めていたのはビートルズさんとベンチャーズさんです。
この2大アーティストは東芝音楽工業さんから発売されており、おかげで他社の洋楽部門の成績が相当落ち込んだようです。
ビクターさんのようにエルヴィス・プレスリーさんのようなスター歌手を持たない日本コロムビアさんは、"日本人が製作した楽曲を洋楽として発売する"という奇策を実行されます。
レコードの解説には、
"どうもこの頃のヒット・ソングはパッ!!としないな。なんか一つぐらい腹にこたえるような曲はないもんかな" 最近のヒット・ソング界は、あなたも私も大分ニツマっているようす。街を歩いていても、よくこんな言葉が耳にとびこんできます。 ちょっと見わたしてみても、アメリカのポピュラー界をリードしてきた既成のR&R。現在、日の出のいきおいにあるウェスト・コースト・サウンド。イタリアのカンツォーネ・・・・・・etc。 これらが日夜激しい争奪戦を演じているんですから大変なもの。これでは市場はまったくの混線状態です。 でも、悲観するのはまだ早すぎました。とにかく一度このレコードをお聞きになって下さい。ニツマリ解消をもたらすルーキー”エミー・ジャクソン”のデビュー・ヒット盤です。
と書かれています。
日本人が製作した事には触れていません。
しかし、レコード盤に作詞者の湯川れい子さんを"R.H.Rivers"と表記しているものの、作曲者の中島安敏さんは"Y.Nakajima"と印字されています。
なぜ湯川さんのようにセントラル・アイランドみたいにしなかったのでしょうか・・・(^^;A。
レコードを購入された方は、「あれ?日本人が作ったの?」と一目瞭然だったと思います。
『日本人が製作した楽曲を洋楽として発売する事例』には前例があります。日本グラモフォンさんが発売された「暗い港のブルース」(1963)は、早川博二さん作曲です。
当時の音楽業界では「誰が作ろうと、洋楽レーベルから発売するもの=洋楽」という価値観が勝っており、特筆する程の奇策では無かったのかも知れません。
記録より記憶に残る日本語盤?
当時は英語の歌詞でヒットしましたが、後世では"♪ギーラギーラ"で始まる日本語詞で歌い継がれていると感じます。
おそらく1973年に発売された安西マリアさんの日本語カバー盤がきっかけと感じます。
しかし、記録ではそれほど支持を集めていないようです。『レコード・マンスリー』の月間ランキングでは、7月に発売されたレコードは8月に16位を記録しています。
この時期は"エレキインスト作品を若い女性が歌う"という企画が流行っていたようです。
「太陽の彼方」も同じく日本語で"ノッテケノッテケ"として広まっていると思いますが、きっかけは1972年に発売されたゴールデン・ハーフさんの歌唱盤と思われます。
どちらの作品もレコードは小ヒットにも関わらず、当時の世代の方々の記憶に残っている傾向を感じます。何かのTV番組で放送されて流行したのでしょうか?
ベンチャーズ歌謡の先駆け?
日本コロムビアさんは「もし、ベンチャーズさんの音楽にボーカルを加えたら・・・」という発想で「涙の太陽」を企画されたと思います。
この発想は大成功を収めましたが、東芝さんも「その発想面白いですね、頂きます。」と考えたらしく、「二人の銀座」(1966)、「北国の青い空」(1967)と、ベンチャーズさん作曲の歌謡曲を発売される事になります。
もしかすると「涙の太陽」の成功は、後にベンチャーズ歌謡を誕生させるきっかけとなったのかも知れない、と感じたりもします。
曲情報
発売元:日本コロムビア株式会社
品番:LL-742-JC
期待のニュー・!ヴォイス!
A面
「涙の太陽」
原題:CRYING IN A STORM
作詩:R.H.Rivers(湯川れい子)
作曲:Y.Nakajima(中島安敏)
B面
「とどかぬ想い」
原題:SUDDENLY I'M ALONE
作詩:R.H.Rivers(湯川れい子)
作曲:Y.Nakajima(中島安敏)
参考資料
「涙の太陽」レコードジャケット
『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社
『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社