2度ヒットしたロングセラー
レーモン・ルフェーヴル・グランド・オーケストラさんの「シバの女王(La Reine de Saba)」は最初に昭和44年(1969年)にヒットしました。
オリコンでは、HIT-1584とHIT-2007が合算で集計され、計100週以上売れ続けた超ロングセラーという記録が残っていますが、実際は品番違いで2回ヒットしています。
ロングセラーなのでヒットの経緯をまとめました。
<「シバの女王」ヒットの記録>
年月 | 出来事 |
1967年9月 | ミッシェル・ローランの「Ma reine de Saba」がフランスでランクイン |
1968年12月 | ポール・モーリア・グランド・オーケストラ盤が発売 |
1969年2月 | HIT-1584盤が発売 |
1969年5月~ | HIT-1584盤が日本でランクイン |
1969年8月 | ローランの「サバの女王(日本語)」発売 |
・・・ | ・・・ |
1972年6月~ | HIT-2007盤が日本で再びランクイン |
1972年9月 | ローランの「サバの女王(日本語)」がランクイン |
・・・ | ・・・ |
1973年6月 | ローラン盤、ポール・モーリア・グランド・オーケストラ盤がランクイン |
・・・ | ・・・ |
1974年2月 | グラシェラ・スサーナ『愛の音』がランクイン |
1974年3月~ | グラシェラ・スサーナ『アドロ、サバの女王』がランクイン |
※ミッシェル・ローラン=ローラン。「シバの女王」を作曲された方です。
最初のヒットは1969年
最初のヒットは1969年、品番HIT-1584です。
<『レコードマンスリー』洋楽のランキング推移>
年月 | 順位 |
昭和44年05月 | 23位 |
昭和44年06月 | 16位 |
昭和44年07月 | 17位 |
昭和44年08月 | 21位 |
昭和44年09月 | 17位 |
昭和44年10月 | 15位 |
昭和44年11月 | 21位 |
注)レイモン・ルフェーブル - トピックの動画
交響曲のイージー・リスニング
195,60年代には、"楽団が演奏するシングル盤"がヒットしています。
このシングル盤には2種類のタイプがあります。
1つは、主旋律を奏でる楽器がボーカルのように主役となるサウンドです。アルパの「コーヒー・ルンバ」(1961年)やクラリネットの「小さな花」(1958年)、アルトサックスの「黒い傷あとのブルース」(1961年)が思いつきます。
もう1つが、1つの楽器が目立つのではなく楽団全体で曲を奏でる作品です。イージー・リスニングと聞いてイメージする作品はこちらだと思います。
たった数分の演奏で聴き手をコンサートホールでの演奏にいざなってくれるような「シバの女王」はこちらに属する音楽表現と思います。
「魅惑のワルツ」(1957年)や「夏の日の恋」、「太陽がいっぱい」(共に1960年)が思いつきます。
こちらの音楽表現の方がスケールの大きさを感じます。やはり映画音楽が目立ちます。
人気再燃のきっかけは『ゴッド・ファーザー』主題曲のヒット?
「シバの女王」は1972年から再び注目を集め始めロングセラーの道を歩み始めます。きっかけが3つあるように感じます。
1つめは、1972年に『ゴッド・ファーザー』の主題曲がヒットした事です。オーケストラで演奏される愛のテーマが人気となり、過去にニーノ・ロータさんが作曲された「ロミオとジュリエット」(1969年)も再び人気を集めています。
レコード会社は『ゴッド・ファーザー』をきっかけにオーケストラが演奏する作品のリバイバルを狙ったのかも知れません。
1972年は日本で洋楽のセールスが低迷し始めた時期でLPではビートルズさんの赤盤・青盤のように、過去の音源を収録した作品がヒットしています。
2つめは、当時ドラマの曲に採用されたフランク・プゥルセルさんの「アドロ」(1973年)がヒットした事です。この時期に、ポール・モーリアさんの演奏盤やローランさんの日本語歌唱盤がランクインします。
3つめの「シバの女王」のロングセラーに影響を与えたと思われるきっかけはグラシェラ・スサーナさんが日本語カバーした「サバの女王」が人気を集め始めた事です。
グラシェラ・スサーナさんの名前が『レコードマンスリー』のランキングに初登場したのは1974年2月の『愛の音』です。「サバの女王」が収録されています。
翌月には「アドロ」の日本語カバーも収録した『アドロ・サバの女王』がランクインし、このLPがロングセラーを記録します。
(・・・余談ですが、グラシェラ・スサーナさんの「サバの女王」は何回聴いても「帰るのよりは」と聴こえます(^^;A)
1972年以降にヒットしたHIT-2007盤の「シバの女王」は低い順位で売れ続けています。(目立つくらい流行した時期は無いと思いますが、スタンダード曲に成長していた時期と思います。)
消費される音楽の世界で支持され続けた理由、作品の良さは聴くと理解できます。流行歌にはもったいないくらいの楽団演奏盤と思います。
このようなぜいたくなシングルがヒットする事は、後にも先にもこの1曲だけと思っています。
参考資料
「シバの女王」レコードジャケット
『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
『オリコンチャートブック〈LP編(昭和45年‐平成1年)〉』オリコン
『洋楽シングルカタログ ビクター・フィリップス編』
「TOP-FRANCE」Webサイト