流行時期(いつ流行った?)
リックとランス(Rick And Lance)さんの「さいはての慕情(Where the Four Winds Blow)」は、昭和37年(1962年)にヒットしました。
月刊ミュジック社発刊の『ミュージック・マンスリー』に掲載されている「今月のベスト・セラーズ」によると、9月から12月にかけてヒットしています。
9月の発売後、年末にかけて人気が高まっているようです。順位はそれほど高くありませんが、ロングセラーとなった作品と推測されます。
年月 | 順位 |
昭和37年09月 | 15位 |
昭和37年10月 | 19位 |
昭和37年11月 | 10位 |
昭和37年12月 | 10位 |
注)Rick & Lance - トピックの動画
アメリカではヒットしなかった曲
「さいはての慕情」を初めて聴いた時に、「日本で人気を集めそうなメロディ」と感じました(^^;A。
1960年代の洋楽ヒット曲には、アメリカで支持されなかった作品が日本で人気となるケースがあります。
たまたま日本のレコード会社の方が作品を聴いて、「これは日本でヒットする可能性がある」と感じられた事で発売に至ったと思います。
リックとランスさんにとっては、価値観の異なる国で支持された事は奇跡に近い出来事と感じます。
当時の洋楽部門の方々が積極的に作品を探して発掘されていた事を感じます。
「さいはての慕情」はコーラスの作品と思いますが、ブラザーズ・フォーさんの「グリーン・フィールズ」(1960年)のように洗練されていないと感じます。それが聴いている側にとって歌謡曲らしさを感じさせていると思います。
一体、この差は何なのでしょう。
"日本人好み"とは何か?
日本で受けそうと感じる洋楽。その理由がいまだよく分かっていません。邦楽でも洋楽でも基本的に"主張が強い表現が受け入れられる事は稀"と感じています。
「さいはての慕情」は主張を感じる事がありません。低い音域で歌われ続ける点が気になります。ヒットしたいなら1回聴くだけでインパクトを与えるフレーズが用いられても良いと思うのですが、そういった主張はありません。
逆に、当時人気を集めていた洋楽の日本語カバー曲には長調でテンポも速く覚えやすい作品が目立ちます。
「さいはての慕情」は真逆の音楽表現ですね・・・(^^;A。この作品も日本語カバーされましたが、音域の低さを考慮されたようで伊藤アイコさん盤が人気となっているようです。
主張が控えめな曲調の作品を聴いていると、なぜか"こちらから耳を傾けて聴こうとする心理"が働き始めるように感じます。
それは洋楽でも邦楽でも関係なく、"関心が無くても巷で耳にしているうちに気になってくる心理"に通じていると思います。
"何度か聞いているうちに記憶に残る曲"。「さいはての慕情」の場合、♪ツツツタツツの3連のスローロックのリズムだった事が、その理由のひとつと思います。(「グリーン・フィールズ」もイントロだけが3連ですね。)
スローロックは、テンポが遅くリズムが分かりやすいという特徴があります。そしてディック・ジェイコブス楽団・合唱団さんの「月光のノクターン」(1961年)のように、歌謡曲のように感じるコーラス。
・・・そう考えると、当時のレコード会社の洋楽レーベルは"邦楽目線で海外のレコードを発掘していた"という事になりますね。
その結果、日本独自の洋楽ヒットが多数登場する事になりますが、では「なぜ邦楽に近い音楽表現をしたレコードを、わざわざ洋楽盤から発掘していたのか?」という疑問が浮かびます。とても興味深いテーマです。
楽曲分析
バンドプロデューサー5の分析では、「さいはての慕情」はAマイナー(イ短調)です。
楽譜が見つかりませんでしたので、用いられている音階は分かりません。
曲情報
1962年 年間27位(洋楽)
レコード
発売元:日本ビクター株式会社
品番:JET-1120
今、さすらいの旅路にうみ疲れ 何処行くか わが愛
風騒ぐさいはてか、はたまた四つの風の吹くところ
君が愛は消え去りて 今われ波立つ巌に涙す うつろなるわが魂は
生命なき北の辺へさすらいぬ その果ては四つの風の吹くところ……………………
A面
「さいはての慕情」
原題:WHERE THE FOUR WINDS BLOW
演奏時間:2分17秒
B面
「グッド・バディー」
原題:GOOD BUDDY
演奏時間:2分35秒
参考資料
「さいはての慕情」 レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
「バンドプロデューサー5」