昭和30年代の洋楽ヒットチャートには、映画館のスクリーンで流れた音楽が登場する事が頻繁にありました。
昭和39年にヒットした「スエーデンの城」も、当時日本で公開されたフランス映画の主題曲です。
日本で初めて売上ランキングの作成を試みた雑誌『ダンスと音楽』でも、10年前の昭和29年11月のランキングから、「日本で封切された映画の主題歌曲に★印をつけることにしてみた。」と、特別視されています。
インターネットのない時代に、海外の情報をどのように入手していたのか?私にとっては未だにナゾですが、映画は、最新の海外事情の情報源として効率の良いメディアだったのは間違いなさそうです。
集計日付 | 順位 |
昭和39年9月 | 15位 |
昭和39年10月 | 6位 |
昭和39年11月 | 12位 |
※『ミュージックマンスリー』洋楽部門のヒットチャート推移
ちょうど、東京オリンピックが開催されていた昭和39年10月にヒットした「スエーデンの城」のレコード解説には、
『古くは「エデンの東」のような、いわばスタンダード曲に入るようなものから、最近では“007/危機一発”のテーマ曲「ロシアより愛をこめて」まで』
と表現されていますが、解説通り、数々の映画で流れる音楽が日本で支持を得続けています。
(・・・昭和39年の時点で、昭和31年の「エデンの東」をスタンダードと認識されている事にはやや驚きます、10年も経っていないのに・・・。)
映画音楽は作品のテーマによって主題曲の音楽ジャンルが異なります。ヒットチャートに登場した作品のほとんどが、オーケストラが演奏されるムードのある器楽曲となっています。
しかし、「スエーデンの城」のように、テンポの良いジャズ系の作品が登場する事もあります。
「スエーデンの城」主題曲は、レーモン・ル・セネシャル指揮の楽団さんが演奏されるジャズ作品です。ジャズが主題曲となる映画は、フランスが多いようです。
当時、この映画がヒットしたのかどうかは分かりませんが、レコードジャケットでは、原作が『悲しみよこんにちは』で知られるフランソワーズ・サガンさんである事が強調されています。
このレコードには、一つ不思議な事があります。映画主題曲のレコードなのに、なぜか岸洋子さんの日本語カバー盤である「スエーデンの城」のジャケットも兼ねている事です。
別に映画もご出演されておらず、日本語カバーをしただけなのに、まるで映画に係っておられるような扱いとなっています。
私が持っているレコードジャケットには、HIT-1097とBS-7044と、2つの品番が印刷されています。
HIT-1097が映画サウンドトラック盤の品番、BS-7044が岸洋子さんの日本語カバー盤の品番です。
当時、岸洋子さんの盤はカップリングの「夜明けのうた」がヒットしていた事もあり、もしかすると、映画主題歌のレコードジャケットを代用したのではないか?とも考えられます。
“異なる品番で同じジャケットを用いる”、という手法がされているのは、この作品のほかには見聞きしたことがありません。
購入する側からすれば、レコードが違ってもジャケットが同じだと、うっかり買い間違える可能性もあるのに、なぜそのような事をしたのか?
不可解な事をされていると感じます。
バンドプロデューサーの分析では、「スエーデンの城」はB♭マイナー(変ロ短調)。岸洋子さん盤では、歌唱重視にアレンジされているため、ジャズ感が全くありません。
私はサウンドトラック盤のこの作品の方が好きです。
曲情報
1964年 年間31位(洋楽)
レコード
発売元:キングレコード株式会社
品番:HIT-1097
A面
「スエーデンの城」
原題:GENERIQUE
主題曲■≪サウンド・トラック盤≫
「悲しみよこんにちは」フランソワズ・サガン原作
モニカ・ビッティ/クルト・ユルゲンス
ジャン=ルイ・トランティニャン/フランスワズ・アルディ
ジャン=クロード・ブリアリ/シュザンヌ・フロン
名匠 ロジェ・パディム監督
総天然色
フランスコープ
東和提供 フランス・コロナ・フィルム作品
録音原盤は、フランス、バークレイレコードの提供による
Original. Recording - BARCLAY Record, France
B面
「恋の終末」
原題:L'AMOUR N'EST PAS
参考資料
「スエーデンの城」レコードジャケット
「夜明けのうた」レコードジャケット
『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社
『ダンスと音楽』ダンスと音楽社
「バンドプロデューサー5」