ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「太陽はひとりぼっち」コレット・テンピア楽団(昭和37年)

f:id:hitchartjapan:20200521210343j:plain

流行時期(いつ流行った?)

 コレット・テンピア楽団さんの「太陽はひとりぼっち」は、昭和37年(1962年)にヒットしました。

 

 『ミュージックマンスリー』の月間売上ランキングによると、下記の売上推移を記録しています。

年月 順位
昭和37年09月 2位
昭和37年10月 1位
昭和37年11月 1位
昭和37年12月 2位
昭和38年01月 3位
昭和38年02月 1位
昭和38年03月 8位
昭和38年04月 11位
昭和38年06月 14位

 

 1962年9月に初登場2位を記録しています。その後、翌年の2月まで、半年間も1~3位にランクインし続けています。

 

 レコードの発売と同時に人気となった事に加えて、その人気が長期間衰えなかった事は珍しい流行り方をしていると感じます。

 

 かなりヒットした印象を受けますので、当時をご存知の方はどこかでこの作品を耳にされた事があるのではないか?と思います。

 

 英題は「L'Eclisse Twist」で、1962年に話題となったツイストを取り入れた作品です。

 

 コレット・テンピア楽団さんの演奏する動画は見つかりませんでしたので、映画のサウンドトラックの動画(ジョヴァンニ・フスコさんの演奏)を掲載しています。

 

 楽器の響きに違いはありますが、曲の雰囲気はほとんど同じと感じます。

 


Giovanni Fusco - L'Eclisse Twist (1962)

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 The Orchard Music(Carosello Records の代理); UNIAO BRASILEIRA DE EDITORAS DE MUSICA - UBEM, LatinAutor, Muserk Rights Management, SODRAC、その他 3 件の楽曲著作権管理団体

 

 

聴き手をとりこにするサウンド

 「太陽はひとりぼっち」は同名映画の主題曲です。アラン・ドロンさん主演の映画であるため、「太陽がいっぱい」(1960)を踏襲して邦題が付けられたのだと推測されます。

 

 映画の人気がどれくらいだったのかは分かりませんが、この主題曲が当時人気となったのは分かる気がします。1度聴くだけで記憶に残りますし、なぜか繰り返し聴きたくなるサウンドを備えているからです。

 

 歌詞カードでは、

 「現代人の孤独な魂に強烈な訴えを持ったツイスティング・ブルースです。」

 「現代の青春の孤独と願望、不安と焦燥をかきたてる強烈なツイスト風のブルース」

 と形容されています。

 

 カッコイイ表現をされていますが、"強烈さ"を感じさせる要素は"メロディがシンプルである事"が最大の理由であると感じます。

 

 出だしのフレーズは、♪ドー、シ、ラ、ソ、ファ、ミーと音階を順番に下っていくメロディになっています。

 

 「恋はみずいろ」(1967)と手法が似ているように思いますが、このメロディを聴くだけで、これから始まる作品の雰囲気が理解しやすくなっていると感じます。

 

 続くメロディも、特に凝っていると感じる箇所は無く、1度聴くだけですぐに頭に入って来ますし、何も考えず無意識に聴いていても曲の雰囲気を感じる事が出来ます。

 

 メロディが簡単な代わりに、演奏する方や編曲をする方の技術にかかっていると感じます。聴いた後はテナー・サックスの音色が印象に残りますが、きっと凄く上手い方が演奏しているのだろうと思います。

 

 楽団が演奏する作品では珍しく、テンポが速い作品です。おそらく大勢のオーケストラではなく、少人数のバンドで演奏していると思われます。

 

 所々で登場するエレキギターの音色も、1962年当時は新鮮さを感じる要素だったと感じます。

 

 

 

日本の楽団である事を隠して

 演奏している「コレット・テンピア楽団」さんは日本の楽団です。しかし、歌詞カードでは、ローマ字表記もして、まるで実在する海外のオーケストラのように印刷されています(下図)。

f:id:hitchartjapan:20200521214436j:plain

 何かの書籍で読んだ事がありますが、日本語に直すとTempiaは"寺"、Colléttoは"岡"となり、正体不明の楽団は、ビクターに所属する寺岡真三さんが率いる楽団だったそうです。

 

 歌詞カードでは楽団に関する説明は無く、後年、「実は、日本人の楽団で演奏した作品なんです。」という打ち明け話をされたエピソードも聞いた事がありません。

 洋画の主題曲であるため、当時は違和感なく洋楽のヒット曲として認識されていた事と思います。

 

 

 「太陽がいっぱい」も、フィルム・シンフォニック・オーケストラという楽団が演奏していますが、こちらも日本人の楽団です。

 

 覆面歌手?という事になりますが、戦後、日本はフランスと著作権で争っていたらしく、どうも輸入か販売かが禁止されていた楽曲があるようです。

 

 そういった取決めが緩和された時期に、"演奏しなおした盤なら日本で発売しても問題はない"という解釈ができる、という背景があったようです(>_<)。

 

 現在、コレット・テンピア楽団さんの演奏する音源がYouTubeに上がっていても、ビクターさんがライセンス使用を主張していません。

 

 もしかして、当時の著作権の解釈が要因で主張できないのかな?とつい考えてしまいます…(^^;A。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「太陽はひとりぼっち」はA♯マイナー(嬰イ短調)です。

 

 用いられている音階は自然的短音階で、途中に旋律的短音階になっている箇所があるように思います。

 

 

曲情報

1962年 年間 10位、1963年 年間12位(洋楽)

 

 

レコード

 発売元:日本ビクター株式会社

 品番:SS-1304

 

 胸を突き刺すようなブルース!現代の愛をえぐる鮮烈の最高傑作!!

 

 '62年カンヌ映画祭 審査員特別賞受賞

 フランス・パリ・フィルム大作 日本ヘラルド映画提供

 

 A面

  「太陽はひとりぼっち」

  原題:L'ECLIPSE

  演奏時間:2分54秒 

 

 

 B面

  「ほがらかに鐘は鳴る」

  原題:WENN DIE GLOCKEN HELL ERKLINGEN

  演奏時間:2分59秒

 

 

参考資料

 「太陽はひとりぼっち」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 『映画音楽百選』ケイ・エム・ピー

 「バンドプロデューサー5」