ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「オトナブルー」新しい学校のリーダーズ(令和5年)

流行時期(いつ流行った?)

 新しい学校のリーダーズさんの「オトナブルー」は令和5年(2023年)にヒットしました。

 

 2020年5月に配信された楽曲は、約3年後の2023年3月に初ランクインしています。4月7日に「THE FIRST TAKE」に出演してから継続して人気を集めています。

 

<mora~WALKMAN公式ミュージックストア~月間ランキング推移>

年月 順位 メモ
2020年05月 圏外 5/1配信開始
・・・ 圏外  
2023年03月 59位  
2023年04月 47位 4/7「THE FIRST TAKE」出演
2023年05月 39位  
2023年06月 29位  
2023年07月 27位  
2023年08月 33位  
2023年09月 41位  
2023年10月 60位  
2023年11月 45位  

 

 発売されてから数年後に人気が集まる、珍しい流行り方です。

 

 


www.youtube.com

注)ATARASHII GAKKO! - 新しい学校のリーダーズ 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

2023年のトレンドは"自己肯定力"?

 2023年のヒット曲は【自分に自信を持っている人物像】が描かれる歌詞が人気を集めていると感じます。

 

 「可愛くてごめん feat. ちゅーたん(CV:早見沙織)」「アイドル」(共に2023年)が印象的です。

 

 「オトナブルー」もこの価値観を備えた歌詞と感じます。

 

 

 当然のように自己を肯定する心理、この心情表現は前年の「ダンスホール」(2022年)にも近さを感じます。

 

 長期間の新型コロナウイルスのパンデミックで抑圧された心理が影響している事は明らかと思いますが、「この心情がいつから支持され始めたか?」はとても興味深いテーマですので、また調べます。

 

 

 ・・・"気持ちを前向きにさせてくれる歌詞"といえば、ジャニーズ坂道グループといったアイドルが独占してきた分野です。

 

 2023年は特殊で、アイドル以外の様々なアーティストが前向きな心情を表現して人気を集めています。本当に興味深いです。

 

 

 ・・・コロナ禍は真逆で、自分のことをクズと断言する「香水」(2020年)、地位も名誉もないと前置きをする「魔法の絨毯」(2021年)が話題となっていました。

 

 

きわどさを上回る完成度の高さ

 「オトナブルー」が話題になっている事を遅れて知って、テレビで初めて聴いた時に「こんな曲だったんだ!」と驚きました。

 

 もしも、もう少しはみ出していたら聴き手にコミックソングと解釈されてもおかしくないくらい、本当にギリギリのラインまで踏み込んで個性を出している事に驚きました。

 

 聴き手が普通に曲として楽しめるのは作品の完成度の高さです。

 

 作詞は新しい学校のリーダー達さんと表記されているのでメンバー皆さんで作られたのでしょうか。

 

 そのためか歌唱に想いが込められているようで、聴いていて気持ちが伝わってきます。

 

 何年たっても記憶に残るタイプの作品と思います。

 

 

どの年代をターゲットにしている?

 後半でメインになるバックコーラスは今どきのアイドルソングっぽいですが、冒頭のサウンドには昭和っぽさを感じます。

 

 1980年代ではなく1970年代寄りと感じます。柔らかい電子音には70年代後半のディスコサウンド、メインボーカルの歌唱には70年代前半の和製ソウルの模倣。

 

 "二度見"が大げさに表現すれば"ぬどみ"と聴こえたり、"Ah"が"アー"と【歌詞通りに聴こえない歌唱】も1970年代前半の和製ソウルや外国人歌手の歌唱を連想してしまいます。

 

 

 表現が自由すぎて「どの世代をターゲットにした作品か?」が全くわかりませんが、今年のレコード大賞や紅白歌合戦をきっかけにして、さらに幅広い世代から支持が集まる可能性を持つ作品と思います。

 

 

曲情報

  作詞:新しい学校のリーダー達
  作曲:yonkey

 

 

参考資料

 「音楽ダウンロード・音楽配信サイト mora ~WALKMAN®公式ミュージックストア~」

「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ (feat. 花譜 & ツミキ)」MAISONdes(令和4年、令和5年)

流行時期(いつ流行った?)

 MAISONdes(メゾン・デ)さんの「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ (feat. 花譜 & ツミキ)」は、令和4年(2022年)、令和5年(2023年)にヒットしました。

 

 TVアニメ『うる星やつら』の第1クールエンディング・テーマです。

 

 2022年10月下旬に配信された楽曲は、5か月後の翌2023年2月に最高順位を記録しています。

 

 自然に流行したタイプのヒット曲と感じますが、第2クールになってから人気が高まっている事が気になります。

 

 

<mora~WALKMAN公式ミュージックストア~月間ランキング推移>

年月 順位 『うる星やつら』放送日程
令和4年10月 30位 第1クール放送開始
令和4年11月 27位  
令和4年12月 49位 第1クール放送終了
令和5年01月 34位 第2クール放送開始
令和5年02月 15位  
令和5年03月 19位 第2クール放送終了
令和5年04月 68位  

 

 


www.youtube.com

注)MAISONdes -メゾン・デ- 公式アーティストチャンネルの動画

 

 MAISONdesさんを、

  ソニーミュージック公式サイト="SNSで最も使われる音楽アパート"、

  うる星やつら公式サイト="「今最もSNSで使われる音楽」を生み出している架空のアパート"と紹介されています。

 

 「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」は239号室の住人。花譜(かふ)さんがボーカル、ツミキさんが楽曲製作されています。

 

 作品によってメンバーが入れ替わるグループ、面白い設定と感じます。

 

 

♪トウキョウ・シャンディ・ランデヴ

 「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」は、曲調、覚えやすいメロディが特徴と思います。

 

 昭和の流行のなかでも1970年代後半~1980年代前半に登場したシティ・ポップスを意識されているように感じます。

 

 フレーズが耳に残る理由はドレミファソラシドの音階で6つ目の音が抜けている部分が多いからと思います。

 

 短調なのでラシドレミ〇ソラで、あまりファの音があまり用いられていません。

 

 ヒット曲でよく耳にする26抜き短音階の一種と思います。

 

 (コード進行は相変わらず勉強出来ていませんので触れられません。)

 

 歌詞は雰囲気で感じて楽しむ作品と思いますが、原作を考慮されていて面白いです。

 

 "相手の気持ちが分からないため、主人公が不安とイライラを感じている"と解釈できます。

 

 サビの歌詞をAIに解釈してもらいましたが妥当に感じます。

「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」サビのAIテキスト感情判定

注)JASRACの管理楽曲、作品コード=760-0752-9

 

 

♪テイキョウ・ヘイセィ・ダイガク

 「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」と「帝京平成大学のCM」を素材にした音MADが流行っていた事を最近知りました。

 

 


www.youtube.com

ニコニコ動画・・・2022/11/02公開、YouTube・・・2022/11/08公開

 

 私は関西在住なのでCMを耳にした事がありませんが、完成度が高すぎて笑ってしまいました。

 

 削除されていないという事は「God knows...」(2006年)のように、【一般人が流行りの素材を加工して投稿するインターネットミーム】が文化として認識されているかも知れません。

 

 (アメリカでも、最近『バービー』の公式が一般人の不適切なミーム投稿に対して、いいねをした事が問題になっていますね。)

 

 

 MAD動画の完成度の高さは、元々ニコニコ動画で「帝京平成大学のCM」を素材にした作品が製作され続けていた土壌が存在していたからだと推測されます。

 

「ノリノリチョッパー」2021/09/24投稿

 

 MADが拡散したのはYouTubeTikTok

 

 結局2023年になってから流行りだした根拠は見つけられませんでしたが、「テイキョウ・ヘイセィ・ダイガク」の存在は大きいと思います。

 

 もしかしたら、私のようにCMが放送されていなかった地域に時間差で広まり、人気が高まったのかも知れません。

 

 今後、全国区のCMで今回のような現象が起きるかも知れないと期待しています。

 

 

曲情報

  歌:花譜
  作詞・作曲・編曲:ツミキ

 

  テレビアニメ『うる星やつら』エンディングテーマ

 

参考資料

 「音楽ダウンロード・音楽配信サイト mora ~WALKMAN®公式ミュージックストア~」

 トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ | MAISONdes | ソニーミュージックオフィシャルサイト

 TVアニメ「うる星やつら」

 感情認識AI - ユーザーローカル

「春の海」瀬川瑛子(平成元年)

流行時期(いつ流行った?)

 瀬川瑛子さんの「春の海」は、平成元年(1989年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングによると、最高順位は低いですが4月下旬から7月末にかけてヒットしています。

 

 

 残念ながら公式動画は見当たりません。

 

 

 

なぜタイトルが「春の海」?

 タイトルはあまり知られていませんが「春の海」は、現代の日本人ならお正月に聞く機会がある作品と思います。

 

 ・・・こちらは動画がありました。(瀬川瑛子さんの「春の海」は全くの別曲です。

 


www.youtube.com

注)箏:宮城道雄/十七弦:宮城喜代子 - トピックの動画

 

 

 上記動画の筝曲「春の海」がいつから日本のお正月の定番になったのか?は分かりません。

 

 この曲を聴くと正月が連想され、"あけましておめでとうございます"の感情が生まれます。

 

 平成は天皇陛下が生前に退位するご意向を持たれた事で、国民は"平成から令和に"の改元が祝賀ムード一色だった事が記憶に新しいです。

 

 平成元年に発売された「春の海」も"昭和から平成に"の改元で、似た雰囲気で新しい時代を祝う意味が含まれていると捉えてしまいますが全く違います。

 

 

「不如帰」と「春の海」は星野哲郎さん作詞

 NHKでは前1988年9月20日に「天皇陛下の容体に変化の可能性あり」の第一報が報道されています(NHKクロニクル)。 

 

 私は当時の世の中の雰囲気を知りませんが、2020年代前半のコロナ禍でたびたび報道された自粛を促す空気が生まれていたようです。(レンタルビデオ店の需要が高まったと、何かで見聞きした事があります。)

 

 自粛すべきと放送業界が判断したのはNHKクロニクルの番組表にも記述されている"吐血"のご容体。

 

 7か月前の2月に発売された村上幸子さんの「不如帰」は歌詞に"血を吐く"というフレーズがあり、「放送は控えるべき」と判断されたと聞いたこともあります。

 

 

 ・・・コロナ禍でさんざん感じましたが、ろくな取材もせずに簡単に手に入る行政の集計結果を報道して「感染者がたくさんです!自粛しましょう!」と訴えていた印象が残っています。

 

 当時、昭和天皇のご容体も似たような形で連日報道されていて、メディアは深く考えずに、むやみに自粛対象を判断していたのだろうと思います。

 

 

昭和から平成へ

 「不如帰」の経緯を知ると、星野哲郎さんが「春の海」を"どのような想いで作詞されたのか?"が興味深くなってきます。

 

 1番が「夫婦春秋」で描かれるような苦労した若いころ、2番は「兄弟船」のように命を懸けて漁をする男の心理が描かれます。

 

 どちらも演歌の主題でよく耳にしますが、3番が珍しいです。

 

 海に生きるカモメに"この世の理想"を重ねる心理が表現されています。

 

 「理想の世の中を願う心理」はスケールが大きすぎて、似た主題のヒット曲はすぐに思いつきません。

 

 

 2番の"命の瀬戸"もインパクトがありますが、筝曲「春の海」が瀬戸内海をイメージして製作された事を考慮していると思います。

 

 "命を漕ぐ"と歌う広島県民謡の「音戸の舟唄」の一節も挿入されています。

 

 気になるフレーズをつなげると、1番で"苦労"、2番で"命がけ"、3番で"この世の理想"。

 

 "昭和は激動の時代だったけど、これから始まる平成は理想の世の中になってほしい"とか、"昭和を振り返ると新しい時代が来たことを簡単には喜べない"といった心理を描いているのではないか?と解釈してしまいます。

 

 このような歌詞は星野哲郎さんにしか書けないと思います。

 

 

曲情報

 発売元:クラウンレコード

 品番:CWA-520

 

 A面

  「春の海」

  作詩:星野哲郎

  作曲:新井利昌

  編曲:丸山雅仁

  演奏時間:4分49秒

 

 

 B面

  「サッポロ慕情」

  作詩:星野哲郎

  作曲:新井利昌

  編曲:丸山雅仁

  演奏時間:4分9秒

 

 

 

参考資料

 「春の海」レコードジャケット

 「you大樹」オリコン

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

「プロフィール」倉沢淳美(昭和59年)

流行時期(いつ流行った?)

  倉沢淳美さんのデビュー曲「プロフィール」は、昭和59年(1984年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングによると3月下旬に発売されたレコードは、初登場が最高順位で4月中にヒットしています。

 

 レコード発売と同時に人気が集まる前評判の高さは、倉沢敦美さんがわらべさんのメンバーで、すでに有名だったからと思われます。

 

 わらべさんは「めだかの兄妹」(1983年)、「もしも明日が・・・」(1984年)が、その年の代表曲となるヒットを残す人気を残しています。

 

 


www.youtube.com

注)ライセンス WMG(WM Japan の代理)

 

 

 わらべさんは、バラエティ番組『欽ちゃんのどこまでやるの!』から誕生したユニットです。

 

 倉沢敦美さんは三人娘の"のぞみ・かなえ・たまえ"の、かなえ役で「もしも明日が・・・」のジャケットに"萩本かなえ"と役名が印字されています。

 

 

"普通の女の子"のデビュー曲

 1980年代はテレビ番組から数多くのアイドルが誕生し、流行歌手となった時代です。

 

 山口百恵さんが引退された1980年、田原俊彦さんに続いて、松田聖子さん、近藤真彦さんがデビューし、1982年には中森明菜さんや小泉今日子さんがデビューして、当時の熱狂がヒットチャートに記録されています。

 

 「プロフィール」がヒットした1984年は、すでにトップアイドルが存在し多くアイドルが活躍する時期です。

 

 

 アイドルの場合、"デビュー曲=代表曲"と感じる事が多いくらい、歌手のイメージに合った楽曲を製作する事に注力されるのが当たり前です。

 

 しかし「プロフィール」はすでに人気アイドルが存在するからか、自らを平凡な女の子と語り、"普通"を売りにして製作されています。

 

 

 デビュー盤の歌詞カードには隅の方に自己紹介が印刷されたりしますが、それをデビュー曲の歌詞にした発想に新しさを感じます。

 

 こういった作品が企画されるほど、当時のアイドルブームが熱を帯びていたと感じます。

 

 

誰がアイドルを推してくれるのか?

 "平凡さを個性にしたアイドル"の企画が成功した事は、アイドルを発掘する業界人に衝撃を与えたのではないか?と思います。

 

 "クラスで1番人気ではない女の子"の発想でAKB48さんをプロデュースされた秋元康さんの考え方に近い発想と感じます。

 

 「プロフィール」がヒットした翌1985年には、テレビ番組から生まれたおニャン子クラブさんがレコードデビューされていて気になります。

 

 

 ヒット曲はいつの時代にも存在し、売上枚数や再生回数などは集計されていますが、【誰が購入しているのか?】のデータは公表されていません。

 

 これはレコード会社も知りたい情報だったようで、私が持っている「プロフィール」には、下図のアンケート用紙が入っています。

 

<「プロフィール」に同梱されていたアンケート用紙>

 

 まるで大学入試のようなアンケート用紙ですが、設問はとても興味深いです。

 

 「すでに人気アイドルがたくさんいるのに、なぜ『プロフィール』を購入したのか?」は私も知りたいです。

 

アンケートの設問は、

 1.まずは【性別・都道府県・年齢】という基本的な属性

 2.今後の楽曲製作の参考にする【購入理由】

 3.新曲宣伝に力を入れるための【日常生活でふれる雑誌や番組名】

を知るために構成されている?と感じます。

 

 「プライベートな事を歌ってくれたんだから、購入したあなたも色々教えて下さい!」みたいな勢いで、押しの営業を感じるアンケートですね・・・(^^;A。

 

 

 自分で切手を買って送る形式で、実際に有効な回答が得られたのかどうかは分かりません。

 

 次曲「ある愛の詩」は作詞・作曲の担当が変わっていますが、このアンケート結果を参考にされたのかどうかも分かりません。

 

 

曲情報

 ワーナー・パイオニア株式会社

 品番:L-1680

 

 

 A面

  「プロフィール」

  作詩:売野雅勇

  作曲・編曲:井上大輔

  演奏時間:4分31秒

 

 

 B面

  「内気なくらい優しくどうぞ」

  作詩:売野雅勇

  作曲・編曲:井上大輔

  演奏時間:4分11秒

 

 

参考資料

 「プロフィール」レコードジャケット

 「もしも明日が・・・」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 「you大樹」オリコン

「Lemon」米津玄師(平成30年~令和2年)

流行時期(いつ流行った?)

 米津玄師さんの「Lemon」は、平成30年(2018年)に発売されました。

 

 オリコンランキングによると、3月中旬に発売されたCDシングルは初登場と同時に人気が集まっています。

 

 日本レコード協会のダウンロード認定では300万ダウンロードを達成しています。

日付 認定
2018年02月12日 配信開始
2018年02月 プラチナ(25万ダウンロード)
2018年04月 ミリオンM(100万DL)
2018年12月 2ミリオン(200万DL)
2019年09月 3ミリオン(300万DL)

 

 オリコンデジタルランキングでは2020年8月までランクインしています。いつか400万DLに到達すると思います。

 

 すごく長い期間、ヒットしていましたね(^^)/♪

 

 


www.youtube.com

注)Kenshi Yonezu  米津玄師 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

 

死別をテーマにした作品

 「Lemon」は【大切な人を失った喪失感】と【その気持ちから立ち直ろうとする心情】が描かれていると感じます。

 

 歌詞で明確に表現していませんが、誰が聴いても"死別"がテーマと思います。

 

 どちらかというと小説や映画・ドラマで描かれる事が多い主題です。

 

 "身近な人の死"を経験した人、想像したくない事ですが"死"に向き合って考えた人でなければ、聴き手の共感を得る事はできないテーマと思います。

 

 ヒット曲では避けられがちですが、何曲か思い浮かびます。

 

 

<"死別"がテーマ(と感じる)ヒット曲>

曲名 歌手
1962 江梨子 橋幸夫
1964 愛と死をみつめて 青山和子
1965 涙をありがとう 西郷輝彦
1965 わが愛を星に祈りて 梶光夫、高田美和
1966 絶唱 舟木一夫
1967 花はおそかった 美樹克彦
1972 喝采 ちあきなおみ
1976 岸壁の母 二葉百合子
1980 防人の詩 さだまさし
1991 会いたい 沢田知可子
1993 ロード THE 虎舞竜
1993 島唄(オリジナル・ヴァージョン) THE BOOM
2003 涙そうそう 夏川りみ
2004 さとうきび畑/涙そうそう 森山良子
2004 瞳を閉じて 平井堅
2004 かたちあるもの 柴崎コウ
2006 タイヨウのうた Kaoru Amane
2007 千の風になって 秋川雅史

 

 

 1960年代は【若くして経験する死】で綴られる作品が目立ちます。

 

 不治の病を患った恋人とのやりとりを収めた『愛と死をみつめて』がベストセラーになりましたが、2000年代前半の『世界の中心で、愛をさけぶ』が支持された理由も同じと思います。

 

 1970年代以降は【戦争で大切な人を失った心理】が描かれ始めますが、交通事故が理由の作品も登場します。

 

 難病、戦争や事故。何が原因でも、残された人が深く傷ついている心理は同じです。

 

 "死別"をテーマにした作品は、過去にとらわれ悲しむ心理が描かれがちで、「Lemon」でも故人の生前の記憶に縛られ続ける心境が綴られています。

 

 しかし「Lemon」の主人公は、過去だけを見るのではなく「現在を見る事が出来るくらい、心の整理ができている?」と感じます。

 

 悲しみながらも故人を尊敬する気持ちが歌われているから、そう感じるのだと思います。お墓参りなどで故人の冥福を祈る気持ちに近い心情が綴られているように感じます。

 

 なぜ「Lemon」が大ヒットしたのか?

 

 こういった解釈もできる歌詞も、多くの人たちに支持され続けた理由のひとつかもしれない、と考えています。

 

 

参考資料

 「Lemon」CDジャケット

 「一般社団法人 日本レコード協会 有料音楽配信認定」https://www.riaj.or.jp/f/data/cert/hs.html

 「you大樹」オリコン

「ロンリー・ハート」クリエーション(昭和56年)

流行時期(いつ流行った?)

 クリエーションさんの「ロンリー・ハート」は、昭和56年(1981年)にヒットしました。

 

 『レコードマンスリー』の月間ランキングによると、4月下旬に発売されたレコードは、半年後の10月に最高順位を記録しています。

 

 

<『レコードマンスリー』月間ランキング推移>

年月 順位
昭和56年07月 24位
昭和56年08月 15位
昭和56年09月 12位
昭和56年10月 9位
昭和56年11月 28位

 

 

 


www.youtube.com

注)ライセンス UMG(EMI Records Japan の代理); Muserk Rights Management、その他 2 件の楽曲著作権管理団体

 

 

 B面が英語詞バージョンで収録されている事も興味深いです。アーティストがこの作品へ込めた想いを感じます♪

 

 

記憶に残るハイトーンボイス

 「ロンリーハート」で印象に残るのは、♪レイディーマダームの後半部の歌唱です。

 

 なぜ印象に残るのだろう?と考えていましたが、ボーカルがアイ高野さんと知り納得しました。

 

 アイ高野さんは2006年に亡くなられましたが、「クリエーションのボーカルだった」と言及した報道を見た記憶がありません。

 

 やはり、たくさんの人たちの記憶に刻まれているのは、ザ・カーナビーツさんの「好きさ好きさ好きさ」(1967年)の”おまえのー!すべーてをー!”だったからと思います。(とんねるずさんの「歌謡曲」(1986年)でもオマージュされていますね。)

 

 

 ・・・ヒット曲は数ヶ月が寿命なのに、【何十年経っても曲を聴いた人の記憶に残り続ける事】はスゴくて不思議です。

 

 理屈では説明できない歌の力を感じます(^^)/♪

 

    なぜかアイ高野さんの歌声は聴き手に届く力を持っていると感じます。

 

 "高音で伸びる声"と表現すれば「他の歌手でも出せるじゃないか」という話ですが、聴き手に訴える力を感じます。声の質なのでしょうか?

 

 

"夜+都会"=シティポップス?

 「ロンリー・ハート」は、読むのではなく感じる【イメージ先行の歌詞】と思います。("天使の空"と言われても「?」です・・・(^^;A。)


 "曲調を楽しむ音楽で、歌詞はそれを補助する役割にすぎない"という価値観で製作されていると思います。

 

 これは1970年代後半~1980年代前半に登場したシティ・ポップスの特徴と感じます。(2020年末に"「真夜中のドア~Stay With Me」(1979年)が海外で人気"と話題になったジャンルです。)

 

 

 シティ・ポップスの先駆けは草刈正雄さんの「センチメンタル・シティー」(1977年)でしょうか。稲垣潤一さんの「ドラマティック・レイン」(1983年)も該当すると思います。

 

 「何がセンチメンタルでドラマチックか?」は歌詞では描かれません。

 

 このジャンルでは"深夜の都会"をイメージした作品が多く、聴き手が連想するのは"孤独感"。

 

 「ロンリー・ハート」は、この価値観が求められた時代に合った楽曲だったのだろうと思います。

 

 

曲情報

 発売元:東芝EMI株式会社

 品番:EWS-17116

 

 日本テレビ系「プロハンター」主題歌

 


 A面

  「ロンリー・ハート(日本語盤)」

  作詞:大津あきら

  作曲:竹田和夫

  編曲:クリエーション

  演奏時間:3分48秒

 

 

 B面

  「LONELY HEART」

  words by D.George - H.Osawa - K.Takeda

  music by K.Takeda / arranged by Creation

  演奏時間:3分53秒

 

 

参考資料

 「ロンリー・ハート」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社

「お島千太郎」美空ひばり[せりふ 林与一](昭和40年)

流行時期(いつ流行った?)

 美空ひばりさん、林与一さんの「お島千太郎」は、昭和40年(1965年)にヒットしました。

 

 『ミュージックマンスリー』の月間ランキングによると、6,7月にヒットしています。

 

 


www.youtube.com

注)美空ひばり 公式YouTubeチャンネル 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

 

再ブレイクした美空ひばりさん

 「柔」は美空ひばりさんの久しぶりの大ヒット曲です。翌年には「悲しい酒」(1966年)、その次の年には「真赤な太陽」(1967年)と大ヒットが続きます。

 

 多くの大ヒット曲で記憶に埋もれてしまった印象がありますが、「柔」の大ヒット後に製作された「お島千太郎」も面白い作品と思います。

 

 

<『ミュージックマンスリー』歌謡曲・月間ランキング推移>

年月 「柔」 「お島千太郎」
昭和39年12月 6位 -
昭和40年01月 2位 -
昭和40年02月 1位 -
昭和40年03月 2位 -
昭和40年04月 4位 -
昭和40年05月 13位 -
昭和40年06月 11位 13位
昭和40年07月 圏外 15位
・・・    
昭和40年12月 6位 圏外
昭和41年01月 4位 圏外
昭和41年02月 14位 圏外

 

 

 【過去に活躍した流行歌手が、再び人気を集める事】は、ただただ「スゴい!」と思います。

 

 "1曲のヒットで終わる事なく、継続して心に残る作品を残す活躍"に格の違いを感じます。

 

 この時期の美空ひばりさんのように【人気が再燃した流行歌手】と言えば、都はるみさんや五木ひろしさん、中島みゆきさんやサザンオールスターズさんが思い浮かびます。

 

 まさに時代を超えて愛される国民的歌手です。

 

 

間奏の語りは林与一さん

 「お島千太郎」が印象に残る理由は、セリフがあるからだと思います。

 

 そして【セリフを俳優が担当する演出】に新しさを感じます。

 

 戦前から存在する表現技巧ですが、めったに登場しないため印象に残ります。

 

 東海林太郎(しょうじ たろう)さんの「すみだ川」(1937年発売)では田中絹代さん、「上海の街角で」(1938年発売)では佐野周二さんがセリフを担当されています。

 

 1970年代には大信田礼子さんの「同棲時代」(1973年)で、阿井喬子さんがセリフを担当されています。(俳優が歌って、ナレーターがセリフを担当)

 

 

 歌の世界観をドラマチックに広げるテクニックと感じます。

 

 懐メロのテレビ番組で【イントロで司会者が曲紹介する演出】をみかける事がありますが、この手法も目的は同じような気がします。

 

 

 

お島千太郎とは?

 戦前に「お島千太郎旅唄」(1940年発売)が伊藤久男さん、二葉あき子さんの吹き込みで発売されています。

 

 当時新聞で連載されていた小説が映画化されたようです。

 

東日・大毎連載小説『蛇姫様』(原作川口松太郎)の東宝映画化のときの主題歌。(『新版日本流行歌史(中)1938~1959』)

 

 『金色夜叉』の"貫一お宮"に比べるとはるかに知名度が低いですが、戦前は【当時人気の小説が映画化されると、レコードも企画される流れ】があったようです。

 

 この流れのおかげで、流行歌では『唐人お吉』も有名です。

 

 1930年に映画化されたときに「唐人お吉の唄(黒船篇)/唐人お吉の唄(明烏篇)」が発売され、戦後にも歌謡浪曲「お吉物語」(1960年発売)が製作されています。

 

 「お島千太郎」は、リメイク版『新蛇姫様 お島千太郎』(1965年公開)の主題歌として企画されたようです。

 

 歌の通り、美空ひばりさんがお島役、林与一さんが千太郎役で出演されているようです。

 

 映画を見た事はありませんが、曲を聴いていると映像が浮かびます。演技を鑑賞しているかのように映像が思い浮かぶ、林与一さんのセリフが曲の世界を広げていると感じます。

 

 このレコードを企画された方々が「レコードだから役者も歌わなければならない!」という価値観に傾かなかった判断が曲の良さにつながったと感じます。

 

 

曲情報

 発売元:日本コロムビア株式会社

 品番:SAS-499

 

 A面

  「お島千太郎」

  作詩:石本美由紀

  作曲:古賀政男

  編曲:佐伯亮

  演奏時間:5分12秒

 

  せりふ 林与一

  三味線 豊寿・豊藤

  笛   福原百之助

  コロムビア・オーケストラ

 

 

 B面

  「蛇姫様」

  作詩:石本美由紀

  作曲:古賀政男

  編曲:佐伯亮

  演奏時間:4分23秒

 

  琴   米川敏子

  笛   福原百之助

  コロムビア・オーケストラ

 

 

参考資料

 「お島千太郎」レコードジャケット

 『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社

 『新版日本流行歌史(上)1968~1937』社会思想社

 『新版日本流行歌史(中)1938~1959』社会思想社

「やさしさ紙芝居」水谷豊(昭和55年)

流行時期(いつ流行った?)

 水谷豊さんの「やさしさ紙芝居」は、昭和55年(1980年)にヒットしました。

 

 TVドラマ『熱中時代』の第2シリーズ(1980年7月~1981年3月)の主題歌です。

 

 水谷豊さんと言えば現在では『相棒』のイメージですが、続編が製作された『熱中時代』は大切な作品だったのだろうと感じます。

 

 役柄は小学校の先生、主題歌の「やさしさ紙芝居」はドラマにぴったりな作品と感じます。

 

 (第1シリーズの主題歌は、現在ではなぜか『世界一受けたい授業』に採用されている原田潤さんの「ぼくの先生はフィーバー」(1978年)です。)

 

 

<『レコード・マンスリー』月間ランキング推移>

年月 順位
昭和55年07月下旬 レコード発売
昭和55年08月 20位
昭和55年09月 19位
昭和55年10月 24位

 

 


www.youtube.com

注)ライセンス FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT, INC.(FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT, INC. の代理); Muserk Rights Management、その他 1 件の楽曲著作権管理団体

 

 

 

大人になっても大切な"人を想う心"

 「やさしさ紙芝居」は"先生が生徒に語りかけるような歌詞"です。そして小学生が理解できる言葉で綴られているように感じます。

 

 ♪僕の先生は~、で歌い始める「ぼくの先生はフィーバー」が"小学生視点の先生のイメージ"なので、アンサーソングのように感じます。

 

 

 アンサーソングと言える「やさしさ紙芝居」は、"子供の頃に楽しんだ色んな遊び"を想い出して懐かしむセリフから始まります。

 

 私はベーゴマやメンコは全く経験した事が無い世代ですが、歌の主人公が【子どもの頃に夢中で楽しんだ記憶を忘れていない大人】と感じる事が出来ます。

 

 学校で教えられなくても理解できる【他人を想う心の大切さ】がこの曲の主題と感じます。

 

 

 実際は大人になってもこの気持ちを持っていると思いますが、年を重ねるごとにプライドや虚栄心、【他人より自分の生活が大切】の気持ちで世の中が回っていると感じ始めます。

 

 (人を国に置き換えると分かりやすいかも知れません。自国より国力が劣る他国に戦争を仕掛けたり、自国民の生活よりミサイル開発を優先しているような国が21世紀の現在で脅威となっています。)

 

 損得関係なく接する事が出来た子どもの頃のまなざし、誰もが持っていたはずですが、大人になるにつれてこの気持が薄れるのはいつの時代も同じと思われます。

 

 

実は大人に語りかけている?

 「やさしさ紙芝居」の歌唱で印象に残るのは、何度も繰り返される"ねぇ君"です。

 

 ・・・"君"って誰でしょう?

 

 作詞された松本隆さんの狙いが気になります。

 

 

 この曲を知った頃は、単純に"大人が子どもに生き方を教えている"と解釈していました。

 

 しかし何度も聴いていると、「我が良き友よ」のようにお金の為に子供相手に人生を説いているのは全く違う事は気付けます。

 

 

 1970年代末は"家庭内暴力"(子が親に行う。現在の強者が弱者に行う"DV"とは逆。)という言葉が流行したり、「ANAK(息子)」(1979年)のように親子でも心のつながりを築けない現実が表面化し始めます。

 

 

 『熱中時代』は時代の変化を反映したドラマだったのだろうと感じます。

 

 ディスコブームの勢いで製作された第1シーズンの主題歌と、上記のような"子の心の問題"が表面化した時期に製作された第2シーズンでは、"大人が子供に接する考え方"が一変した時期と思います。

 

 

 「やさしさ紙芝居」は水谷豊さんが演じる北野先生が、悩んでいる生徒よりも"子どもの気持が分からない親"に対するメッセージとして作詞されたのではないか?と想像しています。

 

 この曲を聴くと、大人になると忘れがちな"優劣や損得より、一緒に遊ぶ事が大切だった子どもの頃のフラットな気持ち"が呼び起こされます。

 

 かなり珍しい主題のヒット曲と感じます。

 

 

曲情報

 発売元:フォーライフレコード

 販売元:ポニー

 品番:FLS-1076

 

 日本テレビ系全国ネット『熱中時代』主題歌

 


 A面

  「やさしさ紙芝居」

  英題:YASASHISA KAMISHIBAI

  作詞:松本隆

  作曲:平尾昌晃

  編曲:石川鷹彦

  演奏時間:3分35秒

 

 

 B面

  「青空のバラード」

  英題:AOZORA NO BALLADE

  作詞:松本隆

  作曲:平尾昌晃

  編曲:石川鷹彦

  演奏時間:3分38秒

 

 

参考資料

 「やさしさ紙芝居」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社

 ◇ テレビドラマデータベース ◇ (tvdrama-db.com)

「ブラザービート」Snow Man(令和4年)

流行時期(いつ流行った?)

 Snow Manさんの「ブラザービート」は、令和4年(2022年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングによると、3月末に発売されたシングルは初登場と同時に人気が集まっています。

 

 "アイドルの新曲=CDが発売された初週が最大の勢い"の印象を持っていますが、「ブラザービート」は5月中旬に再び順位を上げていて興味深いです。

 

 


www.youtube.com

注)Snow Man 確認済みの動画

 

 

 

メンバーの個性を感じさせる歌詞

 「ブラザービート」は面白い作品と感じます。理由は、"歌の主人公が1人ではない"と感じるからです。

 

 ヒット曲の歌詞は【1人の主観で綴られる作詞】が当たり前なので、6つ子が入れ替わりワイワイと言い合う「ブラザービート」は聴いていて楽しいです。

 

 今まで考えた事もありませんでしたが、『おそ松さん』と男性アイドルグループの相性はバッチリと感じます(^^)/♪

 

 現在のアイドルはグループが主流で、ファンで無ければ「流行っていても、メンバーを知らないし・・・」と敬遠する気持ちが生まれますが、この曲はその壁を越えた作品と感じます。

 

 今までのアイドルグループの作品で、「ブラザービート」のように【各メンバーの歌唱に人格があると感じさせる作詞】は今まで無かったのかも・・・と気付かせてくれます。

 

 

"アイドルがカッコ良くない事を歌う"ギャップ

 前向きで明るい気持ちを歌うスタイルがジャニーズ事務所のアーティストの個性と感じます。

 

 近藤真彦さんやシブがき隊さん、少年隊さんなどジャニーズ事務所のアイドルが大活躍された昭和では恋心が重視に描かれている印象がありますので、平成に生まれたエンターテイメント性と思います。

 

 (ジャニーズについて詳しくありませんので光GENJIさんの「勇気100%」(1993年)がルーツ?と感じています。)

 

 

 「ブラザービート」は、数々の先輩の活躍で築かれた"前向きさ・明るさ"に加えて、"ユーモア"も感じる作品です。

 

 理由は、"カッコ良くない事を歌っている"からです。

 

 歌詞では怠惰な性格の主人公とそれを指摘したり励ましたりする主人公のやりとりが描かれています。

 

 リズムが優先で歌われるからか、聴いていてネガティブさは感じません。

 

 掛け合いが面白いですが、【憧れの存在のはずのアイドルが、カッコ良くない事を歌っている?】というギャップにユーモアを感じます♪

 

 ・・・アイドルのヒット曲で、自分の気分で"めんどくさい"とか"もっと寝ていたい"といった、自堕落な心情を表現した作品は他に思いつきません。

 

 とても画期的と思います。

 

 

聴き手に興味を持たせる"意外性"

 どの時代のヒット曲を聴いても、なぜか心が壁を作って否定する気持ちが生まれる曲は存在します。

 

 ヒット曲をテーマに好き勝手書かせていただいていますが、私も【流行っていても好きになれない曲】はたくさんあります。

 

 これは自分の先入観が最大の理由と思います。

 

 そういった作品に出会った時は「好きではない理由を勝手にふくらませて正当化する」みたいな心の働きが始まっている気がします。

 

 アイドルや演歌とカテゴリされる作品で感じる事が多いですが、「ブラザービート」はそんな聴き手に対して【本来の売りを逆手に取った作品】と感じさせる面白さを感じます。

 

 自虐的な演出?になるのか不明ですが、窮屈な時代に余裕を感じさせる表現は2022年のレコード大賞になってもおかしくない作品と感じました。

 

    私は「ブラザービート」のおかげで、同時にデビューされたSixTONESさんよりSnow Manさんに興味を持ちました。

 

 

参考資料

 「ブラザービート(通常盤)」CDジャケット

 「you大樹」オリコン

「ルンペン節」徳山璉(昭和6年発売)

世の中の流行を題材にして製作した時代?

 徳山璉(とくやま たまき)さんの「ルンペン節」は、昭和6年(1931年)に発売されました。

 

 "ルンペン"は前年に誕生した流行語のようで、現在でいう"ホームレス"に近い意味を持つ言葉です。

 

 この時期に発売されたレコードには、【当時流行していた現象を題材にした作品】が目立ちます。

 

<当時の流行を題材にした(と思われる作品)>

当時の流行 曲名 歌手 発売年
緊縮 緊縮小唄 二三吉 1929
モガ・モボ 洒落男 榎本健一 1929
OK ザッツ・オーケー 河原喜久恵 1930
女給 女給の唄 羽衣歌子 1930

 

 おそらく「ルンペン節」もこの流れをきっかけに製作されたと推測されます。

 

 


www.youtube.com

注)ライセンス JVCKENWOOD Victor Entertainment Corp.; Muserk Rights Management、その他 1 件の楽曲著作権管理団体

 

 

 「なぜ、世の中の流行りを題材にした作品が多数作られたのか?」と疑問が生まれますが、「東京行進曲」(1929年発売)が予想外にヒットしたからだと思われます。

 

 歌詞中の"小田急で逃げる"というフレーズが聴き手に受けたようで、「小田急る(おだきゅる)」という流行語が生まれたようです。(「駆け落ちする」という意味です。)

 

 【歌から流行語が生まれ、流行から歌を製作する】、"歌は世につれ"と形容される価値観が生まれたのは、この現象がきっかけかも知れません。

 

 

"ルンペン"は扱いにくい言葉では・・・

 1923年の関東大震災から復興を目指している時期に発生した1929年の世界恐慌で、不景気に拍車がかかった時期と推測されます。

 

 1929年には"大学は出たけれど"という流行語が生まれていますが、世界恐慌が発生する前に生まれていたようです。(意味は"新卒でも就職できない"というネガティブな言葉です。)

 

 失業して生活がままならない境遇を連想させる"ルンペン"もネガティブさを感じる言葉ですが、なぜか「ルンペン節」は気楽な主人公で聴き手に不安を感じさせません。

 

 イャーハッハッハ!と腹の底から大笑いするフレーズが印象に残りますが、謎の明るさで描かれたのはチャップリンさんの喜劇映画のおかげと想像しています。

 

 逆境を強い心で生きるチャップリンさんをイメージして製作されたのだろう、と解釈しています。

 

 

 歌詞に「プロの天国 木賃ホテル」というフレーズがありますが、【プロ】は"プロレタリアートの略(ブルジョワの対義語?)=ひどい環境で働く労働者"の意味と思われます。

 

 映画やレコードより小説が先に題材にしているようです。井伏鱒二さんの『蟹工船』が代表的なプロレタリア文学です。

 

 現代でもブラック企業や上級国民という格差を象徴する言葉が生まれているので、プロとブルジョワの100年前も似たような世相だったのかも知れません。

 

 

歌唱力より演技力?

 「ルンペン節」は大笑いする歌唱だけでなく、酔った様子を演じる歌唱も印象的です。

 

 この"感情的な歌唱"はレコード業界では画期的な試みだったと思います。

 

 現代でも歌唱力が重視で、感情を表に出した曲は珍しいです。

 

 (最近では「うっせぇわ」(2021年)の「はぁー!」と力を込めて怒りの感情を表現する歌い方や、「Habit」(2022年)の「言っちゃいけない事言うけど」と前置きして自虐的に笑う歌い方が思い浮かびますが、コロナ禍の特殊な事例と感じています。)

 

 感情を前面に出すのは『アナと雪の女王』「生まれてはじめて」(2014年)などのミュージカルが得意と思います。

 

 どちらかというと「ルンペン節」はミュージカルに近いと感じます。

 

 ミュージカルと言うと、1929年に宝塚歌劇団の『モン巴里』が人気となり、花組スター連の同名レコードが発売されています。

 

 流行を採用したのではないか?と思います。

 

 

実は風刺も込められている?

 「ルンペン節」に対して、当時は「タイトルとか、あの歌唱ってどうなの?」と感じられた人々もおられたかも知れません。

 

 しかし聴き手は「気楽にいこうよ」ではなく、「もうやってられません!」という"やけくその感情"として受け止められたのではないか?と想像しています。

 

 そう感じるのは歌詞の終わりが「ノンキだね」で終わっている事です。

 

 "ノンキダネ"で終わる歌で連想するのは1918年(大正7年)に発表された添田唖蝉坊(そえだ あぜんぼう)さんの「ノンキ節」です。

 

 おそらくこの作品を意識していると思います。

 

 「ノンキ節」は風刺の効いた作品で、2023年でも理解できる歌詞は2番です。

貧乏でこそあれ日本人はエライ それに第一辛抱強い 天井知らずに物価は騰がっても 湯なり粥なりすすって生きている ア ノンキだね

 

 「ルンペン節」が後世に名を残したのは、当時の流行語のエロ・グロ・ナンセンスのなかでナンセンスな作品として受け止められたからではないか?と想像しています。

 

 高度経済成長期のクレイジー・キャッツさんの作品にも通じる気がします。

 

 

参考資料

 『日本流行歌史(上)1868~1937』社会思想社

「奥飛騨慕情」竜鉄也(昭和56年)

流行時期(いつ流行った?)

 竜鉄也さんの「奥飛騨慕情」は、昭和56年(1981年)にヒットしました。

 


 『レコードマンスリー』のランキングでは、1980年6月下旬に発売されたレコードは8か月後の1981年2月に最高順位を記録しています。

 

 ランキング推移は長期間に渡って上位をキープし続けており、根強い支持を得続けていた作品だった事が分かります。

 


<『レコード・マンスリー』月間ランキング推移>

年月 順位
昭和55年12月 12位
昭和56年01月 8位
昭和56年02月 6位
昭和56年03月 7位
昭和56年04月 11位
昭和56年05月 10位
昭和56年06月 9位
昭和56年07月 21位
昭和56年08月 25位
昭和57年01月 21位

 

 


www.youtube.com

注)VAP OFFICIAL MUSIC CHANNELの動画

 

 

 1970年後半からカラオケが人気となった事で演歌の大ヒット曲が目立ちます。

 

 「奥飛騨慕情」が多くの支持を集めたのも、"夫婦愛を主題にした演歌"がたくさんヒットした1980年の反動もあったのかも知れません。

 

 

風景の中の主人公

 「奥飛騨慕情」を聴くと、【心情に共感する気持ち】と【風景を想像する気持ち】も生まれます。

 

 主題が"特色のあるの風景のなかにいる主人公の心情"と捉えることが出来ます。

 

 この視点で描かれた作品は、演歌ではなくポップスでも存在します。

 

 「奥飛騨慕情」がヒットした前後の時期で思い付くのは、異国情緒の「異邦人」(1979年、1980年)や喫茶店の「ハロー・グッバイ」(1981年)など。

 

 ポップスに比べると圧倒的に歌詞が短い五七調の演歌で、風景と心情を見事に描いた上品さも感じます。

 

 

「奥飛騨ってどんな街だろう?」と想像させる歌詞

 「奥飛騨慕情」の歌詞で気になるのは、奥飛騨を連想させる固有名詞が少ない事です。

 

 白百合は長野県が産地?・・・もしかして雷鳥だけ?

 

 「"温泉と雪"だけでは、聴き手が他の温泉街を連想するかも知れないから、あえてタイトルや歌詞の最後に奥飛騨と明言した」という印象を受けます。

 

 他のご当地ソングと比べて、地元を前面に推さない作詞と感じます。

 

 「別れても好きな人」(1980年)のように東京の主要な街の名をちりばめるような派手さと対照的で控えめな印象です。

 

 とても奥ゆかしさを感じます。

 

 

 そして、過去のヒット曲で奥飛騨を描いた作品は無く、この曲のヒットは聴き手に「奥飛騨ってどんなところだろう?」と想像するきっかけにもなったのではないか?と思います。

 

 「柳ヶ瀬ブルース」(1966年)の人気の集め方に似ているかも知れません。

 

 

伴奏も控えめ?

 イントロを聴いただけで曲名が分かる個性を持つ「奥飛騨慕情」ですが、全編を通して控えめな印象を受けます。

 

 主役は竜鉄也さんの歌声で、伴奏が脇役に徹するように編曲されている作品と感じます。

 

 私はこの編曲のおかげで、演歌の定義が大衆化する前の戦前の昭和歌謡を連想してしまいます。

 

 藤山一郎さんの「酒は涙か溜息か」(1931年発売)に通じる編曲と感じます。

 

 1980年代になると、大抵のヒット曲は"特定のフレーズが印象に残る作品"が多くなりますが、「奥飛騨慕情」にはその要素が無く、"逆に何度聴いても飽きない"という魅力を持っています。

 

 1980年代に、"あえて控えめに表現した作品"がヒットした事に驚きです。

 

 世の中に、まだこのような作品を支持する価値観が残っていた?と想像しています。

 

 もう2023年。おそらくこれからの時代では見向きされる可能性がかなり低い音楽表現になってしまうのだろうと薄々感じています・・・。

 


曲情報

 発売元:トリオ式会社

 品番:3B-177

 


 A面

  「奥飛騨慕情」

  作詞:竜鉄也

  作曲:竜鉄也

  編曲:京建輔

  演奏時間:4分31秒

 

 

 

 B面

  「せせらぎの宿」

  作詞:かぜ耕士

  作曲:沖田宗丸

  編曲:京建輔

  演奏時間:4分24秒

 

 

 

参考資料

 「奥飛騨慕情」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社

「ライディーン」イエロー・マジック・オーケストラ(昭和55年)

流行時期(いつ流行った?)

 イエロー・マジック・オーケストラさんの「ライディーン」は、昭和55年(1980年)にヒットしました。

 

 『レコードマンスリー』のランキングでは、6月下旬に発売された「ライディーン」は翌月7月から9月にかけてヒットしています。

 

 前年に発売されたLP『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のシングルカット盤です。

 

 「テクノポリス」が先行してシングルカットされています。

 

 関連する作品のランキング推移をまとめてみました。

 

 

<『レコード・マンスリー』月間ランキング推移>

年月

『ソリッド・ステイト・

 サヴァイヴァー』

「テクノポリス」 「ライディーン」
昭和54年09月 下旬に発売 - -
昭和54年10月 - 下旬に発売 -
昭和54年11月 19位 - -
昭和54年12月 - - -
昭和55年01月 11位 - -
昭和55年02月 4位 - -
昭和55年03月 4位 - -
昭和55年04月 12位 - -
昭和55年05月 13位 17位 -
昭和55年06月 14位 9位 下旬に発売
昭和55年07月 12位 11位 15位
昭和55年08月 28位 25位 13位
昭和55年09月 - - 26位

 

 

 


YELLOW MAGIC ORCHESTRA 『RYDEEN』(HD Remaster・Short ver.)

注)Sony Music (Japan)の動画

 

 

 LP発売から5ヶ月後にベストテン入りしている事が興味深いです。時間が掛かっていますね。

 

 さらに「ライディーン」がLP発売の9ヶ月後に発売されていた事も興味深いです。

 

 

LP発売から9か月後にシングルカット?!

 「ライディーン」のヒットで気になる事は、"1枚のLPから2曲シングルカットされ、どちらもヒットした事"です。

 


 LPは勉強不足ですが、アメリカのビルボードではマイケル・ジャクソンさんの『スリラー』からシングルカット盤がたくさんヒットした記録を見た事があります。

 

 海外ではあり得る事?かも知れませんが、日本では稀な事だと思います。

 

 (日本でシングルカット盤がヒットした例で思い付くのは、かぐや姫さんの「神田川」(1973年)と太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」(1976年)しか思いつきません。)

 

 

 私の持っているLPの帯には「欧米公演の大成功により世界音楽シーンの頂点に立ったY・M・Oセカンド・アルバム!!話題のヒット・シングル「テクノポリス」収録」と印字されています。

 

 レコード会社は「欧米で反応が良かったのは『テクノポリス』だからシングルカットしよう!」と考えて企画されたのかも知れません。

 

 しかしLPがヒットすると、「アレ?日本では『ライディーン』のほうが人気が高いんじゃない?」と気付かれた事で追加でシングルカットされたと思います。

 

 

"勇者"ライディーン?!

 「ライディーン」の解説欄には、

 

今回シングル・カットされた「ライディーン」などは、イエロー・マジック・オーケストラのイマジネイションの広がりを見事に表現している。まるで80年代版スター・ウォーズのように、勇者ライディーンがさっそうと馬に乗って戦場を駆け抜けていくようだ。(一部抜粋)

 

 と書かれています。

 

 「勇者ライディーン?…勇者?」と疑問を感じて検索すると、1970年代に『勇者ライディーン』というアニメが放送されていたのですね。

 

 (もしかして、ドラクエで勇者しか詠唱できないデイン系呪文だったライデインも『勇者ライディーン』が元になっている・・・?)

 

 私はヒット曲以外は全く疎いので存じ上げませんでしたが、『勇者ライディーン』が多くの方々に影響を与えた作品だったのだろうと知る事ができました。

 

 

「ライディーン」が支持された理由

 当時を知らない私は「YMOさんと言えば『ライディーン』」と思う世代です。

 

 そしてYMOさんと言えば"坂本龍一さんの音楽"というイメージも持っていますが、「ライディーン」は高橋ユキヒロさんが作曲されています。

 

 

 「ライディーン」が印象に残る理由、26抜き短音階が用いられているからではないか?と考えています。

 

 ゲームミュージックも生まれる1980年代。代表格のドラクエの音楽を作曲されたすぎやまこういちさんの音楽に近しいものを感じます。

 

 すぎやまこういちさんが作曲された初ヒット曲「涙のギター」(1966年)も同じ26抜き音階が用いられているように感じます。

 

 きゃりーぱみゅぱみゅさんの「にんじゃりばんばん」(2013年)でも用いられています。

 

 (作曲された中田ヤスタカさんも意識されておられるかも知れません。時代を超えても日本人受けするテクノサウンドには必須なテクニックかも知れないと感じます。)

 

 

 もうひとつ気になるテクニックは、下降進行のコード進行です。(ゲームミュージックの楽譜は持っていませんが、感覚的にこのコード進行が多様されている気がしています。)

 

 最近のヒット曲では「Habit」(2022年)が思いつきますが、こちらも日本人好みの音楽ではないかと感じます。

 

 (・・・音楽は未だに勉強中ですが、「①26抜き短音階と②下降進行のコード進行は、"日本人が好む音楽"と因果関係がある」と感じています。)

 

 

 このテクニックを好む理由は全く分かりません。(遺伝子レベルで刻まれているのか、長い年月を掛けて築かれて来た日本の文化によるものなのか・・・。)

 

 今を生きる私は、「このテクニックを用いた作品に好きなヒット曲が多い」という気がしています。

 

 

曲情報

 発売元:アルファレコード株式会社

 品番:ALR-701

 

 

 A面

  「ライディーン」

  作曲:高橋ユキヒロ

  編曲:イエロー・マジック・オーケストラ

  演奏時間:4分25秒

 

 

 B面

  「コズミック・サーフィン」

  作曲:細野晴臣

  編曲:イエロー・マジック・オーケストラ

  演奏時間:3分51秒

 

 

参考資料

 「ライディーン」レコードジャケット

 『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』レコードジャケット

 「テクノポリス」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 『オリコンチャートブック〈LP編(昭和45年‐平成1年)〉』オリコン

 『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社

「悪女」中島みゆき(昭和56年)

流行時期(いつ流行った?)

 中島みゆきさんの「悪女」は、昭和56年(1981年)にヒットしました。

 

 『レコードマンスリー』のランキングでは、10月下旬に発売されたレコードは12月に最高順位を記録しています。

 

<『レコード・マンスリー』月間ランキング推移>

年月 順位
昭和56年11月 5位
昭和56年12月 1位
昭和57年01月 2位
昭和57年02月 10位
昭和57年03月 28位

 

 


www.youtube.com

注)中島みゆき公式チャンネルの動画

 

 

強がって本心を伝えない1980年代

 「悪女」は、"恋人にわざと嫌われるように行動する主人公の心理"が主題です。

 

 「どうしてそんな事をするのだろう?」と誰もが感じます。そして背景を色々と想像させてくれる歌詞が最大の魅力と思います。

 

 

 1980年代になると、主に女性歌手の作品で"強がる心理"を描いた作品がヒットし始めます。

 

 「不良少女白書」(1981年)が、"本当に思ってる事を言っても周りから否定される"と歌っています。

 

 1970年代に製作された「まちぶせ」も1981年に石川ひとみさんのカバーでヒットしています。

 

 おそらく、若者のあいだにも"協調性を重視(強要?)する雰囲気で心が疲れている時代背景"が表面化したのだろうと推測します。

 

 

名曲は"全てを語らない"

 歌詞の解釈は人それぞれです。

 

 「悪女」を聴いて誰もが理解できる事は、"本心ではないのに、嫌われようと行動する主人公の心理"です。

 

 誰もが「なぜそんな事をするの?」と思いますが、その理由は歌われません。

 

 聴き手がこの文脈を読もうとする心理が、「悪女」を名曲にしているのだろうと思います。

 

 

 本当に歌詞の解釈は人それぞれです。以下は個人の妄想です。

 

 

 私は「恋人が隠すあの娘=友達のマリコ」と想像しています。

 

 

 中島みゆきさんのヒット曲は、いつも主人公がまっすぐで純粋な心を持っています。

 

 そのため「悪女」の主人公も、自分の心を騙せるほど器用ではない人物・・・のはず。

 

 一体、主人公は誰の為に無理をして不本意な努力をするのでしょう?

 

 

 おそらく恋人とのすれ違いが目立ち始めて「この人とは幸せになる事は出来ないカモ」と自覚した時期と、何らかの理由で「親友のマリコに心移りしているのでは?」と感じた時期が重なり、主人公が疑心暗鬼になったのだろうと想像します。

 

 恋愛の悩みを相談出来るくらい仲の良い親友に対して「私の恋人を奪うなんて!」と怒りを覚えた主人公が、わざと「新しい恋人が出来た」と伝えたり・・・。

 

 その電話が終わった後に、恋人へ電話を掛けてもずっと話し中・・・。

 

 主人公は「・・・アレ?さっきのケンカで受話器外しているのかな?」と推測していますが、もしかすると「その時、恋人はマリコと長電話をしていた」という可能性も・・・と想像しています。

 

 "悪女=親友のマリコ"で、「じゃあ私も、心の駆け引きが出来る女を演じてやろう!・・・でもやっぱり出来ない(泣)」という心理を描かれているのでは?と解釈しています。

 

 

 ・・・長々と申し訳ございませんでしたm(_ _)m。

 

 

 ヒット曲のなかでも名曲と呼ばれる作品には、上記のように【聴き手に想像の余地を与える余白】が存在します。

 

 

 「悪女」は主人公の心の迷いが綴られ続けますが、なぜか聴いていて心が救われる作品です♪

 

 

曲情報

 発売元:株式会社キャニオン・レコード

 品番:7A0122[V]

 

 

 A面

  「悪女」

  作詞・作曲:中島みゆき

  編曲:船山基紀

  演奏時間:4分01秒

 

 

 B面

  「笑わせるじゃないか」

  作詞・作曲:中島みゆき

  編曲:船山基紀

  演奏時間:3分56秒

 

 

参考資料

 「悪女」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社

「不良少女白書」榊原まさとし(昭和56年)

f:id:hitchartjapan:20211211175820j:plain

流行時期(いつ流行った?)

 榊原まさとしさんの「不良少女白書」は、昭和56年(1981年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングによると5月に発売されたレコードは、10月下旬に最高順位を記録しています。

 

 ヒットの規模は小さいですが、ロングセラーの支持を得た作品です。

 

 


榊原まさとし 不良少女白書

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Nippon Columbia Co., Ltd.(COLUMBIA の代理); Muserk Rights Management

 

 

 榊原まさとしさんは「結婚するって本当ですか」(1974年)のダ・カーポさんのメンバーです。

 

 

さだまさしさんの作品はハートフル

 「不良少女白書」は、さだまさしさん作詩・作曲です。

 

  さだまさしさんのヒット曲はどの作品も愛情を感じます。

 

 "主人公の気持ちに寄り添い、ちょうど良い距離感で心情を代弁する視点"に優しさを感じます。

 

 "愛とは何か?"を知っているさだまさしさんが、"愛を知らない主人公"を描いた事が「不良少女白書」の個性と感じます。

 

 

 "世間"という見えない多数派になじめず、変化する世の中の価値観に対して疑問を感じる少数派の若者の葛藤が描かれています。

 

 歌詞に登場する"100で無ければ0なのか?"といった問いかけは、2020年代の現在でも心に突き刺さるフレーズです。

 

 今でも生きる力を後押ししてくれるような作品と思います。

 

 

心と生活のバランスが乱れ始めた1980年代?

 1970年代末から"家庭内の親子関係の不和"を題材にした作品が登場し始めます。

 

 我が子と気持ちが通じ合えないと、親の立場で歌われた「ANAK(息子)」(1979)が先駆けと思います。

 

 親に反発する子は、1980年代にツッパリという表現で様々なヒット曲に登場し始めます。

 

 演歌では"長年連れ添った夫婦愛"が支持されていますので、ギャップが興味深いです。

 

 (当時を知らない世代ですが、敗戦後の生活が豊かでない時代を知っている親の世代にとっては、一億総中流の意識が築かれたであろう1970年代に「やっと幸福を手に入れた」という価値観を持っていたのかも知れない、と想像しています。)

 

 

「みんながカラスは黒い」と言ってるでしょ!

 当時を知りませんが、おそらく1980年代は、多くの人が"生活が豊かになった"と実感する時代だったと思います。

 

 そして、皆が「カラスは黒い」という価値観を持っていて、もし「カラスは白い」と言っても「みんな黒いと言ってるから黒い」という多数決の価値観が勝る時代が始まったと想像できます。

 

 築かれた秩序を乱すような意見に耳を傾けない時代?

 

 欅坂46さんの「黒い羊」(2019年)も同じ主題ですね。

 

 現在でも通じる価値観です。

 

 

 1980年代は他の年代に比べて、現在でも通じる"心の迷い具合"を描いた作品が多いと思います。

 

 安田講堂を占拠するような学生運動も起きなくなり、エネルギーを持て余した若者が"他人と自分を比較するプライド"を描いた作品が登場し始めます。(「まちぶせ」(1981年)や「待つわ」(1982年)など)

 

 不良というレッテルを張られた若者が描かれたり、なぜか夫婦愛から浮気・不倫に走る大人が主人公の作品が人気を集め始めたりする1980年代・・・。

 

 「不良少女白書」は現在に通じる"心の葛藤"を描いた先駆けの作品と思います。

 

 "家族愛"をテーマに楽曲を製作されるさだまさしさんだからこそ、親子間でも価値観の違いで亀裂が生じる時代になった事にいち早く気付かれて、「不良少女白書」を製作されたのだろうと思います。

 

 

曲情報

 製造発売元:日本コロムビア株式会社

 品番:AH-64-A

 

 

 友人さだまさしの楽曲。”不良少女白書”をレコーディング。ソロ歌手として、はじめてのシングル盤。

 

 A面

  「不良少女白書」

  作詩・作曲:さだまさし

  編曲:信田かずお

  演奏時間:5分15秒

 

 

 B面

  「いもうと」

  作詩・作曲:榊原政敏

  編曲:島津秀雄

  演奏時間:6分17秒

 

 

参考資料

 「不良少女白書」レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

「お願いマッスル」紗倉ひびき(CV:ファイルーズあい)&街雄鳴造(CV:石川界人)(令和元年)

流行時期(いつ流行った?)

 紗倉ひびき(CV:ファイルーズあい)&街雄鳴造(CV:石川界人)さんの「お願いマッスル」は、令和元年(2019年)にヒットしました。

 

 7月下旬に配信された楽曲は同月に最高順位を記録しています。

 

<mora~WALKMAN公式ミュージックストア~月間ランキング推移>

年月 通常 ハイレゾ
令和元年07月 5位 41位
令和元年08月 7位 49位
令和元年09月 19位 84位
令和元年10月 41位 -

 

 TVアニメ『ダンベル何キロ持てる?』のオープニングテーマ曲です。

 

 驚きなのは、YouTubeに投稿された下の動画の再生回数が2億6千万回を記録している事です(2023年1月3日時点)。

 

 


www.youtube.com

注)KADOKAWAanime 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

人気の理由は歌?映像?どっちなんだい?!

 「お願いマッスル」のYoutube再生回数は驚きです。

 

 フルバージョンでもないのに。

 

 「Habit」(2022年)の2倍・・・。

 

 同じくフルではないLiSAさんの「LiSA 『紅蓮華』 -MUSiC CLiP YouTube EDIT ver.-」でも9600万回です。

 

 

 再生回数が1億回を突破した事で、2020年9月9日に記念動画が投稿されています。

 

 ベトナムで人気が集まった事が語られています。

 

<『ダンベル何キロ持てる?』OP1億再生突破記念コメント>


www.youtube.com

注)KADOKAWAanime 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

 ベトナムで支持された理由は「曲よりも映像に映るボディビルダー(才木玲佳さんと横川尚隆さん)に人気が集まったのでは?」と解釈しています。

 

 

筋肉は裏切らない・・・売れる(確信)

 筋肉をテーマにした曲で思い付くのは、かたせ梨乃&カツヤクキンさんの「ムキムキマンのエンゼル体操」(1978年発売)です。

 

 レコードはヒットしていませんが、当時はTVで話題になったようです。

 

 ムキムキマンも肉体美を披露するときに、大胸筋を動かすパフォーマンスをされているみたいですね。

 

 「お願いマッスル」に通じる価値観を持った作品と思います。

 

 

 運動不足を感じる現代社会では、身体を鍛える健康法がブームになったりフィットネスやジムが産業として成り立っていたりします。

 

 行動制限が緩和されつつある今、外出の自粛や在宅勤務でなまった身体を鍛えるニーズは高まっていると感じます。

 

 もしも、今年に「お願いマッスル」が発売されていたらどうなっていたのだろう?と想像したりします。

 

 

無心で聴けるシンプルな音楽

 「お願いマッスル」は聴き手を無心にさせてくれる音楽と思います。

 

 歌の主題は身体を鍛える事のみ。

 

 そして音楽もBGM感覚で聞き流せるようなシンプルな繰り返しが特徴です。

 

 歌詞の意図や音楽技巧に凝った表現は全くしていないため、聴き手は余計な事を考えずに聴く事が出来るタイプの音楽と思います。

 

 単純明快で聴いていて面白い作品です。

 

 

 令和になってからアニメ発のヒット曲が増えた印象がありますが、この作品はアニメより筋肉のパワーで人気を集めた特殊な作品と思います。

 

 

曲情報

 発売元:株式会社KADOKAWA

 品番:ZMCZ-13191

 発売日:19.7.24

 

 筋肉に、お願いだ!

 はい、サイドチェストーー!

 

 トラック1

  「お願いマッスル」

  歌:紗倉ひびき(CV:ファイルーズあい)&街雄鳴造(CV:石川界人)

  作詞:サイドチェスト烏屋

  作曲:サイドチェスト烏屋、シックスパック篠崎

  編曲:シックスパック篠崎

  trumpet:宇野嘉紘

  saxophone:Yoshi Yamasaki

  trombone:中山雄貴

  chorus:RIRE、アサコ、芥子莉紗、相合谷由馬、ぽん、荻野雄輔

  all other instruments & programming:篠崎あやと(TOKYO LOGIC)

 

 トラック2

  「マッチョアネーム?」

  歌:街雄鳴造(CV:石川界人)

  作詞:サイドチェスト烏屋

  作曲:サイドチェスト烏屋、シックスパック篠崎

  編曲:シックスパック篠崎

  chorus:相合谷由馬、ぽん、治田陽

  all other instruments & programming:篠崎あやと(TOKYO LOGIC)

 

 

参考資料

 「お願いマッスル」CDジャケット

 「音楽ダウンロード・音楽配信サイト mora ~WALKMAN®公式ミュージックストア~」