流行時期(いつ流行った?)
水谷豊さんの「やさしさ紙芝居」は、昭和55年(1980年)にヒットしました。
TVドラマ『熱中時代』の第2シリーズ(1980年7月~1981年3月)の主題歌です。
水谷豊さんと言えば現在では『相棒』のイメージですが、続編が製作された『熱中時代』は大切な作品だったのだろうと感じます。
役柄は小学校の先生、主題歌の「やさしさ紙芝居」はドラマにぴったりな作品と感じます。
(第1シリーズの主題歌は、現在ではなぜか『世界一受けたい授業』に採用されている原田潤さんの「ぼくの先生はフィーバー」(1978年)です。)
<『レコード・マンスリー』月間ランキング推移>
年月 | 順位 |
昭和55年07月下旬 | レコード発売 |
昭和55年08月 | 20位 |
昭和55年09月 | 19位 |
昭和55年10月 | 24位 |
注)ライセンス FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT, INC.(FOR LIFE MUSIC ENTERTAINMENT, INC. の代理); Muserk Rights Management、その他 1 件の楽曲著作権管理団体
大人になっても大切な"人を想う心"
「やさしさ紙芝居」は"先生が生徒に語りかけるような歌詞"です。そして小学生が理解できる言葉で綴られているように感じます。
♪僕の先生は~、で歌い始める「ぼくの先生はフィーバー」が"小学生視点の先生のイメージ"なので、アンサーソングのように感じます。
アンサーソングと言える「やさしさ紙芝居」は、"子供の頃に楽しんだ色んな遊び"を想い出して懐かしむセリフから始まります。
私はベーゴマやメンコは全く経験した事が無い世代ですが、歌の主人公が【子どもの頃に夢中で楽しんだ記憶を忘れていない大人】と感じる事が出来ます。
学校で教えられなくても理解できる【他人を想う心の大切さ】がこの曲の主題と感じます。
実際は大人になってもこの気持ちを持っていると思いますが、年を重ねるごとにプライドや虚栄心、【他人より自分の生活が大切】の気持ちで世の中が回っていると感じ始めます。
(人を国に置き換えると分かりやすいかも知れません。自国より国力が劣る他国に戦争を仕掛けたり、自国民の生活よりミサイル開発を優先しているような国が21世紀の現在で脅威となっています。)
損得関係なく接する事が出来た子どもの頃のまなざし、誰もが持っていたはずですが、大人になるにつれてこの気持が薄れるのはいつの時代も同じと思われます。
実は大人に語りかけている?
「やさしさ紙芝居」の歌唱で印象に残るのは、何度も繰り返される"ねぇ君"です。
・・・"君"って誰でしょう?
作詞された松本隆さんの狙いが気になります。
この曲を知った頃は、単純に"大人が子どもに生き方を教えている"と解釈していました。
しかし何度も聴いていると、「我が良き友よ」のようにお金の為に子供相手に人生を説いているのは全く違う事は気付けます。
1970年代末は"家庭内暴力"(子が親に行う。現在の強者が弱者に行う"DV"とは逆。)という言葉が流行したり、「ANAK(息子)」(1979年)のように親子でも心のつながりを築けない現実が表面化し始めます。
『熱中時代』は時代の変化を反映したドラマだったのだろうと感じます。
ディスコブームの勢いで製作された第1シーズンの主題歌と、上記のような"子の心の問題"が表面化した時期に製作された第2シーズンでは、"大人が子供に接する考え方"が一変した時期と思います。
「やさしさ紙芝居」は水谷豊さんが演じる北野先生が、悩んでいる生徒よりも"子どもの気持が分からない親"に対するメッセージとして作詞されたのではないか?と想像しています。
この曲を聴くと、大人になると忘れがちな"優劣や損得より、一緒に遊ぶ事が大切だった子どもの頃のフラットな気持ち"が呼び起こされます。
かなり珍しい主題のヒット曲と感じます。
曲情報
発売元:フォーライフレコード
販売元:ポニー
品番:FLS-1076
日本テレビ系全国ネット『熱中時代』主題歌
A面
「やさしさ紙芝居」
英題:YASASHISA KAMISHIBAI
作詞:松本隆
作曲:平尾昌晃
編曲:石川鷹彦
演奏時間:3分35秒
B面
「青空のバラード」
英題:AOZORA NO BALLADE
作詞:松本隆
作曲:平尾昌晃
編曲:石川鷹彦
演奏時間:3分38秒
参考資料
「やさしさ紙芝居」レコードジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社