流行時期(いつ流行った?)
美空ひばりさん、林与一さんの「お島千太郎」は、昭和40年(1965年)にヒットしました。
『ミュージックマンスリー』の月間ランキングによると、6,7月にヒットしています。
注)ライセンス Nippon Columbia Co., Ltd.(COLUMBIA の代理); Muserk Rights Management、その他 1 件の楽曲著作権管理団体
再ブレイクした美空ひばりさん
「柔」は美空ひばりさんの久しぶりの大ヒット曲です。翌年には「悲しい酒」(1966年)、その次の年には「真赤な太陽」(1967年)と大ヒットが続きます。
多くの大ヒット曲で記憶に埋もれてしまった印象がありますが、「柔」の大ヒット後に製作された「お島千太郎」も面白い作品と思います。
<『ミュージックマンスリー』歌謡曲・月間ランキング推移>
年月 | 「柔」 | 「お島千太郎」 |
昭和39年12月 | 6位 | - |
昭和40年01月 | 2位 | - |
昭和40年02月 | 1位 | - |
昭和40年03月 | 2位 | - |
昭和40年04月 | 4位 | - |
昭和40年05月 | 13位 | - |
昭和40年06月 | 11位 | 13位 |
昭和40年07月 | 圏外 | 15位 |
・・・ | ||
昭和40年12月 | 6位 | 圏外 |
昭和41年01月 | 4位 | 圏外 |
昭和41年02月 | 14位 | 圏外 |
【過去に活躍した流行歌手が、再び人気を集める事】は、ただただ「スゴい!」と思います。
"1曲のヒットで終わる事なく、継続して心に残る作品を残す活躍"に格の違いを感じます。
この時期の美空ひばりさんのように【人気が再燃した流行歌手】と言えば、都はるみさんや五木ひろしさん、中島みゆきさんやサザンオールスターズさんが思い浮かびます。
まさに時代を超えて愛される国民的歌手です。
間奏の語りは林与一さん
「お島千太郎」が印象に残る理由は、セリフがあるからだと思います。
そして【セリフを俳優が担当する演出】に新しさを感じます。
戦前から存在する表現技巧ですが、めったに登場しないため印象に残ります。
東海林太郎(しょうじ たろう)さんの「すみだ川」(1937年発売)では田中絹代さん、「上海の街角で」(1938年発売)では佐野周二さんがセリフを担当されています。
1970年代には大信田礼子さんの「同棲時代」(1973年)で、阿井喬子さんがセリフを担当されています。(俳優が歌って、ナレーターがセリフを担当)
歌の世界観をドラマチックに広げるテクニックと感じます。
懐メロのテレビ番組で【イントロで司会者が曲紹介する演出】をみかける事がありますが、この手法も目的は同じような気がします。
お島千太郎とは?
戦前に「お島千太郎旅唄」(1940年発売)が伊藤久男さん、二葉あき子さんの吹き込みで発売されています。
当時新聞で連載されていた小説が映画化されたようです。
東日・大毎連載小説『蛇姫様』(原作川口松太郎)の東宝映画化のときの主題歌。(『新版日本流行歌史(中)1938~1959』)
『金色夜叉』の"貫一お宮"に比べるとはるかに知名度が低いですが、戦前は【当時人気の小説が映画化されると、レコードも企画される流れ】があったようです。
この流れのおかげで、流行歌では『唐人お吉』も有名です。
1930年に映画化されたときに「唐人お吉の唄(黒船篇)/唐人お吉の唄(明烏篇)」が発売され、戦後にも歌謡浪曲「お吉物語」(1960年発売)が製作されています。
「お島千太郎」は、リメイク版『新蛇姫様 お島千太郎』(1965年公開)の主題歌として企画されたようです。
歌の通り、美空ひばりさんがお島役、林与一さんが千太郎役で出演されているようです。
映画を見た事はありませんが、曲を聴いていると映像が浮かびます。演技を鑑賞しているかのように映像が思い浮かぶ、林与一さんのセリフが曲の世界を広げていると感じます。
このレコードを企画された方々が「レコードだから役者も歌わなければならない!」という価値観に傾かなかった判断が曲の良さにつながったと感じます。
曲情報
発売元:日本コロムビア株式会社
品番:SAS-499
A面
「お島千太郎」
作詩:石本美由紀
作曲:古賀政男
編曲:佐伯亮
演奏時間:5分12秒
せりふ 林与一
三味線 豊寿・豊藤
笛 福原百之助
コロムビア・オーケストラ
B面
「蛇姫様」
作詩:石本美由紀
作曲:古賀政男
編曲:佐伯亮
演奏時間:4分23秒
琴 米川敏子
笛 福原百之助
コロムビア・オーケストラ
参考資料
「お島千太郎」レコードジャケット
『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社
『新版日本流行歌史(上)1968~1937』社会思想社
『新版日本流行歌史(中)1938~1959』社会思想社