流行時期(いつ流行った?)
榊原まさとしさんの「不良少女白書」は、昭和56年(1981年)にヒットしました。
オリコンランキングによると5月に発売されたレコードは、10月下旬に最高順位を記録しています。
ヒットの規模は小さいですが、ロングセラーの支持を得た作品です。
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Nippon Columbia Co., Ltd.(COLUMBIA の代理); Muserk Rights Management
榊原まさとしさんは「結婚するって本当ですか」(1974年)のダ・カーポさんのメンバーです。
さだまさしさんの作品はハートフル
「不良少女白書」は、さだまさしさん作詩・作曲です。
さだまさしさんのヒット曲はどの作品も愛情を感じます。
"主人公の気持ちに寄り添い、ちょうど良い距離感で心情を代弁する視点"に優しさを感じます。
"愛とは何か?"を知っているさだまさしさんが、"愛を知らない主人公"を描いた事が「不良少女白書」の個性と感じます。
"世間"という見えない多数派になじめず、変化する世の中の価値観に対して疑問を感じる少数派の若者の葛藤が描かれています。
歌詞に登場する"100で無ければ0なのか?"といった問いかけは、2020年代の現在でも心に突き刺さるフレーズです。
今でも生きる力を後押ししてくれるような作品と思います。
心と生活のバランスが乱れ始めた1980年代?
1970年代末から"家庭内の親子関係の不和"を題材にした作品が登場し始めます。
我が子と気持ちが通じ合えないと、親の立場で歌われた「ANAK(息子)」(1979)が先駆けと思います。
親に反発する子は、1980年代にツッパリという表現で様々なヒット曲に登場し始めます。
演歌では"長年連れ添った夫婦愛"が支持されていますので、ギャップが興味深いです。
(当時を知らない世代ですが、敗戦後の生活が豊かでない時代を知っている親の世代にとっては、一億総中流の意識が築かれたであろう1970年代に「やっと幸福を手に入れた」という価値観を持っていたのかも知れない、と想像しています。)
「みんながカラスは黒い」と言ってるでしょ!
当時を知りませんが、おそらく1980年代は、多くの人が"生活が豊かになった"と実感する時代だったと思います。
そして、皆が「カラスは黒い」という価値観を持っていて、もし「カラスは白い」と言っても「みんな黒いと言ってるから黒い」という多数決の価値観が勝る時代が始まったと想像できます。
築かれた秩序を乱すような意見に耳を傾けない時代?
欅坂46さんの「黒い羊」(2019年)も同じ主題ですね。
現在でも通じる価値観です。
1980年代は他の年代に比べて、現在でも通じる"心の迷い具合"を描いた作品が多いと思います。
安田講堂を占拠するような学生運動も起きなくなり、エネルギーを持て余した若者が"他人と自分を比較するプライド"を描いた作品が登場し始めます。(「まちぶせ」(1981年)や「待つわ」(1982年)など)
不良というレッテルを張られた若者が描かれたり、なぜか夫婦愛から浮気・不倫に走る大人が主人公の作品が人気を集め始めたりする1980年代・・・。
「不良少女白書」は現在に通じる"心の葛藤"を描いた先駆けの作品と思います。
"家族愛"をテーマに楽曲を製作されるさだまさしさんだからこそ、親子間でも価値観の違いで亀裂が生じる時代になった事にいち早く気付かれて、「不良少女白書」を製作されたのだろうと思います。
曲情報
製造発売元:日本コロムビア株式会社
品番:AH-64-A
友人さだまさしの楽曲。”不良少女白書”をレコーディング。ソロ歌手として、はじめてのシングル盤。
A面
「不良少女白書」
作詩・作曲:さだまさし
編曲:信田かずお
演奏時間:5分15秒
B面
「いもうと」
作詩・作曲:榊原政敏
編曲:島津秀雄
演奏時間:6分17秒
参考資料
「不良少女白書」レコードジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン