流行時期(いつ流行った?)
瀬川瑛子さんの「春の海」は、平成元年(1989年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、最高順位は低いですが4月下旬から7月末にかけてヒットしています。
残念ながら公式動画は見当たりません。
なぜタイトルが「春の海」?
タイトルはあまり知られていませんが「春の海」は、現代の日本人ならお正月に聞く機会がある作品と思います。
・・・こちらは動画がありました。(瀬川瑛子さんの「春の海」は全くの別曲です。)
注)箏:宮城道雄/十七弦:宮城喜代子 - トピックの動画
上記動画の筝曲「春の海」がいつから日本のお正月の定番になったのか?は分かりません。
この曲を聴くと正月が連想され、"あけましておめでとうございます"の感情が生まれます。
平成は天皇陛下が生前に退位するご意向を持たれた事で、国民は"平成から令和に"の改元が祝賀ムード一色だった事が記憶に新しいです。
平成元年に発売された「春の海」も"昭和から平成に"の改元で、似た雰囲気で新しい時代を祝う意味が含まれていると捉えてしまいますが全く違います。
「不如帰」と「春の海」は星野哲郎さん作詞
NHKでは前1988年9月20日に「天皇陛下の容体に変化の可能性あり」の第一報が報道されています(NHKクロニクル)。
私は当時の世の中の雰囲気を知りませんが、2020年代前半のコロナ禍でたびたび報道された自粛を促す空気が生まれていたようです。(レンタルビデオ店の需要が高まったと、何かで見聞きした事があります。)
自粛すべきと放送業界が判断したのはNHKクロニクルの番組表にも記述されている"吐血"のご容体。
7か月前の2月に発売された村上幸子さんの「不如帰」は歌詞に"血を吐く"というフレーズがあり、「放送は控えるべき」と判断されたと聞いたこともあります。
・・・コロナ禍でさんざん感じましたが、ろくな取材もせずに簡単に手に入る行政の集計結果を報道して「感染者がたくさんです!自粛しましょう!」と訴えていた印象が残っています。
当時、昭和天皇のご容体も似たような形で連日報道されていて、メディアは深く考えずに、むやみに自粛対象を判断していたのだろうと思います。
昭和から平成へ
「不如帰」の経緯を知ると、星野哲郎さんが「春の海」を"どのような想いで作詞されたのか?"が興味深くなってきます。
1番が「夫婦春秋」で描かれるような苦労した若いころ、2番は「兄弟船」のように命を懸けて漁をする男の心理が描かれます。
どちらも演歌の主題でよく耳にしますが、3番が珍しいです。
海に生きるカモメに"この世の理想"を重ねる心理が表現されています。
「理想の世の中を願う心理」はスケールが大きすぎて、似た主題のヒット曲はすぐに思いつきません。
2番の"命の瀬戸"もインパクトがありますが、筝曲「春の海」が瀬戸内海をイメージして製作された事を考慮していると思います。
"命を漕ぐ"と歌う広島県民謡の「音戸の舟唄」の一節も挿入されています。
気になるフレーズをつなげると、1番で"苦労"、2番で"命がけ"、3番で"この世の理想"。
"昭和は激動の時代だったけど、これから始まる平成は理想の世の中になってほしい"とか、"昭和を振り返ると新しい時代が来たことを簡単には喜べない"といった心理を描いているのではないか?と解釈してしまいます。
このような歌詞は星野哲郎さんにしか書けないと思います。
曲情報
発売元:クラウンレコード
品番:CWA-520
A面
「春の海」
作詩:星野哲郎
作曲:新井利昌
編曲:丸山雅仁
演奏時間:4分49秒
B面
「サッポロ慕情」
作詩:星野哲郎
作曲:新井利昌
編曲:丸山雅仁
演奏時間:4分9秒
参考資料
「春の海」レコードジャケット
「you大樹」オリコン
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン