ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「Un ange frappe à ma porte」Natasha St-Pier(2006年)

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流行時期(いつ流行った?)

 Natasha St-Pier(ナターシャ・サン=ピエール)さんの「Un ange frappe à ma porte」は2006年にヒットしました。

 

 TOP50(フランスのオリコン的存在)によると、2006年1月から3月にかけてヒットしています。

 

 この作品はTOP50のランキングで初登場6位となっています。その後、順位を上げて2位まで上り詰めています。

 

 フランスのヒット曲ランキングは、昭和の頃のオリコンランキングのように、1つの曲が長期間上位にランクインするスタイルが保たれています。

 初登場でトップテン入りしたナターシャさんは、当時、フランスでは既に人気を獲得していたアーティストと推測されます。

 

 

その頃、日本では…

 年明けの紅白効果もあってか、前年にヒットした修二と彰さんの「青春アミーゴ」レミオロメンさんの「粉雪」が上位に再浮上しています。

 年末に発売されたEXILEさんの「ただ…逢いたくて」もヒットしています。

 

 3月には、湘南乃風さんの「純恋歌」や、この年のレコード大賞に選ばれる氷川きよしさんの「一剣」がランキング上位に登場しています。

 

 

 


Natasha St Pier - Un ange frappe a ma porte (Clip officiel)

 

 

 

日本語が吹き込まれた作品

 この作品の特徴は、“日本語が吹き込まれている事”です。イントロと同時に、また、間奏で述べられるセリフは日本語です。

 

 しかし実際に聴いてみると、意味を成していない日本語です。

 

 おそらく、出会いや別れの時の挨拶を脈絡もなく並べていると考えられますが、残念ながら発音も明確では無く、日本人には伝わらない日本語です。

 

 私は何度聴いても、「オハヨースミマセ。コンニチハーサニトー。ジャアマタネサ。」としか聴こえません(+_+)。

 

 「スミマセ」が「すみません」なのか「~ませ」なのかも分かりませんし、「サニトー」に関しては、日本語の挨拶の何に当てはまるのか全く見当が付きません。

 

 

フランス人が思い描いた日本のイメージ

 この作品は、21世紀のフランス人が日本に対してどのようなイメージを抱いているかの一例として解釈する事も出来るため、興味深い作品です。

 

 プロモ映像でも、おそらく日本をイメージした風景を表現していると思いますが、こちらからすると、明らかに中国と混同されている事が分かります。

 

 日本庭園を意識した舞台のようですが、色彩が日本的ではありません。松や桜?も違和感を抱いてしまいます(^_^;A。

 なにより、日本人のイメージとして登場している方が持っている楽器が何か分かりませんし、その方の化粧も全く日本らしさは感じられません(+o+)。

 

 映像では、何一つ日本的な趣が感じられませんが、やはりアジアの国と言えば、西洋の方々にとっては中国の文化を連想してしまうのかな?と考えさせられます(>_<)。

 

 

 日本は諸外国に国の個性が伝わっていないのかな?と思いますが、2010年代以降は、アニメ人気のおかげで、電線が張り巡らされた日本の街並みは海外の人達にも知れ渡っているようです。

 

 何年か前に、それほどヒットしていませんがプロモで日本のアニメのような風景を再現した作品が登場していました。

 

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「Un ange frappe à ma porte」はE♭マイナー(変ホ短調)です。

 

 音階はヨナ抜き長音階の5音音階を短調にした26抜き短音階のようです。2の音が所々で用いられていますが、覚えやすいメロディの作品です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 『LES TUBES DU TOP volume6』Carisch Musicom Publications

 「Un ange frappe à ma porte」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Andalouse」Kendji Girac(2014年)

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流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Kendji Girac(ケンジ・ジラクさんの「Andalouse」は、2014年10月中旬から2015年1月中旬にかけて、3カ月間にわたってヒットしています。

 

 

 年をまたいでヒットしたため、年間ランキングではそれほど順位は高くありませんが、流行した規模ではケンジ・ジラクさんの代表曲となっているようです。

 

 ケンジという名前が日本的ですが、日本にはご縁の無い方です。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2014年10月中旬~2015年1月中旬)

 オリコンランキングでは、首位を獲得した作品や上位にランクインした作品には、その年を代表する作品は見当たりません。

 

 moraの音楽配信ランキングでは、SEKAI NO OWARIさんの「Dragon Night」がヒットしています。また、秦基博さんの「ひまわりの約束」が徐々に人気を集めています。

 

 

 


Kendji Girac - Andalouse (Clip Officiel)

 

 

フランス語のスペインポップス?

 1990年代後半以降、フランスではスペインのヒット曲が支持されやすくなったと感じます。2000年代には歌詞がスペイン語のヒット曲が多く登場するようになったため、そのように感じます。

 

 それが2010年代になると、歌詞がフランス語で、スペインポップスを連想させる作品が登場するようになりました。

 「Andalouse」は、フランス人っぽくない歌手の名前や、曲を聴いたときの印象で勝手にスペインの作品と思い込んでいましたが、歌詞を調べたときにフランス語だった事に驚きました。

 

 

 この作品がヒットするまでは、単にスペインの作品を輸入したり、フランス人がスペイン語で歌った作品が登場していました。

 やはり国境には公用語や経済による壁があるのかな?と感じていましたが、ついにフランス人がこういった作品を生み出す段階になったのかと、私は少ない知識で解釈しました(^_^;A。

 

 

 フランスのヒットチャートには現在でも、“異なる文化の価値観を理解しようとする姿勢”を感じる作品が登場するため、関心を持っています。

 背景には国旗の自由・平等・友愛の精神が国民の意識に根付いているからではないかと感じてしまいます。移民の受け入れについては、2010年代以降に社会問題化しているようですが、流行音楽においては、その精神が活かされて良い作品が生み出されているように感じます。 

 

 

Baila(バイラ)とは?

 この作品には、ひとつだけ「Baila」というスペイン語が用いられています。和訳すると「踊る」という動詞だったり、「踊り」と名詞で扱われる事がある単語のようです。

 

 スペイン語のヒット曲には必ず含まれていると言っても良いくらい、有名な単語ですので、この単語が出たときにスペインの曲と認識してしまいました。

 歌い始めの掛け声や、サビの部分で何度も登場しています。

 

 おそらく「Andalouse」を作詞された方も、「スペインと言えば“Baila”だろう」、という認識で効果的に用いたのだと考えられます。

 

 ケンジ・ジラクさんは厳密にはスペイン出身の方では無いようですが、作品の世界観がスペイン寄りであると感じます。 

 エキゾチックな雰囲気を持つ作品と感じますが、フランスの人たちも同じように異国の音楽を思わせる曲調を支持されたのだろうと思います。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「Andalouse」はFマイナー(ヘ短調)です。

 

 プロモの冒頭で流れる作品は、ケンジ・ジラクさんのデビュー曲「Color Gitano」です。Gitanoはスペイン語で、和訳すると移民に該当するようです。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Andalouse」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「I Will Survive (la la la)」Hermes House Band(1998年)

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「I Will Survive (la la la)」Hermes House Band

流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Hermes House Band(ルメス・ハウス・バンドさんの「I Will Survive (la la la)」は3回ヒットしています。

 

 1度目のヒットは、1997年9月下旬から11月下旬にかけての3か月間。

 2度目のヒットは、1998年7月下旬から9月末にかけての2か月間。

 3度目は、2018年7月末の1週間です。

 

 最もヒットしたのは、2度目の1998年と考えられます。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(1998年7月下旬~9月末)

 ラルク・アン・シエルさんの「HONEY」ポケット・ビスケッツさんの「Power」KinKi Kidsさんの「全部抱きしめて」globeさんの「wanna Be A Dreammaker」モーニング娘。さんの「抱いてHOLD ON ME」などの作品が首位を獲得しています。

 

 

 その他には、MAXさんの「Ride on time」浜崎あゆみさんの「Trust」などがヒットしています。

 

 

 


Hermes House Band - I Will Survive - Lalala

 

 

過去にヒットした作品のカバー曲

 「I Will Survive (la la la)」は、1970年代末に日本でも流行った「恋のサバイバル」のカバー作品です。

 

 1970年代当時は、様々な国でソウルから発展したディスコサウンドが流行していましたが、「恋のサバイバル」はそのうちの1曲です。グロリア・ゲイナーさんが歌っておられましたが、日本では布施明さんが日本語カバー盤も発売されていました。

 

 ヘルメス・ハウス・バンドさんの作品は原曲と異なり、バンドの演奏がにぎやかになっています。聴き手を元気づけるような、応援歌的な編曲で演奏するように心がけているグループのようです。

 

 エルメス・ハウス・バンドさんはオランダの音楽グループで、特にフランスと特別な関係や縁は無かったように思われます。しかし3回ヒットした事を考えると、フランス人にとって意味のある作品である事が想像できます。

 

 「I Will Survive (la la la)」は、フランス人にとって大切な作品に成長したようですが、そのきっかけは1998年に開催されたFIFAワールドカップのようです。

 

 

フランスのワールドカップ優勝お祝いソング

 1998年のワールドカップは、フランスで開催されフランスが初優勝を果たした大会でした。6月から始まり、7月12日の決勝戦で、フランスがブラジルに勝利し、初優勝が決定しています。

 

 フランスの初優勝が決まってから、ヘルメス・ハウス・バンドさんの2度目のヒットが始まります。7月23日付のランキングに突然6位に登場しています。

 

 おそらくフランスの方々にとっては、前年にヒットした「I Will Survive (la la la)」が、ワールドカップで悲願の初優勝を果たした喜びを代弁するかのような意味合いで解釈されたようです。

 

 この作品のヒット以降、ワールドカップ開催年になる度に、サッカーをテーマにした作品が登場するようになります。

 

 私は、選手達が対戦するときの応援歌、選手を称える意味合いのアンセムとして支持を得た作品と思っていましたが、そうではないように感じます。単純にフランス国民が、W杯の初優勝の感動、喜びを分かち合うために選ばれた作品だったようです。

 

 日本に置き換えると、サッカーではなく野球、国ではなく地域単位で規模は小さくなりますが、阪神ファンにとっての「六甲おろし」と同じ価値観を持つ作品であるように感じます。

 

20年後にヒットチャート首位を記録

 この作品が「六甲おろし」と同等の存在と感じた理由は、20年後の2018年に、再びフランスがワールドカップに優勝した時、「I Will Survive (la la la)」が1週間だけ首位を獲得した事です。

 

 20年前の作品が首位を獲得するには、特殊な事情が無ければ達成する事は出来ません。

 

 実は1998年の初優勝の時は3位止まりでした。いくら年月が経っても、フランス人にとって、W杯優勝の感動に心が共感するのは、初優勝時の「I Will Survive (la la la)」なんだと思い知らされた作品です。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「I Will Survive - Lalala」はAマイナー(イ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「I Will Survive - Lalala」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Yakalelo」Nomads(1998年)

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流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Nomadsさんの「Yakalelo」は、1998年5月下旬から9月中旬にかけて、5か月の間ヒットしています。

 

 首位は獲得できず2位止まりの作品です。7月から8月初めにかけて6週間連続で2位を獲得しています。

 この時の首位になっていたのはManauさんの「La Tribu de Dana」でした。

 

 

 

 「Yakalelo」も「La Tribu de Dana」も、特定の地域で培われて来た民族音楽を連想させる作品です。当時のフランスでは、こういった音楽表現が支持される雰囲気があったようです。

 

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(1998年5月下旬~9月中旬)

 日本では、hide with Spread Beaverさんの「ピンクスパイダー」「ever free」the brilliant greenさんの「There will be love there -愛のある場所-」T.M.Revolutionさんの「HOT LIMIT」SPEEDさんの「ALIVE」ラルク・アン・シエルさんの「HONEY」ポケット・ビスケッツさんの「Power」などの作品が首位を獲得しています。

 週替わりでランキングが変化するものの、その年を代表する作品が首位になっている傾向が感じられます。

 

 その他には、モーニング娘。さんの「サマーナイトタウン」Kiroroさんの「未来へ」などがヒットしています。

 

 

 


www.youtube.com

 

 

 

架空のワールドミュージック?

 「Yakalelo」は、ゆかりの無い遠い国の音楽を連想させる作品と感じます。ワールドミュージックであると聴き手に感じさせる世界観を持っていると思いますが、どうも、特定の国の音楽を取り上げた作品ではないようです。

 

 プロモの舞台が砂漠だったり、独特な民族衣装を着飾った人が登場しますが、火をおこす魔術めいた事をする人や、言葉で動物の動きを封じる人がいるような不思議な世界が描かれています。

 

 歌詞に用いられている言語で見ると、歌唱の部分ではスペイン語が用いられているようです。しかし、当時流行していたラップ詞では英語になっており、作品の設定は無国籍な印象を受ける作品です。

 

 

異国に対するあこがれ

 情報の少ない異国に対して、夢のような想像をふくらませる心理はヒット曲の世界では一般的と感じます。

 

 過去にご当地を取り上げてヒットした作品を振り返ってみると、実際に訪れたり有名な観光地を歌詞にした作品がほとんどと思いますが、中には想像だけで描かれた作品がヒットしている事があります。

 

 有名なのは、庄野真代さんの「飛んでイスタンブール」(1978年)でしょうか。歌詞中に砂漠という単語が出てきますが、実際はイスタンブールに砂漠は無いそうです。

 

 古くは菊池章子さんの「星の流れに」(1947年)も、“タバコをふかして口笛を吹く”という事が出来るのか、と冗談交じりで歌詞が解釈された事があるようですが、ヒット曲は感情を自由に表現する場であると考えていますので、歌詞が描く世界が現実に即しているかどうか、たとえ矛盾があっても大した問題ではないと認識しています。

 

 異国に対して想像力だけで作られた作品で重要だと感じるのは、“自分が見知らぬ国や街に対して、あれこれと自分にとって魅力的な街並みを想像する心理”が働いている事です。

 実際は想像通りで無かったとしても、聴き手に共感を与える事が出来る点が興味深いです。

 

 

 「Yakalelo」は、フランスでワールドミュージックが人気になりつつあった時期にヒットしていますが、架空の国を想像して製作された作品のようです。

 

 フランス人が知らない国、そういった異国に対して思い描くイメージをこの作品が表現できていたために支持が集まったと考えられます。 

 独特の世界観を持つ作品を生み出した発想力はすごいと感じます。

 

 

 タイトルは「ヤカレロ」と読みますが、カタカナ4文字の作品ですので、Los del Rio(ロス・デル・リオ)さんの「Macarena(恋のマカレナ)」(1996年)から連想されたのかな?と考えたりしています。

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Yakalelo」はDマイナー(ニ短調)です。 

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Yakalelo」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「À nos souvenirs」Trois Cafés Gourmands(2018、2019年)

流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Trois Cafés Gourmandsさんの「À nos souvenirs」は、2018年9月から2019年3月中旬にかけてヒットしています。

 

 残念ながら首位を獲得しておらず2位止まりの作品ですが、7か月近く10位以内にランクインするロングセラーとなっています。

 2019年6月下旬から7月には再びベストテンにランクインする不思議な流行り方をしています。

 

 

 最も流行したのは、2018年10、11月と年明けの2019年1月のようです。前年に人気だった作品が年明けに再び支持されるのは日本に似ていると感じます。フランスにはフランスの紅白歌合戦的な番組があるのでしょうか?

 

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2018年10、11月、2019年1月)

 オリコンのランキングでは首位を獲得した作品でも流行したかどうか分からない作品が多くなっています。

 米津玄師さんの「Flamingo」や、この期間に「ジコチューで行こう!」「帰り道は遠回りしたくなる」の2曲がランクインしている乃木坂46さんが流行していると感じるランキングです。

 

 moraの月間音楽配信ランキングによると、米津玄師さんの「Lemon」の人気が根強く、もうひとつの2018年を代表するヒット曲であるDA PUMPさんの「U.S.A.」も上位にランクインしています。

 乃木坂46さんは、「帰り道は遠回りしたくなる」が10位にランクインしています。

 

 

 年明けの2019年1月は、音楽配信では、あいみょんさんの「マリーゴールド」MISIAさんの「アイノカタチ feat.HIDE(GReeeeN)」が支持を集めています。

 

 

 

 


Trois Cafés Gourmands - À nos souvenirs [Clip officiel]

 

 

現代のフランス人の心に響いた曲

 この作品は2018年と2019年にまたがって流行したため、ヒットチャートの年間ランキングでは、順位が低く集計されてしまいます。

 

 しかし年単位で区切らず長期間で見ると、この作品は1984年から始まったTOP50の売上ランキングに登場した作品のなかで、歴代ベストテンにランクインする規模の流行を記録した作品と考えられます。

 

 

 私はこの作品が何を歌っているのか分かりませんが、聴いていてなぜか心に響くものを感じます。

 それが歌唱によるものなのか、音楽技巧なのかは全く分かりませんが、おそらくフランスの方々はこの曲を聴いたとき、もっと深く作品に共感する気持ちが芽生えたのだろうと推測されます。

 

 

フランス・コレーズ県

 歌詞に登場する「Corrèze」は地名です。フランスの地理は全く理解していませんが、人口20数万の地方都市のようです。

 

 プロモには親と子供のペアルックや、おじいさんやおばあさんも登場しています。世代が移り変わっても生まれた土地で生きる人々の姿が描かれているようで、頼もしく元気づけられる印象を受けます。

 (google翻訳では直訳過ぎて歌詞の意味が分かりませんでした。)

 

 地方都市を舞台にした作品には、2007年に流行したKaminiさんの「Marly-Gomont」がありますが、こちらは地方都市の現状をリアルに強調するような作品で、楽曲を通して訴えたい趣旨が異なっているように感じます。

 

 歌詞の意味は分かりませんが、歌唱には想いが込められていて、プロモの映像などから色々感じられる事は、たとえ親子の間でもいろいろな課題はあるけど前向きに生きていこう、という姿が描かれているような印象を受ける作品です。

 

 …和訳してくださっているサイトが見つかりませんでしたので、実際の歌詞がそういう意味でなかったら、ごめんなさいm(_ _)m。

 

 

楽曲分析

 分析にはならないかも知れませんが、音楽を聴いて心に響いた経験はどなたもお持ちだと思います。

 

 いろんな作品を聴いて私もその感動を経験しましたが、この作品を聴いたときも、製作者が伝えたい何かが感じられました。

 しかし、それが何なのかは分かりませんし、どうして歌詞の言っている意味が分からなくても伝わってくるのかさえも分かりません 。

 

 音楽を構成する要素はメロディやリズム、楽器の音色や和音など、様々ありますが、やはりボーカルがもっとも聴き手に訴える要素を持っているのかな?と考えたりしています。

 

 昭和のヒット曲を聴くと、楽曲に対する共感や、曲の世界に連れていかれるような感覚を得る作品が多いのですが、日本の音楽業界が見失いがちなものを、現在のフランスは持ち続けているのかな?と感じてしまったりする作品です(^_^;A。

 

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 ※音楽配信で購入したため、CDは持っていません。

「Song Of Ocarina」J.P. Audin and Diego Modena(1992年)

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『Ocarina』J.P. Audin and Diego Modena

流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、J.P. Audin and Diego Modenaさんの「Song Of Ocarina」は、1991年11月初旬から1992年3月末にかけて、5か月の間ヒットしています。

 

 当時は民族音楽を題材にした作品、それも演奏曲は異色だったためか何週間も連続して首位を獲得するほどの支持は集めていません。

 

 1月中旬と2月初めに飛び飛びで首位を獲得しています。ランキング推移を見ると、どちらかと言うと1992年の方がヒットの規模が大きいようです。

 

 


www.youtube.com

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 AntipodesMusicProductions(Delphine Productions の代理); Securights Inc., BMI - Broadcast Music Inc., IRICOM, LatinAutorPerf, Sony Music Publishing、その他 13 件の楽曲著作権管理団体

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(1992年1、2月)

 大事MANブラザーズバンドさんの「それが大事」とんねるずさんの「ガラガラヘビがやってくる」浜田省吾さんの「悲しみは雪のように」が首位を獲得しています。

 

 今井美樹さんの「PIECE OF MY WISH」ZOOさんの「Choo Choo Train」バブルガム・ブラザーズさんの「WON'T BE LONG」楠瀬誠志郎さんの「ほっとけないよ」などがヒットしています。

 

 年始という事もあり、前年のヒット曲も多くランクインしてにぎやかな印象を受けるランキングです。

 

 

踊るための音楽?聴くための音楽?

 日本でヒーリングミュージック(癒し系)が流行するのは1990年代末です。

 

 「Song Of Ocarina」を聴くとその分野の音楽を連想していまいますが、動画の映像を見るとダンス用の音楽として支持を得たようにも思えます。

 

 パンフルート(サンポーニャ)やオカリナといった南米のアンデス地方の民族楽器の音色が印象に残ります。

 

 なぜかこの楽器の音色は日本人の私が聴いてもノスタルジックな気持ちにさせてくれます。

 

 曲を盛り上げるようなリズムが刻まれ続けていますが、もしかしたら主楽器の奏でる旋律が聴くための音楽としても支持を集めていたかも知れません。

 

 「Song Of Ocarina」はランキング順位が上がったり下がったり、少し不安定な推移をしている作品と感じます。

 

 その順位変動の背景には、特定の層による支持だけにとどまらず幅広い層から支持を少しずつ集めてヒットしたのではないか?と想像させてくれます。

 

 

CDバブル後の時期に登場した作品

 フランスでは1980年代後半が、日本で言う小室哲哉さんプロデュースのサウンドが流行していました。

 

 日本ではその時期の作品がユーロ・ビートとして輸入されて女性歌手の間で日本語カバーが流行したと考えられます。

 

 このジャンルの作品はテンポが早く、シンセサイザーを用いた派手なサウンドが特徴的です。

 

 不思議な事に1980年代後半のフランスのレコード売上枚数は、他の年代に比べてかなり高い水準だったようで、日本で言う1990年代のCDバブル期と重なります。

 

 もしかしてユーロビートには聴き手にCDを購入させる心理作用があるのかな?と、つい安直な連想をしてしまいます(^_^;A。

 

 

 「Song Of Ocarina」がヒットした時期は、そういったシンセサイザーの音楽の流行が落ち着いたと同時にCD売上が低迷しつつあった時期に登場しています。

 

 生の楽器演奏をメインにしたスローテンポの「Song Of Ocarina」のサウンドが、機械加工の音楽に耳が慣れてしまった人たちに新鮮な印象を与えたのかも知れないと解釈しています。

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Song Of Ocarina」は出だしは、Cマイナー(ハ短調)です。 サビの部分が並行調のE♭メジャーに転調しているようです。

 

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 『Ocarina』CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Un monde Parfait」Ilona Mitrecey(2005年)

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「Un monde Parfait」Ilona Mitrecey

流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Ilona Mitrecey(イローナ・ミトレシー)さんの「Un monde Parfait」は、2005年2月末から9月上旬にかけてヒットしています。

 

 3月から6月中旬にかけて15週間連続で首位を獲得し、半年以上10位以内にランクインしています。

 

 フランスでは2005年を代表する流行歌となった作品と推測されます。

 

 日本では2007年2月に『ときめき☆アーモンドパフェ~アルバム』というタイトルでアルバムが発売されています。

 

 2006年7月にシングルも発売されていたようですが、どちらも日本ではヒットはしていません。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2005年3月~6月中旬)

 オレンジレンジさんの「*~アスタリスク~」「ラヴ・パレード」B'zさんの「愛のバクダン」大塚愛さんの「SMILY」などが首位となっています。

 

 その年を代表するヒット曲ではない作品が週替わりで1位を獲得する流れが徐々に始まっているように感じます。

 

 その他には、2月末に首位となったケツメイシさんの「さくら」アンダーグラフさんの「ツバサ」がヒットしています。

 

 スキマスイッチさんの「全力少年」クレイジーケンバンドさんの「タイガー&ドラゴン」も上位にランクインしています。

 

 


ILONA - Un monde parfait

 

 

お子様向けの大ヒット曲

 動画の出だしに『KIDS TV』と表示されておりますので、「Un Monde Parfait」は子供向けの作品のようです。

 

 下部の文章、『Cliquez Ici Et Decouvrez D'autres Videos Pour Vos Enfants』は、google翻訳によると、「ここをクリックして、お子様向けの他のビデオを見つけてください」という意味のようです。

 

 日本でも「およげ!たいやきくん」(1976年)や「だんご3兄弟」(1999年)が空前の大ヒットとなったように、子供向けの作品が大規模なヒットを記録する傾向にあるのは世界共通かも知れません。

 

 

CGの女の子が歌手

 この作品を歌っているのは、動画に登場する女の子のキャラクターです。

 

 『ときめき☆アーモンドパフェ~アルバム』の解説によると、当時フランスでは、「実際に歌っているのは誰なのか?」、「CGキャラが歌手なので、架空のバーチャル・アイドルなのか?」と話題になったようです。

 

 素性が分からない覆面歌手というのは、日本の流行歌でも登場しています。「東京のバスガール」(1957年)等のヒット曲を持つコロムビア・ローズさんがおられます。

 

 海外でも1950年代後半に活躍したリカルド・サントスさんが同じように正体を明かさない手法で話題を作っていたようです。

 

 「Automatic」(1998、99年)で宇多田ヒカルさんが登場した時のような感じ、と表現した方が分かりやすいかも知れません(^_^;A。

 

 狙っていたのかどうか分かりませんが、様々な情報を伏せる事で、謎めいた印象を聴き手に抱かせた事と思われます。

 

 おそらく、フランスで「Un Monde Parfait」が登場した時も、多くの人が関心を抱いた事と思われます。

 

 

日本的なキャラデザイン

 プロモのキャラはディズニーや日本人が描くアニメキャラみたいに、リアルさを払拭出来ていないと感じますが、海外の方がデザインされたキャラクターにしては割とデフォルメされた可愛いデザインという印象を受けます。

 

 この年フランスでは、立体的に映像化したキャラクターを表現できるコンピュータ・グラフィックスの3D技術が注目されたようです。

 

 「Un Monde Parfait」の前に登場した、Crazy Frog(クレイジー・フロッグ)さんの「Axcel F」(2005年)の大ヒットがきっかけであると推測されます。 

 

 クレイジー・フロッグさんは妙にリアルであまり可愛くないカエルのキャラクターです。 

 

 フランスではこの作品がヒットした後、子供向けの作品にはCGキャラを作り出す流行が生まれます。

 

 赤ちゃん(Bébé Lilly)やモグラ(René la taupe)が題材になったキャラが登場しますが正直な所、見た目はそれほど可愛くありません。

 

 この作品のように3Dのキャラクターが歌手になる作品が色々登場したのはフランスのみの流行現象?と推測されます。

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Un Monde Parfait」はEマイナー(ホ短調)です。 

 

 日本では2005年にO-ZONEさんの「恋のマイアヒ」がヒットした事もあり、「Un Monde Parfait」を「アーモンドパフェ」という空耳的な解釈で発売したようです。

 

 正確には「完璧な世界」という訳になります。プロモのように、動物も自由に行動出来て、人間と仲良く暮らせる世界、という子供が思い描く可愛らしい夢が歌われています。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 『ときめき☆アーモンドパフェ』CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Living On Video」Pakito(2006年)

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流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Pakitoさんの「Living On Video」は、2006年5月から6月にかけてヒットしています。

 

 4週間のあいだ首位を獲得しています。

 

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2006年5月~6月)

 SMAPさんの「Dear WOMAN」福山雅治さんの「milk tea」山下智久さんの「抱いてセニョリータ」が首位となっています。

 

 その他には、湘南乃風さんの「純恋歌」DJ OZMAさんの「アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士」mihimaru GTさんの「気分上々↑↑」などがヒットしてます。

 

 ケータイのメール機能のおかげで、作品のタイトルに☆や↑のような記号が付く事に違和感が薄れ始めているような印象を受けます(^_^;。

 

 アニメ系の作品の存在感も大きくなり始めており、『涼宮ハルヒの憂鬱』のエンディング曲「ハレ晴レユカイ」がヒットしています。

 

  ジブリ映画の「テルーの唄」もヒットしています。

 

 


Pakito - Living On Video

 

 

暖かさを感じるシンセサイザーの音色

 1980年代半ば以降、楽器としての存在感を増し続けたシンセサイザーですが、金属音のような冷たくて高い音が鳴るものとして用いられて来た印象があります。

 

 マイケル・ジャクソンさんの作品でも、今にして思えば小室哲哉さんの作品でも、記憶に残っているクールな印象を与える機械的な音色が用いられていたと感じます。

 

 人が楽器を演奏する時とは異なり、ボタンを押している間は一定の音量が鳴り続けるような不自然な響きも、聴き手に無機質な印象を与えている要因と考えられます。

 

 フランスでは2000年代以降、そのシンセサイザーの音量を強調するハウスという音楽表現が流行っていました。

 

 このジャンルではダフト・パンクさんが有名かも知れませんが、もっと派手に強調した作品がヒットチャートに登場していました。

 

 

 「Living On Video」も機械加工した音源が演奏に用いられているものの、音の響きは流行りの音色とは違う事が分かります。

 

 どちらかと言うと、暖かさを感じる音色になっています。

 

 この作品で演奏に用いられている音色は普通のシンセサイザーとは違って低めの音で、なんとなく音も揺れているように感じます。

 

 おそらくPakitoさんが機械で作り出したと思われますが、聴き手に緊張感を与える音色ではなく、心にエネルギーを与えるような緊張を緩和するような働きを備えた音色のように感じます。

 

 

製作の意図が読み取りづらい作品

 この作品も過去のヒット曲のフレーズをサンプリングした作品です。ただ、この時期になると、元の音源をそのまま使用するのではなくて、そのフレーズを演奏しなおす手法が用いられ始めます。

 

 

 初めてこの作品のプロモーションビデオを見たときに、私は映像の意味も全く分からず、「この作品は一体何を伝えたいんだ?」と感じました。

 

 おそらく当時のフランスの方々も初見では、そのように感じた事と思います。

 

 私はいまだにPakitoさんが何を表現したかったのかがよく分かりませんが、独特な世界観が表現されていて、飽きもせず何度も聴いてしまっています(^_^;。

 

 音楽に限らず、芸術とはこういう感じで楽しむものなのでしょうか。

 

 

 日本でも海外でも、どの作品に対しても、ヒットするしないの理由を解明する事は難しいと考えています。

 

 作品を発信する側と受け手が音楽を介してコミュニケーションを取ろうとするスタイルはとても興味深く、それが成功したヒット曲というのは魅力にあふれていると感じます。 

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Living On Video」はEマイナー(ホ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Living On Video」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Sing」Ed Sheeran(2014年)

 

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『X(マルティプライ)』エド・シーラン

流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Ed Sheeran(エド・シーラン)さんの「Sing」は、2014年6月末から7月末にかけてヒットしています。

 

 ただ、トップテンにランクした週も少ないため、フランスではそれほどヒットしていないと推測されます。

 

 「Sing」が収録されている『X(マルティプライ)』は、同時期に日本でも発売されていましたが、ヒットしていません。

 

 3年後の2017年に発売された『÷(ディバイド)』の頃には、エド・シーランさんの作品は日本でも人気となっています。

 

 当時様々な国で大人気となった「Shape of You」が収録されているアルバムです。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2014年6月末~7月末)

 オリコンランキングでは首位を獲得した作品には、その年を代表するヒット曲は見当たりません。

 

 この年のレコード大賞に選ばれる三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEさんの「R.Y.U.S.E.I.」が首位を獲得していますがランキングの推移では流行しているように感じません。

 

 この年にブームとなった『妖怪ウォッチ』の主題歌、キング・クリームソーダさんの「ゲラゲラポーのうた」がヒットしています。

 

 moraの音楽配信月間ランキングでは、絢香さんの「にじいろ」松たか子さんの「レット・イット・ゴー~ありのままで~」がヒットしています。

 

 

 


Ed Sheeran - Sing [Official]

 

 

フランスでは支持されにくい?イギリスのヒット曲

 イギリスとフランスは地理的に距離が近いため、流行りの音楽も交流は頻繁に行われているのかな?と考えていましたが、実際はそうではないようです。

 

 やはり公用語が異なるためか、イギリスでヒットした曲がフランスでヒットする機会は考えていたよりも少ない気がします。

 

 日本人の私は、この曲はもっとヒットしても良いのでは?と感じる作品でも、まあまあのヒットにとどまる傾向があります。

 

 「Sing」もそのうちの1つですが、この作品はヨーロッパではあまり支持を集めず、イギリス以外では、オーストラリア、ニュージーランドで首位を獲得するにとどまったようです。

 

 支持される音楽に違いがあるという事は、やっぱり島国イギリスと大陸のヨーロッパ各国のあいだには根本的に価値観の違いがあるのかな?と安易な考えをしてしまいます…(^_^;A.。oO(EU離脱…)。

 

 

生の楽器が印象に残るサウンド

 音楽知識はありませんが、この作品を聴いたときにフランスのヒット曲とは異なる印象を受けました。

 

 言語が英語だからというのではなく、エド・シーランさんの音楽表現が当時の流行であるシンセサイザーの機械音ではなくギターの音色で印象に残るからです。

 

 日本のヒット曲でも何の楽器を使っているのか分からない作品が多いですが、「Sing」でメインに用いられている楽器は分かります。

 

 コンピュータで加工した音にあふれている時期に登場したこの作品のサウンドは、反対に新鮮さを感じてしまいます。

 

 2000年代中頃にはハウスというジャンルで、機械で加工した音色を大きな音量で用いる音楽表現が流行ったりして、「ちょっと音が大きすぎない?」と感じたりしていましたが、「Sing」は安心して聴ける音楽に感じました。

 

 

聴き取りやすい英語

 また、イギリスの作品ではなくても英語の作品がヨーロッパ圏のみでヒットする事がありますが、ヨーロッパ発の英語の音楽とは聴いた印象に違いを感じます。

 

 私の個人的な感覚ですが、ヨーロッパで生まれた英語のヒット曲は、全体的に筆記体みたいになめらかな発音になっているため、聴き取れない部分があります。

 

 反対に、母国語が英語であるイギリスの作品は、日本人の私でも「もしかしたら聴き取れそうかも!」と感じる事ができるような、中高で習った英語の発音に近い印象を受けます。「Sing」を聴いて安心した理由はここにもあるかも知れません。

 

 国によって流行る音楽に違いはありますが、やはり言語の違いが、その国で支持される音楽に違いを生じさせる大きな要因なのかな?と考えてしまいます。

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Sing」はG♯マイナー(嬰ト短調)です。

 

 

 ・・・音楽と関係ありませんが、プロモーションビデオに映っているカラオケを楽しむサラリーマンの方々は、日本人なのでしょうか?

 

 風景はチャイナタウンのような街並みなので、中国や韓国の方かと思ってしまいますが、日本人の顔立ちに見えます。

 

 もしかしたら、リトルトーキョーでお酒に酔って羽目を外す日本人がステレオタイプ化されているのかも知れません(^_^;A。

 

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 SNEP(https://acharts.co/france_singles_top_100

 「you大樹」オリコン

 『X(マルティプライ)』CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Ca m'énerve」Helmut Fritz(2009年)

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流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Helmut Fritzさんの「Ca m'énerve」は、2009年3月中旬から9月中旬にかけてヒットしています。

 

 半年のあいだ10位圏内にランクインし続けており、6月から7月初めにかけて4週間のあいだ首位となっています。

 

 前後4週間も2位を維持していますので、多くの人気を集めた作品だったと推測されます。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2009年5月中旬~7月末)

 オリコンランキングでは首位を獲得した作品には、その年を代表するヒット曲は見当たりません。

 

 JUJUさんの「明日がくるなら」がヒットしています。

 

 

 音楽配信が広まり始めた時期ですが、参考サイトが見つかりませんので人気だった作品は分かりません。

 

 CD売上だけでは流行りが読めない時代が始まっていると感じる時期です。

 

 フランスでは、この時期には音楽配信(Téléchargement)のセールスが考慮されるようになっているようです。

 

 


Helmut Fritz - Ca m'énerve (Clip officiel)

 

 

タイトルは"頭にくる"、”イライラする”

 タイトルのCa m'énerveは、日本に置き換えると、自分がカッとしている事を伝える時に口にする言葉のようです。

 

 腹立つ、むかつくとかウザいといったニュアンスと思います。

 

 喜怒哀楽の感情のなかで「怒りが主題の作品」を聴き手が受け入れてヒットする事は稀だと感じます。

 

 日本では1990年代後半に、Mr.Childrenさんの作品等で世の中を批判する若者が主人公の作品がヒットしましたが、他の年代では多くの支持を集めた怒りを示すヒット曲は見当たりません。

 

 怒りの根本はストレスです。小さな欲求不満が積り重なって爆発する、そういった感情がこの作品で表現されています。 

 

 この作品以外でも、同時期に似たような主題の作品がヒットしているため、当時のフランスでは何かたまり続けた不満が表面化し始める時代だったのかな?と感じます。

 

 

積もり積もった怒りが爆発!

 歌詞で描かれている主人公が怒るタイミングは、普通なら「まぁまぁ落ち着いて」と思う場面ばかりです。

 

 政治の腐敗を糾弾するように真剣に怒りを訴える作品ではなくユーモアを感じる作品です。

 

 Helmut Fritzさんが最初にイラっとするのは、事前に予約をしてお店に向かったのに「予約された記録はありません。」と言われてしまう場面です。

 

 「まぁそんな事もあるだろう」と仕方なく店を去ります。この時点では怒りを制御できている様子です。

 

 気を取り直して「プレゼント用にROCKと印刷されたシャツでも買いに行こう」と考えて別の店に向かいますが、目当てのシャツは残り1つ、タッチの差で先客に取られてしまいます。

 

 イライラする事が続いたためか、店を出たときに通りすがりの人に八つ当たりする不穏な空気がうかがえます。

 

 

 場面は夜となり主人公は高級クラブのイベント会場に向かいます。

 

 ほとんどのゲストは高級車でやって来て受付の方に丁寧に会場へ案内されるものの、なぜかスクーターでやって来た主人公は入らせてもらう事が出来ません。

 

 翌日?靴屋に入ったとき、店員が電話中で来客に気付かずに少し遅れて「いらっしゃいませ」と言ったとたんに、怒りの感情が暴発してしまいます。

 

 その後はクラブでお酒を飲んで気分が悪くなってしまってもどしてしまったり、呼び止めたタクシーを割り込み乗車されたりして、気の毒というか残念な主人公の姿が描かれています。

 

 

 Helmut Fritzさんにストレスを与えているのは、いずれの場面でも、ファッションモデルの髪形を真似たスリムジーンズの似合う若い女性達です。

 

 残念な主人公と感じてしまうのは、徐々に空気を読まない行動が目立ち始める事もありますが、イライラしながらもその女性達に心が惹かれている場面が描かれているためです。

 

 曲を聴くたびに、この主人公はきっとモテる事は無いだろうなぁ~。と感じます(^_^;。

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Ca m'énerve」はEマイナー(ホ短調)です。 

 

 歌詞の内容から、フランスではコミックソングに近い感覚で支持を集めたのかも知れません。

 

 この時代の特有の音楽表現、ハウスなのかエレクトロニカなのかジャンルはよく分かりませんが、歌の中で何度も繰り返される「Ca m'énerve」は、聴いていて面白さを感じます。

 

 

ヒット曲のその後

 2020年、新型コロナウイルスの感染症が多くの国で流行しています。

 

 フランスでも国民が外出を制限されたロックダウンが行われていたようで、歌詞を替えた「Ca m'énerve 2020」のビデオクリップが2020年4月11日に公開されています。

 


Helmut Fritz - Ça m'énerve 2020 (Official Music Video)

 

 人がほとんどいないパリの街並みが映し出され、映るのはほぼHelmut Fritzさん1人ばかりです。

 

 フランス語が翻訳できれば良いのですが、私は分かりません…(>_<)。機械翻訳では、「皆が家にいる事、マスクやジェルが在庫切れである事」が歌われています。

 

 「マクロン大統領や武漢」といった単語も登場しています。

 

 太陽の光を使っておどけて踊っているのは、おそらく太陽の周縁がコロナの語源となっているからだと推測されます。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Ca m'énerve」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「La Tribu de Dana」Manau(1998年)

 

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『PANIQUE CELTIQUE』Manau

流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Manauさんの「La Tribu de Dana」は、1998年5月から10月上旬にかけてヒットしています。

 

 6か月のあいだ10位圏内にランクインし続け、6中旬から9月初めにかけて12週間連続で首位となっています。

 

 フランスではその年を代表する流行歌だったと推測されます。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(1998年6月中旬~9月初め)

 the brilliant greenさんの「There will be love there -愛のある場所-」T.M.Revolutionさんの「HOT LIMIT」SPEEDさんの「ALIVE」ラルク・アン・シエルさんの「HONEY」KinKi Kidsさんの「全部抱きしめて」等の作品が首位を獲得しています。

 

 ほぼ週替わりで首位作品が入れ替わっているものの、その年を代表するヒット曲が首位を獲得している印象を受けます。

 

 他にもヒット曲が多いと感じる時期です。Kiroroさんの「未来へ」MISIAさんの「つつみ込むように・・・」TUBEさんの「きっと どこかで」ポケット・ビスケッツさんの「Power」反町隆史さんの「POISON 〜言いたい事も言えないこんな世の中は〜」などがヒットしています。

 

 



Manau - La tribu de Dana

 

 

ワールドミュージックが支持され始めた1998年

 2019年現在は海外のニュースを見聞きしても、あまり「自国以外の人たちを受け入れよう」という価値観は感じません。政治・経済どちらもよく分かっていませんが、世界的に自国の利益を重視する価値観に傾く時代が始まっているようです。

 

 

 フランスの20年ほど前のヒットチャートを見ていると、1998年から2007年頃は、異なる文化の音楽表現を用いた作品が多数ヒットしています。当時は【異文化の価値観を受け入れる心の余裕】があったように感じてしまいます。

 

 2002年にヨーロッパ各国で共通の通貨ユーロを実現した事などを考えると、この時代は「価値観の違う国であっても協力しよう!」という雰囲気が勝っていたのかも知れません。

 

 

 この期間、様々な国の民族音楽を思わせる作品がヒットしましたが、そのなかでフランスのヒット曲でも珍しく自国の文化圏であるケルト音楽を用いた「La Tribu de Dana」がヒットしました。

 

 タイトルを機械翻訳すると“ダナの部族”となります。ダナがどの地域か?何を歌っているのか?も分かりませんが、民族音楽を連想させるタイトルと感じます。

 

 ケルト音楽というと日本ではエンヤさんが有名です。オリコンランキングによると、1997年末ごろから2000年代初めに人気を集めています。

 

 たまたまでしょうが「La Tribu du Dana」は、日本でケルト音楽に関心が高まっていた時期にフランスでヒットしていたようです。

 

 

ケルト音楽とラップの融合

 当時流行していた音楽表現はラップです。そのためフランスでは、民族音楽+ラップの音楽表現が融合したヒット曲が目立ちます。

 

 この組み合わせは日本では他に聴いたことが無く、意外な音楽表現と感じますので、つい作品の世界観の魅力に引き付けられていまいます。

 

 ダナ族という人たちは想像なのか実在したのかは分かりませんが、プロモで所々で登場する中世ヨーロッパを連想させる独特な衣装をまとった人物の姿を見ると、色々と想像がふくらみます。

 

 聴き手の想像力を刺激する作品と感じます。

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「La Tribu de Dana」はCマイナー(ハ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 『PANIQUE CELTIQUE』CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Moi... Lolita」Alizée(2000年)

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流行時期(いつ流行った?)

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Alizée(アリゼ)さんの「Moi...Lolita」は、2000年7月から2001年1月にかけてヒットしています。

 

 7か月のあいだ10位圏内にランクインし続けているため、当時かなりヒットしたと推測されます。

 

 本当は首位を獲得できるくらい人気を集めた作品だったと思われますが、TOP50では2位止まりとなっています。

 

 『ロミオとジュリエット』のミュージカルが大変人気となっていたようで、その劇中歌の1つである「Les rois du monde」に首位を阻まれています。

 

 長期間人気を獲得した作品ですが、9月~12月末にかけて2、3位と順位が高くなっているため、この期間が最も流行していたと思われます。

 

 

同時期に日本で流行っていた曲(2000年9月~12月末)

 SMAPさんの「らいおんハート」ポルノグラフィティさんの「サウダージ」MISIAさんの「Everything」が首位を獲得しています。

 

 他には、ECHOESさんの「ZOO」aikoさんの「ボーイフレンド」鬼束ちひろさんの「月光」矢井田瞳さんの「my sweet darlin'」DA PUMPさんの「if...」花*花さんの「さよなら大好きな人」などがヒットしています。

 

 

 


Alizée - Moi... Lolita (Clip Officiel HD)

注)Alizée 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

少女から大人に成長する境界線

 この作品の特徴は、それまでの女性アイドルの作品が触れなかった部分、少女から大人に成長するターニングポイントが描かれているように感じます。

 

 歌声や衣装、若さなどで等身大の可愛さをアピールするだけで留まっている作品ではないと感じます。

 

 作品の世界観を演出するためか、ストーリー仕立てのプロモーションビデオも力が入っていると感じます。

 

 歌詞では映像のような場面や展開は書かれていませんが、アリゼさんが年上の男性を虜にする姿や、大人の女性に負けないように化粧をする姿は、私はもう子供じゃないと想う気持ちを秘めていると感じる事ができます。

 

 (…映像の会話が何を話しているのかとても気になりますし、お伝えする事が出来ればいいのですが、私はフランス語分かりません(>_<)!誰か教えてください!)

 

 

 『わたしはロリータ』の解説によると、アリゼさんをプロデュースされたミレーヌ・ファルメールさんは、15年もの間「Moi...Lolita」を歌う歌手を探し続けていたと書かれています。

 

 それだけ、この作品に思い入れがあったのかも知れませんが、15年も温め続けたというのは、聴く側の立場である私には信じられない話です。

 

    「ベストな形で作品を世に出したい!」と想う、音楽を製作する立場の方々の情熱が感じられます。

 

 

日本ではヒットしなかった現代版フレンチポップス

 日本では「Moi...Lolita」が収録されたCDアルバム『わたしはロリータ』が2001年4月下旬に発売されていました。

 

 試しにオリコン年鑑の年間集計を確認してみましたが、ランクインはしていませんでした。

 

 当時は宇多田ヒカルさんと浜崎あゆみさんの人気競争が話題になっており、同日発売の『Distance』『A BEST』のどちらが、多く売り上げるのか?が話題になっていた時期でした。

 

 …曲作りを行うアーティスト性を備えた女性歌手が注目されていたため、残念ながらアリゼさんの日本デビューはタイミングが良くなかったと感じます(>_<)。

 

 

 フレンチ・ポップスは1960年代の日本で支持を集めました。70年代初めにはミッシェル・ポルナレフさんの作品も人気となりましたが、やはり『フレンチ・ポップス=女性アイドルポップス』という固定概念があります。

 

 シルヴィ・バルタンさんやフランス・ギャルさんの作品を連想してしまいます。

 

 後年のフランスで人気となったアイドルではヴァネッサ・パラディさんが有名なようです。

 

 「Joe Le Taxi」(1987年)はフランスでは社会現象の規模で流行したようです。

 

 2000年に登場したアリゼさんの作品は、そういったフレンチ・ポップスの路線を連想させてくれます。

 

 そのため、個人的に日本でももう少しくらい支持を集める事が出来たのではないか?と感じます。

 

 

楽曲分析

  「バンドプロデューサー5」の分析では、「Moi...Lolita」はBマイナー(ロ短調)です。

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Moi... Lolita」CDジャケット

 『わたしはロリータ(Gourmandises)』CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Despacito」Luis Fonsi ft. Daddy Yankee(2017年)

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流行時期(いつ流行った?)

 Luis Fonsi(ルイス・フォンシ)さんの「Despacito ft. Daddy Yankee」(邦題:デスパシート)は、2017年にフランスでも大ヒットしました。

 

 TOP50(フランスのオリコン的存在のヒットチャート)のランキングによると、2017年3月末に6位にランクインし、9月末までの半年間にわたってベストテンにランクインし続けています。

 

 1週間だけ2位に落ちるものの、5月初めから9月初めまでの18週間にわたって首位を獲得し続けた驚異的なヒット曲です。

 

 (日本の首位最長記録は17週間、ピンキーとキラーズさんの「恋の季節」(1968年)です。)

 

 

その頃、日本では…

 この時期のオリコンランキングでは数週間も続けて1位を獲得できる作品が存在しないだけでなく、毎週上位の作品が入れ替わっており流行したと感じる作品はほとんど見受けられません。

 

 乃木坂46さんの「インフルエンサー」欅坂46さんの「不協和音」がヒットしていたと言えそうです。

 

 moraの音楽配信ランキングでは、倉木麻衣さんの「渡月橋~君 想ふ~」DAOKO×米津玄師さんの「打上花火」がヒットしています。

 

 


Luis Fonsi - Despacito (Official Music Video) ft. Daddy Yankee

注)Luis Fonsi 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

多くの国でヒットしたYouTube再生回数歴代1位曲(2019年12月現在)

 この作品は今のところYouTubeで再生された回数の歴代1位の65億回を超える再生回数を達成しています。

 

 誰でも出来る動画投稿ですが、やはりプロのミュージシャンの作品のミュージックビデオが再生回数の上位にランクインする傾向があるように感じます。

 

 

 世界中の人がインターネットを介して閲覧できるYouTubeでの再生回数。

 

 10億回を超えるには複数の国でヒットしなければ実現する事は難しい事と感じます。1つの国では母数に限界があるためです。

 

 日本では米津玄師さんの複数の作品が数億を超えていますが、10億にはまだまだ時間が掛かりそうです。

 

 

<「Despacito」の各国のヒットの軌跡> 

最高順位 週数
スペイン 1位 25週
スイス 1位 20週
ブルガリア 1位 19週
ポルトガル 1位 18週
フランス 1位 18週
デンマーク 1位 17週
ドイツ 1位 17週
オーストリア 1位 16週
スウェーデン 1位 16週
アメリカ 1位 16週
カナダ 1位 16週
ベルギー 1位 12週
オーストラリア 1位 3週
アイルランド 1位 1週
イギリス 4位 1週

※参考サイト:SNEPランキング(https://acharts.co/song/104152

 

 この作品はフランスのみならず多くの国でヒットしています。

 

 スペインでは半年近い25週間も1位を記録したようです。

 

 他の国でも10週間以上1位を獲得するヒットとなっており、昨今の日本のヒットチャートでは有り得ないくらいのロングヒットを記録しています。

 

 

 アメリカやイギリス(おそらく英語圏)ではジャスティン・ビーバーさんが歌唱に加わった盤が人気を集めています。(イギリスではそれほどヒットしていないのも興味深いです。)

 

 ジャスティン・ビーバーさんは2016年にピコ太郎さんの「ペンパイナッポーアッポーペン」に関心を持っていましたが、翌2017年は、この作品の虜になったようです。

 

 

数十年に1度、世界規模で大流行するスペイン・ポップス

 「デスパシート」はフランスの作品ではありません。スペイン語圏のプエルトリコのルイス・フォンシさんの作品です。歌詞もスペイン語です。

 

 フランスでは、隣接するイタリアやイギリス、スペインのヒット曲が人気になる傾向がありますが、スペインはヒットチャート的にはかなり興味深い国です。

 

 なぜなら、スペインの音楽は「突然、ある作品の人気に火が付き、多くの国にその流行が広まる」という、【とてつもない多くの人たちの巻き込むエネルギーを秘めた作品が生まれる国】と感じるからです。

 

 ヒットチャートの記録の無い時代では「ベサメ・ムーチョ」が有名かも知れません。

 

 1980年代はフリオ・イグレシアスさんの「黒い瞳のナタリー」が人気となりましたが、1996年にはロス・デル・リオさんの「恋のマカレナ」がビルボードチャートの年間1位を獲得したりしています。

 

 

 作品ごとに支持される国に違いはありますが、【歌詞の意味も分からないのに、遠く離れた国の人たちを虜にできる魅力】をスペインの音楽は備えていると感じます。

 

 大規模な支持を集めるヒット曲が登場した事で、各国でスペインの音楽に対する人気が定着するか?と思えば、そうでもありません。

 

 単にその作品に対してだけ人気が集中する現象も興味深いです。

 

 次はどのような作品が登場するのか、ひそかに楽しみにしています。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「Despacito」はBマイナー(ロ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 SNEP(https://acharts.co/france_singles_top_100

 「you大樹」オリコン

 「mora ~WALKMAN®公式ミュージックストア~」

 「Despacito」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Au nom de la rose」Moos(1999年)

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流行時期(いつ流行った?)

 Moosさんの「Au nom de la rose」は1999年のフランスでヒットしました。

 

 TOP50(フランスのオリコン的存在)のランキングによると、1999年4月から8月初週までベストテンにランクインしています。

 

 5月から7月初週まで9週間連続で1位となっていますので、当時、かなりヒットした作品と推測されます。

 

 Moosさんの作品は他には存じ上げませんが、初登場6位となっているため前評判が高い作品だったようです。

 

 

その頃、日本では…

 ラルク・アン・シエルさんの「HEAVEN'S DRIVE」GLAYさんの「サバイバル」KinKi Kidsさんの「フラワー」などが首位となっています。

 

 坂本龍一さんの「energy flow」も首位を獲得しています。

 

 他には、宇多田ヒカルさんの「First Love」浜崎あゆみさんとつんくさんのデュエット曲「LOVE~Since1999~」がヒットしています。

 

 

 


Moos - au nom de la rose ( Let's GoMusic HD )

 

 

「ある愛の詩」のメロディが用いられた作品

 この作品の特徴は、日本では1971年にヒットした映画『ある愛の詩』の主題曲の旋律がサビの部分で用いられている事です。

 

 フランシス・レイさんが作曲された「ある愛の詩」は演奏のみの作品でしたが、当時はアンディ・ウィリアムスさんが英語詞で歌った盤にも人気が集まっていました。

 

 人気の高さからか日本語で歌い直した盤も発売されています。

 

 1960年代以前から日本では、器楽演奏の洋楽盤でも日本語の歌詞を作ってレコード化する流れがありましたが、あまりヒットした事はありません。

 

 「ある愛の詩」の場合は、演奏するより歌唱があった方が作品の世界観を深く表現できたのかも知れません。

 

 

 この作品はサンプリングではなく、聴いた事のあるフレーズを拝借して新しい作品に仕立て直しています。

 

 初めて聴いたとき「アレ?どこかで聴いた事があるメロディ?」と感じたものの、すぐに曲名が思いつきませんでした。

 

 フランシス・レイさんの旋律が「Au nom de la rose」に違和感なく溶け込んでいる印象を受けます。

 

 原曲を知らなければオリジナル作品と感じてしまうくらいの世界観を持っていますし、原曲を聴いて感じられる切ない気持ちも損なわれていないように感じます。

 

 

既存の作品に対する価値観

 もしかするとフランスでは、既存曲を用いて新しい作品を作る事、曲をリサイクルする事に対して、日本より寛容なのかも知れません。

 

 権利より製作者の意向を尊重する土壌があるのかも知れませんし、音楽は時代を重ねても継承されていくべきだ、という価値観が存在するのかも知れません。

 

 しかし「Au nom de la rose」は、「ある愛の詩」のメロディを用いるにしても、「ここまで書き換えてしまってもいいの?!」と驚いてしまうくらい、別の作品に仕上がっている印象を受けます。

 

 「よく実現できたなぁ。」と感心いたします。仮に日本で似たようなことをしたら、あまり良いように受け止められないかも知れません(^_^;A。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「Au nom de la rose」はAマイナー(イ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Au nom de la rose」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」

「Modern Times」J-Five(2004年)

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流行時期(いつ流行った?)

 J-Fiveさんの「Mordern Times」は、2004年のフランスでヒットしました。

 

 TOP50(フランスのオリコン的存在)によると、2004年3月、4月にかけてヒットしています。

 

 

その頃、日本では…

 平原綾香さんの「Jupiter」一青窈さんの「ハナミズキ」のヒットが落ち着き始めた時期で、DREAMS COME TRUEさんの「やさしいキスをして」大塚愛さんの「さくらんぼ」がヒットしていました。

 

 J-Fiveさんの「Modern Times」は日本では2005年1月に発売されたアルバム『モダン・タイムス』に収録されていますがヒットしていません。

 

 何かのCMソングに用いられたようなので、どこかで耳にされた事があるかも知れません。

 

 

J Five - "Modern Times" - Fête de la Chanson Française 2005

注)La fête de la chanson française 確認済みの動画

 

 

インパクト抜群の“サンプリング”

 【過去に製作された実際の音源を抜粋して新しい作品に用いる事】はサンプリングと呼ばれるテクニックです。

 

 誰かの作品を別の歌手が新たに吹き込むカバーではなく【切り取り&貼り付け】の手法です。そのため著作権や原作者の意志が関わってくる音楽表現です。

 

 1990年代から見かけられるようになった表現技巧です。

 

 日本でサンプリングを用いた作品は、Z団さんの「江ノ島」(1993年)や、EAST END × YURIさんの「DA.YO.NE」(1995年)が先駆けと思われます。

 

 サンプリングは2000年代にも登場します。

 

 ゲームソフト『スーパーマリオブラザーズ』のBGMを用いたトンガリキッズさんの「B-DASH」(2005年)です。

 

 大抵のサンプリング作品は2,30年前の音源を採用していますが、「Modern Times」は約70年前の音源を採用しています。

 

 1930年代に公開されたチャールズ・チャップリンさんの映画『モダン・タイムス』で使用された音源です。

 

 CD解説によると、映画の劇中に即興で歌われたメロディには「ティティナ」というタイトルが付いているようです。

 

 MVにも映像を用いているので公認?と思っています。

 

 

現代に勝る過去の音源

 「ティティナ」を大胆にコピー&ペーストした「Modern Times」は主役がJ-Fiveさんではなく、チャップリンさんになっていると感じます。

 

 チャップリンさんの歌唱になると他の音が無くなり、当時の音源だけが再生されるためそのように感じるのかも知れません。

 

 チャップリンさんの歌唱が始まる前にJ-Fiveさんが場を盛り上げる前座の役割を果たしている構図を思い描いてしまいます。

 

 

 サンプリングの作品はたくさんありますが、聴いていて【過去の音源を尊重している作品】はあまり見受けられません。

 

 J-Fiveさんがチャップリンさんに敬意を持っておられる事も感じます。

 

 完璧主義者で名高いチャップリンさん自身もJ-Fiveさんの「Modern Times」の仕上がりにおそらく納得されているであろうと感じる完成度を感じます。

 

 日本人の私は「もっとヒットしても良かったのではないか?」と感じますが、本国フランスのランキング推移を見ると、ヒットしたものの話題性でとどまり短命にランキングから姿を消している印象を受けます。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「Modern Times」はEマイナー(ホ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 『Sweet Little Nothing』CDジャケット

  「バンドプロデューサー5」