流行時期(いつ流行った?)
高倉健さんの「網走番外地」は、昭和40年(1965年)にヒットしました。
<月間売上ランキング推移>
年月 | 順位 |
昭和40年02月 | 16位 |
昭和40年03月 | 3位 |
昭和40年04月 | 2位 |
昭和40年05月 | 5位 |
昭和40年06月 | 5位 |
昭和40年07月 | 7位 |
昭和40年08月 | 8位 |
昭和40年09月 | 15位 |
※『ミュージック・マンスリー』歌謡曲のランキング推移
注)YouTube ムービー 確認済みの動画
映画より先にヒット?
1965年2月に発売されたレコードは、翌月の3月に人気を集め始めています。
同名の東映映画『網走番外地』は4月18日公開ですので、主題歌が先行して人気を集めていた事になります。
・・・なぜでしょう?
おそらく東芝さんが先に「番外地小唄」を発売していた事が影響していると思われます。
さらに「番外地小唄」には、「日活映画『男の紋章』”喧嘩状”挿入歌」と記載されています。高橋英樹さん主演のシリーズ第6作です。
映画も存在していたとは、日活さんと東映さんのライバル心も感じます。
【「網走番外地」に関する出来事】
年月 | 出来事 |
1964年12月 | 日活『男の紋章 喧嘩状』公開 |
1965年01月 | 東芝「番外地小唄」発売 |
1965年02月 | テイチク「網走番外地」発売 |
1965年03月 | コロムビア「裏町番外地」発売 平凡5月号(3月24日発売)歌本に「放送中止」の記載 |
1965年04月 | 東映『網走番外地』公開 キング「番外地ブルース」発売 ビクター「網走エレジー」発売 |
「お座敷小唄」や「まつのき小唄」のような作者不詳のため、レコード会社が競ってレコード化しています。
映画『網走番外地』が公開される前に、主題歌は民放連で放送禁止に指定されたようです。
コロムビアさんの「裏町番外地」だけは歌詞に問題がなさそうです。「きっと放送禁止処分を逃れる目的で、歌詞を改変したのだろう。」と思います。
大手レコード会社でも、テレビやラジオの影響力を意識するくらい力を持ち始めた時期なのかもしれません。
テレビが描かない生き様を表現しはじめた映画・歌
「網走番外地」は、1950年代に石原裕次郎さんや赤木圭一郎さんが歌で表現された世界観に近いように感じます。
”過酷な世界で生きる事を選択した主人公”とすれば共通する部分があります。ヒット曲にも映画や小説と同じように、聴いていると描かれる世界に入り込めます。
テレビは、普及した1950年代末から10年経たずして、映画を斜陽産業にさせるくらいの力を得たようです。
そして映画会社の価値観を「テレビでは表現できない作品を作ろう」と変化させたようです。
『平凡』付録の歌本には、
番外地とは、北海道網走刑務所のことで、そこで服役している人々の間で歌い出されたものです。しかし内容が暗すぎるとあって放送は中止になりましたが、レコードは売れています。
と記載されています。(犯罪者が愛唱した作品という由来が放送禁止の真実と思うのですが・・・)
題材がネガティブだったとしても”人生”を主題にする作品は、鑑賞する側が「普通に生きている自分がマイナスに感じる事など些細な事だ、自分ももっと真面目に生きなければいけない。」といった、心に良い影響を与えてくれると思います。
このコミュニケーションは受け手にとっては簡単と感じますが、テレビやラジオでは規制が存在します。
YouTubeでもYOASOBIさんの「夜に駆ける」(2020年)に「次のコンテンツには、自殺や自傷行為のトピックが含まれている可能性があります。」と表示が出ます。
世界的にこの流れになっていると感じますが、個人的に疑問です。今後「書店でも、注意喚起の帯を付けないとダメ!」とかになって行くのでしょうか。
作者の趣旨を理解して「これはOK、これはNG」と、表現を理解する流れになってほしいと思います。
曲情報
発売元:テイチク株式会社
品番:SN-157
東映映画「網走番外地」主題歌
A面
「網走番外地」
原作:伊藤一
替歌:タカオ・カンベ
採譜・編曲:山田栄一
演奏時間:3分38秒
制作担当:今井敏夫
テイチク・アンサンブル
B面
「流れのブルース」
作詩:門井八郎
作編曲:久慈ひろし
演奏時間:3分24秒
制作担当:竹内建雄
テイチク・レコーディング・オーケストラ
参考資料
「網走番外地」レコードジャケット
「番外地小唄」レコードジャケット
『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社
『昭和流行歌総覧(戦後編ー2)』柘植書房新社
『平凡ソング 歌のヤング・ステージ』4月号第1付録
『平凡ソング 若い歌謡パレード』5月号第2付録