ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。2025年は昭和100年。

初の洋楽シングル盤大ヒット「ボタンとリボン」ダイナ・ショア(昭和24年発売、翌年も流行)

洋楽シングル盤が流行歌より大ヒット!

 ダイナ・ショアさんの「ボタンとリボン」は昭和24年(1949年)に発売されました。

 

 日本では「ボタンとリボン」が主題歌の『腰抜け二挺拳銃』が公開された1949年12月以降の翌1950年も人気が高かったようです。

 

 

 【洋楽が邦楽よりヒットする事】は今となっては当たり前にあり得る話です。

 

 「ボタンとリボン」は、【日本で初めて、輸入盤のシングル盤が日本語のレコードよりヒットした記録】を持っています。

 

 日本の流行歌が現在のようにポップス化するルーツと感じます。

 

 

 (洋楽シングル盤[輸入盤]が人気の予兆はすでにあったようで、コロムビアさんでは「センチメンタル・ジャーニー」(M-165)「セント・ルイス・ブルース」(M-198)がヒットしていたようです。)

 

 品番を改めて『現在アメリカで大ヒットしてゐるものから選んで特選新輸入盤のことです。』として売り出したL盤の「ボタンとリボン」が人気となった事、当時は前代未聞の出来事でした。

 

 

注)「音楽 Buttons And Bows Dinah Shore」表記の動画

 

 「ボタンとリボン」は歌詞カードでヒルビリー・ソングと紹介されています(【中古】ダイナ・ショア「ボタンとリボン」歌詞カード付・大ヒット曲!の落札情報詳細)。

 

 ヒルビリーは当時も今も日本人になじみの無いジャンルです。今でいうカントリー・ソングと思われます。

 

 後年、日本にロックンロールが輸入されますが、ロックンロールではなくロカビリー(ロックンロール+ヒルビリー)という言葉で広まった理由も「輸入盤の初めての大ヒットがヒルビリーだったインパクトが強かったからかも・・・」と想像します。

 

 

「バッテンボー」ではなく「バッヅァンボゥーズ」?!

 1949年の輸入盤発売からずいぶんと経過した1950年7月に、池真理子さんの日本語カバー盤「ボタンとリボン」が発売されます。

 

 この曲の心地よさ、曲中に何度も繰り返されるタイトルの「バッテンボー(Buttons And Bows)」のフレーズがすでに多くの人に知れ渡っていた時期と思います。

 

 「買物ブギー」の歌詞にも"ボタンとリボン"が登場していますね笑。

 

 ・・・池真理子さんの歌詞カードには「バッテンボー」ではなく「バッヅァンボゥーズ」と表記されています。(【目立った傷や汚れなし】SP盤 ジャズソング ボタンとリボン センチメンタルジャーニー 池真理子 コロムビア A-820 元袋歌詞カード付の落札情報詳細

 

 

 内心「もうバッテンボーで良いじゃないですか・・・」と思いますが、「これからは英語の時代!ネイティブの英語発音を正しく伝える良い機会だ!」と張り切ってのカナ表記と推測します。

 

 敗戦後の1950年、日本はまだ主権を取り戻せていません。

 

 「アメリカ人になめられるようなカタカナ英語は良くない」と英語の発音に敏感だったかも知れません。

 

 ただ、ドレスやスマートなど普通に表記しているのに急にバッヅァンボゥーズは違和感が半端ありません・・・。

 

 当時、それだけバッテンボーが流行語になっていたのだろう、と察します。

 

 

謎の強敵感を与えるライバル企業

 初の洋楽ヒット、初のヒルビリー、流行語のバッテンボー・・・のんびりとした「ボタンとリボン」には面白いエピソードがたくさんです。

 

 もう一つ面白いエピソードがあります。

 

 輸入盤「ボタンとリボン」発売から日本語カバー盤発売に時間がかかった理由は翻訳権のようです。

 

 「著作者の許可が無いと日本語盤を制作できない」、輸入盤がヒットしたコロムビアさんも交渉に時間が掛かっていたようです。

 

 

 そんなタイミングで、なぜかビクターさんが轟夕起子さん日本語歌唱の「腰抜け二挺拳銃」(1950年発売)を発売します。

 

 当時なら誰もが「映画『腰抜け二挺拳銃』の「ボタンとリボン」の日本語盤だ!」と想像しますが、実は著作権の法律の隙間をくぐった別作品でした。

 

 どうやら「四小節ごとにメロディを変えれば著作権にはふれない」というルールが存在していたようです。(映画音楽 : 時の流れとともに

 

 

注)「音楽 腰抜け二挺拳銃 轟 夕起子」表記の動画

 

 

 確かに「ボタンとリボン」と似ています・・・でも聞けば別物である事は誰でも分かります。

 

 当時このレコードを購入された方々は「アレ?・・・こんな感じだったっけ?」と思われた事と思います。

 

 

 空襲で工場が被害を受けたビクターさん、戦後しばらくはコロムビアの工場でプレスしてもらってましたが、やはり長年のライバル同士。

 

 自社でプレスできるようになってからは、「コレはいける!」と感じたら、きちんと責められないように守りを固めてから攻めるビクターさん。

 

 流行歌について調べていても、レコード会社に個性を感じる事は少ないです。

 

 「忘れちゃいやョ」(1936年)のエピソードもですが、ビクターさんだけは商魂たくましく、たまに強烈な会社の個性を感じます。

 

 

参考資料

【中古】ダイナ・ショア「ボタンとリボン」歌詞カード付・大ヒット曲!の落札情報詳細

【目立った傷や汚れなし】SP盤 ジャズソング ボタンとリボン センチメンタルジャーニー 池真理子 コロムビア A-820 元袋歌詞カード付の落札情報詳細

映画音楽 : 時の流れとともに