ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。2025年は昭和100年。

大阪万博をイメージして作曲された「京都の恋」(昭和45年)

流行時期(いつ流行った?)

 「京都の恋」は、昭和45年(1970年)にヒットしました。

 

 渚ゆう子さんの歌唱盤、ベンチャーズさんの演奏盤がヒットしています。

 

 『レコードマンスリー』の月間ランキングによると、どちらの盤も11月、12月に人気を集めています。

 

 

年月 渚ゆう子盤 ベンチャーズ盤
昭和45年02月 - レコード発売
昭和45年03月 - 圏外
昭和45年04月 - 圏外
昭和45年05月 レコード発売 17位
昭和45年06月 圏外 18位
昭和45年07月 11位 圏外
昭和45年08月 9位 圏外
昭和45年09月 3位 13位
昭和45年10月 3位 圏外
昭和45年11月 1位 8位
昭和45年12月 1位 11位
昭和46年01月 12位 圏外

 

 

 


www.youtube.com

注1)渚ようこ - トピックの動画(・・・渚ようこ?)

注2)Provided to YouTube by Universal Music Group Kyoto Doll · Yuko Nagisaと記載された動画(東芝音楽工業さんはユニバーサル ミュージックさんに統合されています)

 

 

「京都×スピード感」のディスカバー・ジャパン?

 作曲はベンチャーズさんで、林春生さんが作詞されています。

 

 「京都の恋」がヒットするまでの【京都のご当地ソング】といえば「お座敷小唄」(1964年)、「女ひとり」(1965年)が思い浮かびます。

 

 どちらも西洋音楽らしさは少なく日本的でゆったりしたイメージがあります。

 

 古くは「祇園小唄」(1930年発売)も思い浮かびます。

 

 「東京行進曲」「蒲田行進曲」「道頓堀行進曲」(それぞれ1929年発売)が人気となった時代でも、支持されたのは「京都行進曲」より「祇園小唄」。

 

 昔から京都は日本人の思い入れが特別な街と思います。

 

 

 「京都の恋」発売当時でも【京都を舞台にしたアップテンポな音楽】という発想は生まれにくかったかも知れないと思います。

 

 

 ベンチャーズさんが作曲された「京都の恋」は日本人が描かなかった新しい京都を感じます。

 

 ヒットするまでに時間が掛かったのは、従来の価値観では「京都×スピード感」が奇抜だったから?と推測します。

 

 

 しかし大阪万博閉幕後に開始された国鉄キャンペーンのディスカバー・ジャパンが支持され始めてから、この斬新さを受け入れる気持ちが生じ始めたのかな?と感じます。

 

 

 「京都の恋」のヒット後、すでに「パレスの夜」というタイトルで発売されていた「Reflections in a Palace Lake」も「京都慕情」と改題されてヒットします。

 

 タイトルにKyotoが無い事からベンチャーズさんは特に京都を意識して作曲していないと思います。

 

 スピード感のあるサウンドにあえて京都を選んだ林春生さんの先見の明に恐れ入ります。

 

 

原題は「KYOTO DOLL」ではなく「EXPO SEVEN-O」

 「京都の恋」は「KYOTO DOLL」という英題が記載されています。

 

 キョウト・ドール・・・京都のお人形・・・舞妓さん?

 

 日本を愛してくれる海外アーティストのベンチャーズさんは、1960年代に「GINZA LIGHTS(二人の銀座)」(1966年)、「HOKKAIDO SKYS(北国の青い空)」(1967年)を作曲されています。

 

 うっかりこの流れで「『KYOTO DOLL(京都の恋)』を作曲されたのかな?」と受け止めてしまいがちですが違うみたいです。

 

 「KYOTO DOLL」の英題は日本だけで、海外では「EXPO SEVEN-O」というタイトルで発売されています。

 

 エクスポ・セブン・オー・・・万博’70・・・。

 

 「京都の恋」はもともと【アジア初の万博が日本で開催される事】を主題にベンチャーズさんが作曲されたようです。

 

 (実はベンチャーズさんは、前1969年に「HAWAII FIVE-O(ハワイ・ファイヴ・オー)」を発表されています。何かのタイミングで「来年に日本で万博・・・70年だね。じゃあFIVE-OをSEVEN-Oにして1曲作ろうか?」程度の軽い感覚だったと妄想します(^^A;。)

 

 

「京都の恋」で違和感がない歌唱盤

 もしこの曲のタイトルが直訳で「万博’70」だったとしたらヒットしなかったと思います。

 

 林春生さんもそう感じてタイトルの変更を会社に相談してベンチャーズさんと交渉されたと思います。

 

 

 渚ゆう子さんの歌唱盤で面白いのは日本人が聴いても「京都らしさ」を感じさせる工夫です。

 

 私は曲の始まりの【♪レシラソ】の響きで解決できていると感じます。

 

 その後に♪レレーレ、ドドード、シシーシ、ララーラ、ソーと順に下降するイントロが続きますが、曲の始まりにはドの音がありません。

 

 ベンチャーズ盤にはない曲の始まりに【ドが無い事】は意外と重要です。

 

 ト短調(Gm)なので、

   ソ ラ シ♭  レ ミ♭ ファ ソになります。

 

 【4つ目の音が無い事】になります。そして歌いだしのメロディには【7つ目の音がありません】

 

 【ソ ラ シ♭ 〇 レ ミ♭ 〇 ソの47抜き短音階】の響き、演歌で用いられるイメージがありますが、西洋音楽が日本に輸入される前から存在する都節音階に近いようです。(・・・明治時代の流行歌をもうちょっと勉強していきます)

 

 導入部分で難しい事を考えずに日本らしさを感じる事が出来て、慣れ親しんだベンチャーズさんのメロディに結び付ける構成です。

 

 編曲された川口真さんのアイデアにも恐れ入ります。

 

 

 様々な事がきっかけで後世に名を残す昭和歌謡に成長したと感じる作品です。

 

 

参考資料

 「京都の恋」(渚ゆう子盤、ベンチャーズ盤)レコードジャケット

 『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン

 『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社