ヒット曲けんきゅうしつ

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「東京五輪音頭」三波春夫(昭和39年)

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流行時期(いつ流行った?)

 「東京五輪音頭」は様々な歌手で歌われましたが、三波春夫さんのレコードが昭和39年(1964年)にヒットしました。

 

 レコードが発売された昭和38年(1963年)にはヒットしておらず、東京オリンピックが開催される年になってから人気が集まっています。

 

 

<「東京五輪音頭」売上ランキング推移>

集計日付 順位
昭和39年01月 4位
昭和39年02月 5位
昭和39年03月 3位
昭和39年04月 3位
昭和39年05月 3位
昭和39年06月 5位
昭和39年07月 1位
昭和39年08月 4位
昭和39年09月 2位
昭和39年10月 6位

注)『ミュージック・マンスリー』の「今月のベスト・セラーズ」参照

 

 10か月間も上位にランクインし続けているため、当時かなりの人気を集めた作品だったと推測されます。

 

 1963年の紅白歌合戦では、番組の最後で「蛍の光」を合唱する代わりに、三波春夫さんが「東京五輪音頭」を歌われたようです。この企画が作品の人気を高めるきっかけとなったのかも知れません。

 

 有名な歌手の作品が、発売から半年後にヒットし始めるのも珍しい現象です。ランキングからは、特別な事情で流行した作品である事がうかがえます。

 

 

 


東京五輪音頭

注)提供元NikkatsuMovies、YouTubeムービーの投稿動画

※歌謡映画『東京五輪音頭』の予告編の動画で、2分26秒くらいから「東京五輪音頭」が少しだけ流れます。

 

 

 

当初はB面扱い?

 NHKが制作した「東京五輪音頭」は1963年6月に発表され、レコード会社各社で競作となった作品です。

 

 同時に発表されたと思われる「海をこえて友よきたれ」とのカップリング作品が多く、どちらかというと「海をこえて友よきたれ」をA面で扱うレコードが目立ちます。

 

 三波春夫さんのレコードには「東京五輪おどり」が収録されていますが、それでも「東京五輪音頭」はB面になっています。

 

 

<主な競作盤>

会社 品番 A面 B面 メモ
コロムビア SAS-77 海をこえて友よきたれ/藤原良・高石かつ枝・コロムビア合唱団 東京五輪音頭/北島三郎・畠山みどり  
ビクター VS-1061 海をこえて友よきたれ/東京混声合唱団 東京五輪音頭/つくば兄弟・神楽坂浮子  
ビクター SV-86 東京五輪音頭/橋幸夫 東京音頭/橋幸夫・三沢あけみ 1964年に発売
東芝 JP-1581 東京五輪音頭/坂本九 前向きで行こう/坂本九  
東芝 JP-1582 海をこえて友よきたれ/藤山一郎 栄冠/海上自衛隊東京音楽隊  
テイチク NS-720 東京五輪おどり/三波春夫 東京五輪音頭/三波春夫  
キング ED-88 海をこえて友よきたれ/友竹正則 東京五輪音頭/三橋美智也  
キング EB-1038 東京五輪音頭/三橋美智也 新日本音頭/北見和夫・下谷二三子・新川二郎・小野由紀子 1964年に発売
ポリドール DJ-1366 海をこえて友よきたれ/高城丈二 東京五輪音頭/大木伸夫・司富子  
ソノレコード OOC-A114 東京五輪音頭/藤山一郎 海を越えて友よ来たれ/藤山一郎 ソノシート

 

 

 1963年の発表当初、製作側が力を注いでいたのは「海をこえて友よきたれ」のようです。『東京オリンピックの歌』や『オリンピック愛唱歌』といった肩書が曲名の隣に印刷されています。

 

 「東京五輪音頭」をA面で扱ったのは東芝さんだけのように思えますが、「海をこえて友よきたれ」を別の品番で発売されています。

 他社と違って2曲を1枚のレコードに収めなかっただけで、「東京五輪音頭」を特別視していたとは考えにくいです。

 

 そのため1963年の時点では、どのレコード会社も大ヒットするとは考えていなかったのだろう、と感じます(^^;A。

 

 

最も消極的なビクター盤

 ほとんどのレコード会社は、当時の人気歌手が「東京五輪音頭」を歌ったレコードを発売しています。しかし、ビクターさんは当時ヒット曲に恵まれていない歌手を選ばれています。

 

 さきほどの表では、ビクターさんは橋幸夫さんが吹き込んだレコードを発売した事になっていますが、レコードの品番で見ると1964年のヒット曲「恋をするなら」(品番:SV-87)の一つ前のSV-86です。

 歌詞カードにも“1964”と印字されており、三波春夫さんの「東京五輪音頭」が既にヒットしている時期に、便乗して発売したと考えられます。

 

 ビクターさんには、1962年に発売した「この日のために」がそれほどヒットしなかった経験があり、「きっと『海をこえて友よきたれ』も『東京五輪音頭』も、それほど売れないだろう。」と判断されたのかな?と想像します。

 

 

 

五輪開催の10月まで売れ続けた「東京五輪音頭」

 三波春夫さんの「東京五輪音頭」の売上ランキングの推移は、興味深い記録で残っています。

 

 発売から半年後の1964年1月に突然上位にランクインし、その後、東京オリンピックが開催される10月まで上位にランクインし続け、オリンピック閉会とともに姿を消しています。

 

 オリンピックが開催されるまでの間、途切れることなく売れ続けた事が「東京五輪音頭」の特徴です。

 

 当時、多くの人たちがオリンピックが開催される事を楽しみに待ち、オリンピックの話題で盛り上がっていたのだろう、と感じるランキングの推移です。

 

 

 10か月間売れ続けたなかで、7月に首位を獲得している事も興味深いです。

 

 もしかしたら1964年の夏は全国各地で、夏休みのイベントや盆踊りのBGMとして「東京五輪音頭」を使用する需要があったのかも知れません。

 

 東京オリンピックが開催される1964年を迎えてからレコードが売れ始めた事は、“実は、多くの人たちにとって、オリンピック開催を迎えるまでは実感が無かった”という事を示しているようにも感じます。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、三波春夫さんの「東京五輪音頭」はAメジャー(イ長調)です。

 

 歌唱部分は、完全なヨナ抜き長音階となっています。

 

 

 

 

曲情報

1964年 年間1位(邦楽)


レコード

 発売元:テイチク株式会社

 品番:NS-720

 A面

  「東京五輪おどり」

  作詞:小林潤

  作編曲:長津義司

  演奏時間:3分37秒

 

  社団法人 東京母の会連合会制定

  東京オリンピック記念

 

  テイチク合唱団

  テイチク・レコーディングオーケストラ

 

 

 B面

  「東京五輪音頭」

  作詞:宮田隆

  作曲:古賀政男

  編曲:福島正二

  演奏時間:3分52秒

 

  NHK制定

 

  テイチク合唱団

  テイチク・レコーディングオーケストラ

 

  制作担当:菅野暢

 

参考資料

 「東京五輪音頭」、「海をこえて友よきたれ」各社盤

 『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社

 『全音歌謡曲全集13』全音楽譜出版社

 『歌謡曲の構造』小泉文夫

 『歌謡曲おもしろこぼれ話』長田暁二

 「バンドプロデューサー5」