流行時期(いつ流行った?)
HoneyWorksさんの「可愛くてごめん」は令和4年末~令和5年(2022年~2023年)にかけてヒットしました。
moraさんのランキングによると2022年11月に配信開始された作品は、4か月後の2023年3月に最高順位を記録しています。
<mora~WALKMAN公式ミュージックストア~月間ランキング推移>
年月 | 順位 |
令和04年12月 | 78位 |
令和05年01月 | 51位 |
令和05年02月 | 29位 |
令和05年03月 | 20位 |
令和05年04月 | 48位 |
令和05年05月 | 52位 |
令和05年06月 | 56位 |
令和05年07月 | 77位 |
令和05年08月 | 98位 |
注)HoneyWorks OFFICIAL 公式アーティストチャンネルの動画
かぴさんとちゅーたんさんの2バージョン
「可愛くてごめん」は2022/11/18に公開された2つの動画で世間に浸透したようです。
かぴさんが公開した「可愛くてごめん (feat. かぴ)」と、HoneyWorks OFFICIALが公開した「可愛くてごめん feat. ちゅーたん(CV:早見沙織)」です。
2023年11月現在は「可愛くてごめん feat. ちゅーたん(CV:早見沙織)」の再生回数が1億回を超えています。
2つの動画の再生回数の推移は分かりませんが、「可愛くてごめん (feat. かぴ)」で楽譜が作られている事を考えると、最初はかぴさんの歌唱が人気を獲得していたと思われます。
【同じ作品を複数の歌い手が歌う企画】は、1960年代のカヴァー・ポップスや1980年代の歌謡曲で登場した【競作】の要素も感じます。
(歌い手が変わるだけで曲の印象も変わる。・・・「氷雨」と言えば今では日野美歌さんの歌ですが、当時は佳山明生さん盤が人気だった事を知ったとき驚きました。)
「自己肯定」の心理?
「可愛くてごめん」は【自己肯定感】を強く感じる作品です。
この視点で分析すると、ついついバブル経済期にヒットした「Diamonds」(1989年)や「勇気のしるし」(1990年)で描かれた心境に重なっている?と解釈してしまいます。
『おしゃれをする心理』は「Diamonds」(1989年)の『好きな服を着ているだけで悪い事はしていない』の心理。
『「ざまぁ」の心理』は「勇気のしるし」(1990年)の『海外企業を相手に自分のペースで商談を進めたビジネスマンの高笑い』に重なっていると思います。
・・・心情表現が似ているとは言え「可愛くてごめん」が支持された理由とまったく違うと思います。
雑に表現すると【バブル期は高飛車な主人公で、現在はそれを目指す主人公】という価値観の差を感じます。
「可愛くてごめん」は、周りから何と言われようと「自分らしく生きようと努力する姿勢」に共感や支持が集まったと思います。
それは「自分が何者かになりたい!」と思う心理です。
「何者かになりたい」という心理!
最近のヒット曲で気になっているフレーズは【「自分は何者か?」と問う葛藤】です。
【何者】は他の年代でもほとんど登場した事の無い稀なフレーズです。
(おそらく【何者】の初登場は、吉幾三さんが「レーザーディスクって何?」と表現されたときと思います・・・。)
<歌詞に【何者】が登場するヒット曲>
曲名 | 歌手名 | 年 |
ドラえもん | 星野源 | 2018年 |
廻廻奇譚 | Eve | 2021年 |
怪物 | YOASOBI | 2021年 |
逆夢 | King Gnu | 2022年 |
ギターと孤独と青い惑星 | 結束バンド | 2022年 |
なにもの | King & Prince | 2023年 |
青のすみか | キタニタツヤ | 2023年 |
【「何かを成し遂げたい!」という胸に秘めた想い】を心強くしてくれる作品が、今の世代に支持されていると感じます。
そして「自分は何物にもなっていない」とか「何者かになりたい!」というその心理が【コロナ禍になってから登場し始めた事】に興味があります。
「廻廻奇譚」(2021年)が先駆けと思いますが、『呪術廻戦』に関連するヒット曲が目立つ事も気になります。
「呪術廻戦」が2023年のレコード大賞の特別賞に選ばれた理由もこの流れが背景と思います。(輝く!日本レコード大賞|TBSテレビ)
おそらく「可愛くてごめん」の主題であろう【胸に秘めた闘志】は、過去のヒット曲でも描かれています。
真っ先に思い浮かぶのは「王将」(1962年)です。
たとえ時代や音楽表現が変わっても、ヒット曲が主題にする根本的な心理は何十年前も何百年前も変化はないのだろうと感じます。