「大津絵節」は歌詞が長め
江戸時代に誕生した「大津絵節」は詞によってメロディが違うみたいです。
七七七五調の「都々逸」も歌い方は人それぞれみたいなので、どちらも曲名ではなく【ひとつの音楽ジャンル】と解釈しています。
どちらにもたくさんの替歌が存在しているようで親しまれたようです。
「大津絵節」には文字数のルールが無いのか【歌詞が長め】という特徴があります。
有名な「大津絵節」は”大阪を立ち退いて”で始まる「梅忠」という作品です(下記動画)。
♪大阪を 立ち退いて 私の姿が めにたたば
♪かり籠に 身をやつし 奈良のはたごや 三輪の茶屋
♪五日三日と 日を送り 二十日あまりに 四十両
♪使い果たして 二歩残る
♪金ゆえ大事な 忠兵衛さん
♪咎人に ならしゃんしたも
♪みんなわたしゆえ
♪さぞやお腹も 立ちましょうが
♪因縁づくじゃと あきらめくだしゃんせ
注)栄芝 - トピックの動画
「梅忠」を歌う際はこのメロディでなければならないようです。他の動画も同じでした。
「大津絵節」は歌詞が長いので、一般的な流行歌と比べると気軽に口ずさめない印象です。
芝居の演目で行われたり、宴会の余興で歌われていたのでしょうか。
ネタが尽きなかった「開化大津絵節」?
明治初期に多数の「開化大津絵節」が発行されたようです。令和でもヤフオク出品されていて驚きました。
「開化都々逸」をセットで掲載している書籍もあるようです。(「開化大津絵」の2015年06月から2024年05月のオークション落札価格一覧 - オークフリー (aucfree.com))
出品参考画像の「開化大津絵節」には兎の挿絵の作品もあり「うさぎがブームとなった明治7年頃の作品?」と思ったりします。
近代化で新しいものを取り入れていくため、日常生活にネタが次々と登場した事が「開化大津絵節」の長期的なブームを生んだのだろうと考えられます。
「開化大津絵節」を読んでみる
国立国会図書館デジタルコレクションに明治12年8月発行の『開化大津絵ぶし』が公開されていました(下図)。
開化大津絵ぶし 1号 - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)
旧仮名遣いを読めないので困っていましたが、「みを(miwo):AIくずし字認識アプリ」を知り、試してみました(下図)。
【OCRは100%正確ではない事】を心得ていますが、想像以上に精度が高くて驚きました!(箱館を読めるとは・・・!)
OCR解析結果を参考にしながら文字起こしをしてみました。
(どうしても分からない箇所は〇〇にしています)
♪文明開化のはやり物 馬車や蒸気に人力車 郵便に新聞紙
♪函館氷りに牛肉や 西洋料理に西洋酒〇〇や
♪目がねばし温泉 日曜日
♪散髪床に 写真鏡
♪まちあい茶や 瓦斯燈
♪らんぷに医学校 日の丸ばた
♪しゃっぷ洋服 こうもりとんびに 地球玉
写真鏡=写真機(カメラ)、地球玉=地球儀です。地球儀は明治天皇が即位される際に用いられたようです。
函館氷は冷凍食品を扱う株式会社ニチレイさんのサイトに詳しく書かれています。(<第1回>中川嘉兵衛と氷業のはじまり|氷と暮らしの物語|株式会社ニチレイ (nichirei.co.jp))
思った以上に発見がありうれしかったです。(読めなかった文字が気になります・・・)
「大津絵節」は”〇〇づくし”
「大津絵節」は難しい知識は必要のない娯楽雑誌のように思います。
「粋な物語の一場面を描いているのか?」と思ったら、魚の名前や虫の名前を列挙するだけだったりします。
例えば、虫の名前ばかり書くので「虫づくし」というタイトルになります。
先ほど解読を試みた「開化大津絵節」も、文明開化で新登場したものを列挙するだけの「文明開化づくし」と言えます。
『開化大津絵節』は明治10年代に入っても発行されていたようですが、流行歌としては「梅忠」のような後世に残る傑作は誕生しなかったようです。
参考文献・ツール
miwo「みを」AIくずし字認識アプリ - Google Play のアプリ
佐賀大学附属図書館 貴重書デジタルアーカイブ- 大津絵節 (saga-u.ac.jp)
開化大津絵ぶし 1号 - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)