ヒット曲けんきゅうしつ

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「ラスト・ダンスは私に」越路吹雪(昭和38年、39年)

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流行時期(いつ流行った?)

 越路吹雪さんの「ラスト・ダンスは私に」は、昭和38年(1963年)末から昭和39年(1964年)にかけてヒットしました。

 

 『ミュージックマンスリー』の月間売上ランキングによると、1963年の11月と12月、翌1964年の2月~10月の8か月のあいだ、ベストテン入りしています。

 

 “特定の期間に人気が集中する”という流行り方ではなく、“ある程度の人気が長期間続く”という、ロングセラーとして記録されています。

 

 

 「ラスト・ダンスは私に」は18か月間連続でランクインしており、1960年代のヒット曲の中でもトップクラスのロングセラー作品となっています。

 

 

月間売上ランキング推移
No 年月 順位
1 昭和38年07月 17位
2 昭和38年08月 19位
3 昭和38年09月 15位
4 昭和38年10月 19位
5 昭和38年11月 9位
6 昭和38年12月 7位
7 昭和39年01月 16位
8 昭和39年02月 4位
9 昭和39年03月 7位
10 昭和39年04月 5位
11 昭和39年05月 8位
12 昭和39年06月 4位
13 昭和39年07月 7位
14 昭和39年08月 7位
15 昭和39年09月 8位
16 昭和39年10月 10位
17 昭和39年11月 12位
18 昭和39年12月 19位

 

 


Fubuki Koshiji - Save the Last Dance for Me (1961)

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 UMG(EMI Records Japan の代理); Spirit Music Publishing, BMI - Broadcast Music Inc.、その他 1 件の楽曲著作権管理団体

 

 

当時ヒットしたのは「編曲:藤家虹二」盤

 「ラスト・ダンスは私に」は、上の動画で流れる内藤法美さんが編曲した音源で知れ渡っていますが、ヒット当時の音源ではありません。(品番:TP-1623)

 

 長期間売れ続けた「ラスト・ダンスは私に」は、藤家虹二さんが編曲しており、作品の演出が大きく異なっている事が特徴です。(品番:JP-5088)

 

 藤家虹二さんが編曲した音源は、動画サイトでは見つけられませんでした…(+_+)。

 

 

 内藤法美さんの新録音バージョンは、金管楽器がメインのオーケストラで、にぎやかな伴奏が吹き込まれています。スケールの大きさも感じるので、楽団の人数も多くなっていると思われます。

 曲の後半には、越路吹雪さんが伴奏に合わせて♪ラララ~と歌う箇所があり、ステージ上で楽しそうに歌っている姿を連想します。

 コンサートで披露する際に会場を盛り上げるような演出に変化しているように感じます。

 

 藤家虹二さんのオリジナルバージョンには、上記のような派手さを感じる要素がありません。好きな男性への想いを心に秘めた女性の心理が歌詞で描かれていますが、控えめな心情を演奏でも表現しているためか、伴奏に物足りなさを感じます。

 

 イントロは硬さを感じるエレキギターの独奏ですが、それ以降は木管楽器の柔らかさを感じる音色になっています。

 リズムを刻んでいる楽器が何なのかは分かりませんが、明確に聞き取る事が出来るため、周りの楽器の演奏の音量が小さく感じます。

 

 オーケストラは藤家虹二セクステットと印刷されています。セクステットは6人編成で小規模なので、2つを聴き比べると雰囲気の違いがよく分かります。

 

 

売れるまで時間がかかったB面曲

 1961年の発売当時、「月影のマジョルカ」がA面でした。

 

 タイトルで考えると、森山加代子さんの「月影のナポリ」(1960年)、「月影のキューバ」(1960年)のヒットに影響を受けていると思われますが、「月影のマジョルカ」はヒットしませんでした。

 

 1963年に人気を集め始めますが、きっかけは分かりません。おそらく越路吹雪さんがコンサートで「ラスト・ダンスは私に」を歌い続けていた事で、口コミで人気が広まったのではないか?と考えています。

 

 1963年の紅白歌合戦で歌唱された事で、翌年に人気を集めたのだろうと考えます。

 

 1964年は、大人向けのカンツォーネのカヴァー・ポップスが人気となった年ですので、「『ラ・ノビア』を買いに来たけど、ついでに『ラスト・ダンスは私に』も買おうかな?」みたいな感じで、相乗効果で人気が継続したのかも知れません。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「ラスト・ダンスは私に」はA♭メジャー(変イ長調)です。用いられている音階は全音階的長音階です。

 

 歌い出しは徐々に音程が高くなるメロディラインで、聴き手の気分を盛り上げる運びになっていると感じます。

 

 気になるのは、もっと派手に盛り上げる事が出来るはずのに、ある程度で抑えるように作曲されている事です。一番印象に残るはずのサビも、なぜか低音部でメロディが作られています。

 

 発売当時にB面に回されたのは、何度も聴かないと良さを理解する事が出来ないタイプの作品だったからかも知れません。

 「…うーむ、インパクトに欠けるなぁ。これはB面だね。」と判断されたのでしょう。

 

 洋楽カバー作品で原題がフランス語(英語)で印字されています。

 

 シャンソンという印象が強いですが、厳密にはThe Drifters(ザ・ドリフターズ)さんの「Save The Last Dance For Me」がアメリカでヒットした後に、フランスの女性歌手Dalida(ダリダ)さんがフランス語でカバーしています。

 

 

ヒット曲のその後

 スタンダードとなっている昭和のヒット曲の中には、「ラスト・ダンスは私に」のように、ヒットした音源ではなく、新収録盤の音源が世間に知れ渡っている作品があります。

 

 再発売盤は売上が伸びないため記録が少ないですが、東芝さんの場合は1960年代末に企画されたベスト・カップル・シリーズで新録音を収録しているようです。

 この企画で製作されたステレオ音源が、後世に登場するCD音源に採用されているようです。

 

 ベスト・カップル・シリーズは、流行歌手のヒット曲をA・B両面に収録したシリーズです。名称は違いますが、レコード会社各社で製造されています。

 

 井沢八郎さんの「あゝ上野駅」も、このシリーズが発売されたタイミングで、発売当時には存在しなかったセリフが加わっています。

 

 “作品をより良い形に発展させよう!”という、とても有り難い企画です。ただ、レコード会社が新録音バージョンを採用する傾向が強いため、それが当時ヒットした音源と誤解されてしまう点は気になります。

 

 

曲情報

1964年 年間2位(邦楽)

 

レコード

 発売元:東芝音楽工業株式会社

 品番:JP-5088

 

 

 A面

  「月影のマジョルカ」

  原題:C'est ecrit dans le ciel(It is written in the sky)

  作詩:岩谷時子

  作曲:アルストーン

  編曲:内藤法美

  演奏時間:2分21秒

 

  デューク・エイセス

  内藤法美とクレールド・シャルム

 

 B面

  「ラストダンスは私に」

  原題:Garde-moi la derniere danse(Save the last dance for me)

  作詩:岩谷時子

  作曲:M.シューマン

  編曲:藤家虹二

  演奏時間:2分25秒

 

  藤家虹二セクステット

 

 

参考資料

 「月影のマジョルカ」(JP-5088)

 「ラスト・ダンスは私に」(TR-1146)

 「ラスト・ダンスは私に」(TP-1623、TP-10117)

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 『50・60年代 オールディーズ名曲全集』ドレミ楽譜出版社

 『歌謡曲の構造』小泉文夫

 「バンドプロデューサー5」