ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「空も飛べるはず」スピッツ(平成8年)

流行時期(いつ流行った?)

 スピッツさんの「空も飛べるはず」は、平成8年(1996年)にヒットしました。

 

 詳細は後述しますが、オリコンランキングによると1994年4月下旬に発売されたシングルCDは、2年後の1996年2月、3月にかけてベストテン入りしています。

 

 TVドラマ『白線流し』の主題歌に起用され、多くの人が知る事になった事が理由と感じます。(1990年代は過去に発売された作品でも"ドラマに使用される事でヒットする"という特殊な傾向があります。)

 

 


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注)spitzclips公式アーティストチャンネルの動画

 

 

支持された普遍性?

 「空も飛べるはず」に限らず、スピッツさんのヒット曲には流行りの音楽表現に流されない、普遍性を備えていると感じます。

 

 言葉では表現しずらいですが、時代によって変化する世の中の常識とは距離を置いた視点、損得の感情に左右されない無垢な気持ちを大切にされていると感じます。

 

 当時の音楽業界はリアルタイムで海外の流行を取り入れていたようで、ユーロビートのようなダンス系の音楽が主流だっと思います。

 

 あまり音楽に関心が無かったのですが、楽曲の一部にラップ詞を採用する作品も登場したりと、にぎやかなサウンドを目指した作品が多い記憶があります。

 

 当時のヒット曲を振り返って聴いた時、スピッツさんの作品は「今聴いても新鮮!」と感じる個性を備えていると感じます。

 

 「シンプル」とか「歌いやすい」という分かりやすさだけではすぐに飽きられるはずです。当時の流行とは違い、余分な音を削るアプローチで楽曲を製作されていたのではないか?と感じます。

 

 当時は分かりませんでしたが、数十年経っても色あせない音楽を作られていたのだ、と感じます。

 

 

何のドラマをイメージした作品?

 スピッツさん著書の『旅の途中』には制作秘話が書かれています。「君が思い出になる前に」が初めてヒットチャートにランクインしてから、ドラマ主題歌の話が持ち上がったそうです。

 

そんなとき、次のシングルがテレビドラマのタイアップ曲になるかも、という話が舞い込んだ。シナリオを読ませてもらい、イメージをふくらませて二、三日でサクッと作った。それが「空も飛べるはず」だ。結局、そのドラマは主演俳優が主題歌を歌うことになり、タイアップ話は流れてしまった。でも、曲は良い感じに仕上がった。(『旅の途中』スピッツより引用)

 

 そのドラマのおかげで「空も飛べるはず」が生まれた事を知ると、「・・・何のドラマだったのだろう」と気になります(苦笑)。

 

 いつもの根拠のない妄想を始めますが、"「空も飛べるはず」を採用しなかった"という事は、"主題歌にこだわるブランド力のあるドラマ枠"だったと思います。

 

 CD発売日から推測すると、TBS金曜ドラマ枠『適齢期 』だったのではないか?と今のところ思ってます。主演俳優が主題歌を歌っているドラマです。

 

 主演が歌うドラマは他にも製作されていますが、別のドラマで「夢 with you」(1993年)がヒットした事で、ドラマを作る側からすれば「三上博史さんに主題歌を」という空気が生まれていてもおかしくないと感じています。

 

 『適齢期』を視聴した事はありませんが、「せっかく運命の人と出会えたのに、自身を取り巻く世界が二人を結ばせないように邪魔をする」というあらすじのようです。

 

 スピッツさんの音楽には優しさを感じますが、「空も飛べるはず」の”ゴミできらめく世界”は割とバッサリと切り捨てるような表現で気になります。ドラマ主人公の境遇を考慮したフレーズではないか?と解釈しています。

 

 

"ドラマ主題歌=ヒット曲"の90年代

 TBSさんの金曜ドラマ枠はすごいです。古くは沢田研二さんの「時の過ぎゆくままに」(1975年)も、この枠で放送された『悪魔のようなあいつ』の主題歌です。

 

 昨年(2021年)の米津玄師さんの「Pale Blue」宇多田ヒカルさんの「君に夢中」もこのドラマ枠の主題歌だったのですね。

 

 この枠に限らず、1990年代はTVで流れるCMやドラマのタイアップを重視していたと思います。

 

 テレビの影響力がとても強く、"新曲がヒットする"という音楽業界の常識を打ち破り、"過去の作品でもドラマ主題歌なればヒットする"という常識を生みだしていたと思える時代です。

 

 そういった価値観が生まれていた時代に、「空も飛べるはず」が何かのドラマをイメージした作品でお蔵入りせず、別のドラマである『白線流し』の主題歌に採用され、成功した事は興味深いです。

 

 曲がヒットするには様々な縁が必要なのだろうと感じるエピソードです。

 

 

曲情報

 品番:PODH-1196

 発売元:ポリドール株式会社

 発売日:94.4.25

 

 トラック1

  「空も飛べるはず」

  作詞・作曲:草野正宗

 

 トラック2

  「ベビーフェイス」

  作詞・作曲:草野正宗

 

 スピッツ

 草野マサムネ Vocals, Backing Vocals

 田村明浩 Bass Guitar, Backing Vocals

 三輪テツヤ Guitars, Backing Vocals

 崎山龍男 Drums, Percussion Backing Vocals

 

 Additional Musicians

 坂井紀雄 Backing Vocals on 「ベビーフェイス」

 藤井理央 Keyboards on 「ベビーフェイス」

 

 Produced & Arranded by 土方隆行 & スピッツ

 Recorded & Mixed by 宮島哲博

 Directed by 竹内修(POLYDOR K.K.)

 Exective Producer 高橋信彦(ROAD & SKY)

 Artist Management ROAD & SKY Co., Ltd

 Personal Manager 坂口優治

 Promotional Staff 小野塚倫子

 

 THANKS

  Leo Music, BOW'S Guitar Gallery, 坂下丈朋, 藤井理央, Presence of Mind, DETENTE, ZAZOU

 

 

参考資料

 「空も飛べるはず」CDジャケット

 『旅の途中』スピッツ 幻冬舎単行本Kindle版

 「you大樹」オリコン

 「テレビドラマデータベース」Webサイト

 「適齢期 | Paravi(パラビ)で見る」Webサイト