流行時期(いつ流行った?)
ヘルムート・ツァハリアスと魔法のヴァイオリンさんの「黒人オルフェ」は、昭和35年(1960年)にヒットしました。
7月に公開された同名映画の主題曲です。レコード会社各社から発売されていますが、当時最も人気を集めたのはポリドール盤のようです。
『ダンスと音楽』の月間ランキングによると、7、8月にヒットしています。
<『ダンスと音楽』月間ランキング推移>
年月 | ポリドール | フィリップス | ロンドン | エンジェル |
昭和35年07月 | 3位 | 13位 | 20位 | - |
昭和35年08月 | 4位 | 12位 | 16位 | - |
昭和35年09月 | 8位 | 圏外 | 圏外 | 19位 |
注)ライセンス UMG(Polydor の代理); LatinAutorPerf, Warner Chappell, Wise Music Group, Abramus Digital, LatinAutor, LatinAutor - PeerMusic, UNIAO BRASILEIRA DE EDITORAS DE MUSICA - UBEM、その他 7 件の楽曲著作権管理団体
なぜポリドール盤がヒットした?
他社の盤は映画と同名のタイトルになっているのに、ポリドール盤だけが「黒人オルフェ」となっています。
それはポリドール盤が、『黒いオルフェ』が日本で公開される前にレコード化していたからだと思われます。
私が持っているポリドール盤は映画公開後に差し替えられたジャケットのようで、"東和映画提供「黒いオルフェ」主題曲"と印字されていますが、上動画のサムネイルが初版ジャケットと思われます。
個人的な好みですが、この曲はボーカルのほうが印象に残る作品と思います。バイオリンの演奏も良いと思いますが、この曲を想い出すときは映画で歌われたポルトガル語の男性歌唱の記憶で脳内再生されます。
本来なら歌唱盤がヒットするはずだっと思う作品です。ラジオ番組のリクエストを元に執筆された『ヒットパレード黄金時代1955-1970』では、"サウンドトラック盤がヒットした"と記載されていて納得です。
おそらく『黒いオルフェ』公開後、すぐにレコードを増産できたからポリドール盤が最もヒットしたのだろうと想像しています。
1962年にヒットした同名映画主題曲「禁じられた遊び」に似たレコードの売れ方と感じます。
名曲に埋もれてしまった?
「黒いオルフェ」が、当時発売されたレコードで演奏盤や歌唱盤に分かれてしまったりで、作品の価値がブレてしまった印象があります。
後世であまり有名ではない理由の一つと思いますが、さらに残念な事に「黒いオルフェ」がヒットした時期は、「死ぬほど愛して」や「夏の日の恋」、「太陽がいっぱい」といった映画主題曲が大ヒットしています。
3曲とも現在でも映画音楽のスタンダード・ナンバーになっている作品で、今後も継がれるだろう作品ばかりです。
「黒いオルフェ」も肩を並べるくらい人気が集まっても良い作品と感じるのに残念な気がします。
最もタイミングが悪いのは『刑事』の主題歌「死ぬほど愛して」(♪アモーレ×3 アモーレミオ)がボーカル曲だった事です。
映画からヒットする作品のほとんどは楽団の演奏曲なのに、なぜこのタイミングでボーカル曲で主題歌が製作されたのか・・・。
「黒いオルフェ」はボーカル曲と思っていますが、「死ぬほど愛して」のインパクトには敵いません・・・。
曲がヒットするには、作品の良さだけではなくタイミングも重要な要素と感じてしまいます。
曲情報
発売元:日本グラモフォン株式会社
品番:DP-1151
東和映画提供「黒いオルフェ」主題曲
A面
「黒人オルフェ」
B面
「悲しみよさようなら」
参考資料
「黒人オルフェ」レコードジャケット
『黒いオルフェ』Amazonプライム
『ダンスと音楽』ダンスと音楽社
『ヒットパレード黄金時代1955-1970』かまち潤 監修・著