流行時期(いつ流行った?)
荒木一郎さんの「今夜は踊ろう」は、昭和41年(1966年)末から昭和42年(1967年)初めにかけてヒットしました。
『ミュージックマンスリー』、『レコードマンスリー』の月間売上ランキングによると、レコードが発売された1966年10月に初登場し、翌1967年の3月までランクインしています。
年月 | 順位 |
昭和41年10月 | 20位 |
昭和41年11月 | ? |
昭和41年12月 | ? |
昭和42年01月 | 1位 |
昭和42年02月 | 6位 |
昭和42年03月 | 19位 |
1967年1月に首位となっていますが、1966年11月、12月にどれくらいの人気が集まっていたかは、資料が無いため分かりません(>_<)。
荒木一郎さんは「空に星があるように」(1966)のヒットで、レコード大賞新人賞を獲得した事で注目が集まり、年明けの1月に支持が集まったのでしょうか?
それとも、すでに人気は高まっており、11月、12月も高順位だったのでしょうか?
少しでも資料が欠けてしまうと、流行り方の解釈が定まりません。
どちらにせよ1967年の初めは、荒木一郎さんの人気が高いです。グループサウンズがブームとなる前で、フォークソングのほうが人気の主流であったのだと解釈できるランキングです。
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歌詞に英文が登場するヒット曲
「空に星があるように」に続いて、「今夜は踊ろう」も荒木一郎さんが作詞・作曲されています。
自分で曲を作って歌うシンガーソングライターの先駆けのアーティストであり、歌詞に英文を用いる作詞技巧を用いた先駆けでもあるようです。
サビのパートが英語詞になっています。
歌詞に英語が持ち込まれる事は、洋楽を日本語でカバーした作品では一般的な事で目新しい事はありません。
日本人が作った作品でも、カナ表記で英語を歌った作品も色々あります。
ただ、日本人が製作した作品でアルファベット表記の英文が挟まれたヒット曲は、「今夜は踊ろう」が第1号ではないか?と考えます。
現在では一般的な手法ですが、カタカナで表現せずアルファベットで表記した事は、画期的だったと感じます。
英語が混じる歌詞(60年代~70年代初め)
日本人が作詞した楽曲で、アルファベット表記が混じる歌詞は以前から登場しています。
最も古いのは和田弘とマヒナスターズさんと松尾和子さんの歌う「グッド・ナイト」(1960)です。
ただし、"good night"や"sweet heart"と繰り返すだけで、主語・動詞の文法はありません。日本に浸透した簡単な英語を並べた印象を受けます。
また、エミー・ジャクソンとスマッシュメンさんの「涙の太陽」(1965)や、ジャッキー吉川とブルー・コメッツさんの「青い瞳」(1966)は、全て英語の歌詞となっています。
しかし、コロムビアさんの洋楽レーベルから発売するための条件として、やむを得ず英語で製作された、という経緯のある作品です。作詞者の意志で英語詞にしたのかどうかは分かりません。
「今夜は踊ろう」がヒットした後に登場するグループサウンズの作品で、歌詞に英文を用いる手法が使われます。
しかし1970年代に入っても、あまり用いられている印象はありません。
平山三紀さんの「真夏の出来事」(1971)
南沙織さんの「哀愁のページ」(1972)
アン・ルイスさんの「グッド・バイ・マイ・ラブ」(1974)
と、女性歌手のあいだで、セリフが英語で語られる作品が見受けられる程度です。
楽曲分析
「バンドプロデューサー5」の分析では、「今夜は踊ろう」はEメジャー(ホ長調)です。用いられている音階は全音階的長音階です。
リズムは、ポール・アンカさんの「ダイアナ」(1958)や北島三郎さんの「函館の女」(1966)で用いられているルンバ(下図)です。
ルンバは軽快な印象を与えるリズムで、1960年代の長音階の作品で良く耳にします。「今夜は踊ろう」でも作品の雰囲気に合うリズムと感じます。
歌詞で描かれているのは、タイトルの「今夜は踊ろう」という気持ちだけです。踊りたい理由や踊りに誘う理由には、まったく触れていません。
そのため、聴く人によって解釈が変わる事がほとんど無い歌詞と感じます。こういった飾り気の無い歌詞は、この時代に支持されたフォークソングが持つ世界観と感じます。
曲情報
1966年 不明、1967年 年間31位(邦楽)
レコード
発売元:日本ビクター株式会社
品番:SV-478
A面
「今夜は踊ろう」
作詩作曲:荒木一郎
編曲:寺岡真三
演奏時間:2分46秒
ビクター・オーケストラ
森永乳業提供 東海ラジオ制作「星に唄おう」より
66年度日本レコード大賞新人賞受賞
※初回ジャケットには受賞の記載はありません。
B面
「あなたといるだけで」
作詩作曲:荒木一郎
編曲:寺岡真三
演奏時間:3分3秒
ビクター・オーケストラ
参考資料
「今夜は踊ろう」レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
『レコードマンスリー』日本レコード振興
『全音歌謡曲全集16』全音楽譜出版社
『歌謡曲の構造』小泉文夫
「バンドプロデューサー5」