流行時期(いつ流行った?)
坂本九さんの「レットキス」は、昭和42年(1967年)にヒットしました。
『レコードマンスリー』の売上ランキングによると、1、2月にかけてヒットしています。
坂本九さんは、前年の紅白歌合戦でこの曲を披露されておられますので、ヒットに結び付くきっかけになったのかな?と考えたりします。
集計日付 | 順位 |
昭和42年1月 | 3位 |
昭和42年2月 | 4位 |
昭和42年3月 | 11位 |
昭和42年4月 | 14位 |
昭和42年5月 | 13位 |
昭和42年6月 | 20位 |
『レコードマンスリー』今月のベスト・セラーズより
同時期に流行った曲(昭和42年1、2月)
歌謡曲のランキングでは、荒木一郎さんの「今夜は踊ろう」、水原弘さんの「君こそわが命」が首位を獲得しています。
他には、西郷輝彦さんの「初恋によろしく」と「恋人をさがそう」、加山雄三さんの「夜空を仰いで/旅人よ」、園まりさんの「帰りたくないの」がヒットしています。
洋楽・邦楽ポピュラーのランキングでは、ザ・ワイルド・ワンズさんの「想い出の渚」、スパイダースさんの「なんとなくなんとなく」が首位を獲得しています。
他には、ジャッキー吉川とブルー・コメッツさんの「何処へ」(いずこへ)、ピーター・ポール・アンド・マリーさんの「虹と共に消えた恋」がヒットしています。
映画のサウンドトラック盤で「悲しみは星影と共に」や「夕陽のガンマン」が人気となっています。
注)坂本九 - トピックの動画
フォークダンスの定番曲
後年に発売されたレコードには、「レットキス(ジェンカ)」と改題されています。皆さんも、この曲名は「ジェンカ」とご記憶されていると思います。
「ジェンカ」は、坂本九さんのヒットによって以後、日本中に知れ渡ることになったと見聞きしたことがあります。
“学生がフォークダンスを踊る”という描写は、舟木一夫さんの「高校三年生」(1963年)で登場しますが、その時代のBGMに「ジェンカ」は存在しなかった事になります。
舟木一夫さんが踊ったフォークダンスは「オクラホマミキサー」や「マイム・マイム」だったのかもしれませんね。
一度聞くと耳に残るメロディ
「レットキス」は音域も狭く、シンプルなフレーズが繰り返されるため、すぐに覚える事ができる作品です。
同時に、普段の日本の流行歌ではあまり聴きなれない不思議な響きを感じさせるメロディと思います。
楽譜を見ると、シャープ(#)やナチュラル(♮)が所々に存在し、半音ずつ動く箇所が目立ちます。
そのため、ヒット曲ではあまり耳にしない半音階でメロディが構成されているように感じます。
音楽の事は詳しくありませんが、本来の調性に存在しない音が度々登場する事で、不安定な響き、不思議な響きを感じさせるメロディになっているのかも知れません。
海外の民族音楽に基づいた音階で作曲されているのかも知れませんが、日本人の耳にはあまり聴きなれず、「レットキス」が聴き手の印象に残る理由の1つと思われます。
歌い手の人柄が伝わるセリフ
「レットキス」は「幸せなら手をたたこう」(1964年)と同じように、坂本九さんのセリフが吹き込まれています。音楽に合わせて楽しそうに話されています。
どちらの作品を聴いても感じられるのは、一緒に音楽を楽しもう!と話す坂本九さんの明るさです。
聴いていると、坂本九さんが音頭を取りながら、みんなで楽しんでいる様子を想像してしまいます。
ヒット曲のその後
「レットキス」と「幸せなら手をたたこう」は、坂本九さんが少年時代に疎開されていた茨城県笠間市の鉄道駅で、発車時のメロディに用いられているようです。
坂本九さんの代表曲というと、一般的には「上を向いて歩こう」(1961年)、「見上げてごらん夜の星を」(1963年)、「明日があるさ」(1964年)を連想します。
ゆかりがあるのならば、有名曲を用いても良いのではないか?と感じますが、あえて歌い手の人間性を感じさせる楽曲を発車メロディに選曲されています。
坂本九さんをスターとして見るのではなく、九ちゃんとして接する愛情をお持ちであると感じます(^^)♪
楽曲分析
「バンドプロデューサー5」の分析では、「レットキス」はDマイナー(ニ短調)です。
曲情報
1967年 年間11位(歌謡曲部門)
レコード
発売元:東芝音楽工業株式会社
品番:TP-1351
A面
「皆んなで笑いましょ」
英題:MINNA DE WARAIMASYO
作詞:河野洋
作曲:斉藤太朗
編曲:前田憲男
演奏時間:3分48秒
東芝レコーディング・オーケストラ
B面
「レットキス」
英題:LETKIS
作詞:永六輔
作曲:RAUNO LEHTINEN
編曲:前田憲男
演奏時間:2分52秒
小俣尚也とドライヴィング・メン
参考資料
「レットキス」レコードジャケット
『レコードマンスリー』日本レコード振興
『全音歌謡曲大全集3』全音楽譜出版社
『歌謡曲の構造』小泉文夫
「バンドプロデューサー5」