テレビアニメが流行歌に登場し始めたのは、昭和30年代後期です。当時は、“アニメ”という呼称は存在せず、漫画の映像化であり、テレビ映像も白黒だったためか"テレビまんが”と表現されていました。
初のテレビアニメのヒット曲は「エイトマン」(昭和38年)と考えられます。克美しげるさんの「北京の55日」のB面に収録されています。
翌年に上高田少年合唱団さんの「鉄腕アトム主題歌」がソノシートで発売されています。今回テーマにする「オバケのQ太郎」もソノシートです。
ペラペラのビニール製のレコードであるソノシートは、雑誌付録として誕生したようです。軽量で、少々曲がっても再生に影響しない形状で、製作する側もコストを抑えられる、というメリットがあります。
そのためか、子供向けの作品を収録するメディアとして、ソノシートは発展したようです。
しかし残念ながらレコードして扱われず、ヒットチャートでは集計対象外のメディアだったため、記録が残っていません。そのため、流行時期も分かりません。
「オバケのQ太郎」のソノシートのジャケットには、“小学館1965”と書かれているため、昭和40年に発売されたと思われます。
テレビまんがのソノシートは、ミュージックブックという形状で、漫画も掲載されています。
漫画のタイトルは「パパは忘れん坊の巻」となっていますが、この作品がテレビ放送の第1話のタイトルと同じになっています。
ソノシートのB面に音源が吹き込まれています。おそらくテレビアニメの人気を反映して、主題歌を商品化したのだと思われます。
そして、翌年に「オバケのQ太郎」が、かなり流行したのだろうと思わせる記録が1つだけ残っています。
石川進さんの歌唱した「オバケのQ太郎」が、その年のレコード大賞の童謡賞を受賞している事です。
童謡は子供向けに作られた楽曲ですが、テレビアニメの主題歌がノミネートする事は意外な事であると感じます。
昭和39年に「鉄腕アトム主題歌」も同じような人気を集めたものの、おそらく当時は、“テレビアニメの主題歌は童謡とは言えない”と判断され、ノミネートできなかったのだと考えられます。
しかし、子供たちの間ではアニメの人気は高まっていたようで、2年後にテレビアニメからヒットした「オバケのQ太郎」の人気を、同じように“童謡ではない”、と選考対象から除外できなくなったのではないか?と考えます。
バンドプロデューサーの分析では、「オバケのQ太郎」はCメジャー(ハ長調)です。石川進さんはオバQの声優ではありませんが、ユーモアのある歌い方が印象に残ります。
ソノシートの記録は残っていませんが、『オバケのQ太郎』の人気はかなり高かったようで、オバQ役の曽我町子さんが歌った「オバQ音頭」も制作され、支持を集めたようです。
曲情報
制作:日本ビクター株式会社
発行:ビクター出版株式会社
品番:MB-133
A面
「オバケのQ太郎」石川進
「ぼくとQちゃん」吉田亜矢
B面
ドラマ「パパは忘れん坊の巻」
声の出演:曾我町子・田上和枝ほか
参考資料
「オバケのQ太郎」ビクターミュージックブック
「バンドプロデューサー」