流行時期(いつ流行った?)
レベッカさんの「ラズベリー・ドリーム」は、昭和61年(1986年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、レコードが発売された5月初めから6月上旬にかけてヒットしています。
注)Sony Music (Japan)の動画
太陽の下で分かち合えない若者の想い
「ラズベリー・ドリーム」がヒットした1980年代中期は、寂しさや満たされない気持ちを紛らすために夜の街で遊ぶ若者像が描かれ始めました。
1980年代前半に描かれたツッパリのような強がりな反抗ではなく、反抗する気持ちを持っていても強がれない、行き場のない想いを抱えて夜の街にたたずむ若者の心理が描かれていると思います。
同年にヒットした「六本木純情派」でも似た場面が描かれているように感じます。心情では「翼の折れたエンジェル」(1985年)も重なる部分を感じます。
この描写は現在の若者でも理解できる心情表現ではないかと思います。
1980年代特有の若さの表現だと感じます。真夜中の街を胸に秘めた想いを抱えてさまよう姿を通して歌われる心理は、決して後ろ向きではありません。
1960年代に描かれた"太陽の下で青春を歌う価値観"とは対象的ですが、同じくらいの若い力を感じる事が出来るのは興味深いです。
どちらかというと「ラズベリー・ドリーム」で描かれる心情のほうが本来の若者の姿かも知れないと感じます。
"共に分かち合う事"が歌われたのは196、70年代特有の現象で、それ以前のヒット曲やレコード誕生以前の明治時代の唱歌でも"青春は級友と共に"と歌う作品がすぐに思い浮かびません・・・。
大人になっても十代で手にした自我は変わらないと思います。それによって生まれるプライドや恥じらいから素直に打ち明けられない心理がありのまま描かれている気がします。
「ラズベリー・ドリーム」はこれまでの流行歌が描かなかった新しい若者の心理描写で、この時代を象徴する作品のひとつと思います。
新しいサウンドを明確にした人気アーティスト?
音楽にはジャンルが存在しますが、自然と形作られたヒット曲は定義が難しく、解釈は人それぞれです。
誰が命名したのか分かりませんが、ジャパニーズ・ポップスやその略称のJポップのルーツも意見が分かれると思います。
流行歌しか知らない私は1960年代のカヴァー・ポップス歌手のオリジナル曲がルーツ?とぼんやり考えていますが、"レベッカさんが登場した1985年"は、音楽知識が無い私でも「サウンドが大きく変化した」と気付けるくらい、明確に線引きできる転換期と考えています。
具体的には前作「フレンズ」(1985)のヒットです。"今までの流行歌では聴いた事が無いサウンド(今聴いても古さを感じないサウンド)、それがヒット曲となった事"に衝撃を感じます。
ヒット曲特有のベタさが無いため、従来のヒット曲とはルーツが違う事を感じます。
それは「録音技術が向上したから?」か、それとも「こういう音楽を支持する世代が多数派になったから?」かなどと、まだ色々考え中です。
山下達郎さんの「RIDE ON TIME」(1980年)を聴いた時も、同じくらいサウンドに新しさを感じましたが1980年は、まだヒット曲が「RIDE ON TIME」に追いついていない時代という印象です。
1985年はそういった音楽表現ができるレベッカさんが登場し、流行歌手となった事が印象的です。
曲情報
発売元:株式会社CBS・ソニー
レーベル:FITZBEAT
品番:07SH1772
発売日:H.5.2
A面
「ラズベリー・ドリーム」
英題:RASPBERRY DREAM
作詩:Nokko
作曲:土橋安騎夫
編曲:レベッカ
演奏時間:4分39秒
B面
「モーター・ドライヴ」
英題:MOTOR DRIVE
作詩:Nokko
作曲:土橋安騎夫
編曲:レベッカ
演奏時間:3分48秒
Nokko:Vocal
Akio Dobashi:Synthesizers
Noriyuki Takahashi;E.Bass
Yutaka Odawara:Drums
Mario Koga:E.Guitar
参考資料
「ラズベリー・ドリーム」レコードジャケット
「you大樹」オリコン
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン