流行時期(いつ流行った?)
Mr.Childrenさんの「innocent world」は、平成6年(1994年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、1994年6月初めに発売されたシングルCDは、すぐにヒットチャート上位にランクインしましたが、9月中旬までベストテン入りし続けています。
平成には一年間でミリオンセラーが何曲も誕生するCDバブル期があります。(1991年~1998年ごろ)
「innocent world」はその時代にヒットした数少ない流行歌です。1曲の寿命が短くなった時代にもかかわらず、数か月間ベストテン入りした事が証明しています。
注)Mr.Children Official Channel 公式アーティストチャンネルの動画
"夢と現実"の差に、新たな視点
「innocent world」は、"自らの意思で進むべき道を決断する勇気"が主題と感じています。
"夢を追うなら何か犠牲にしないといけない事がある"、そう感じさせる歌詞は画期的と思います。当時の10代だけでなく、2,30代の世代の共感も集めたのではないか?と思います。
職業作詞家からシンガーソングライターがヒット曲を作る時代に変化した1980年代後半でも、この主題を感じる事があります。
しかし、"どの道を進めば良いのか悩んだり迷ったり葛藤する心理"がクローズアップされている印象があります。
「innocent world」には、"もし傷ついたとしても自分が選んだ道だから誰のせいでもない。自分が納得できる生き方で歩いていく"という意思を感じます。
1960年代後期にフォークソングで歌われた"何かを求めて歩く"でもなく、1980年代後期の"とりあえず思ったように走っていけ"でもない。
"正解は分からないけど自分で決めた道を歩く"。この視点は、いままでのヒット曲では描かれなかった若者の心理と思います。
なぜボーカルが多重録音なのか?
「innocent world」で気になるのは、ボーカルの桜井和寿さんの歌声が多重録音(オーバーダビング)になっている事です。
この技術はソロ歌手がデュエットしているように演出するときに用いる印象があります。「達者でナ」(1960)や「恋のハレルヤ」(1967)、「手紙」(1970)が思い当たります。
この曲では、最初から最後まで続いているように感じます。(そういえば、この手法は「Hello, Again 〜昔からある場所〜」(1995)でも用いられていますね。)
前作「CROSS ROAD」(1994)、次作「Tomorrow never knows」(1994)も、ボーカルの多重録音は行っていません。
「innocent world」はメッセージ性の強いため、既存の価値観ならば「しなくても良いのでは?」と感じますが、必要だったのだと感じます。
多重録音はソロ歌手でもデュオにできます。100%完全に同じ発声ではないので自然とハーモニーが生まれます。
ソロで歌う時に比べて、わざと通りにくい声にする事を狙ったのだろうと思います。
編曲で生まれる重なった歌声の響きは、「歌の主人公は不安に思いながらも進んでいこうと決意している」、その不安を強調していると感じます。
時代が変わって価値観や音楽表現が異なっても、歌われる若者の心理は1960年代と変わっていないのかもしれない、と感じる作品です。
曲情報
品番:MEDR-10032
発売元:株式会社メルダック
販売元:日本クラウン株式会社
発売日:93.1.21
トラック1
「イノセント ワールド」
作詞・作曲:桜井和寿
編曲:小林武史&Mr.Children
トラック2
「マイ コンフィデンス ソング」
作詞・作曲:桜井和寿
編曲:小林武史&Mr.Children
演奏時間:6分29秒
トラック3
「イノセント ワールド(Instrument version)」
参考資料
「innocent world」CDジャケット