流行時期(いつ流行った?)
THE虎舞竜(ザ・トラ・ブリュー)さんの「ロード」は、平成5年(1993年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、1993年1月下旬に発売されたシングルCDは、翌2月下旬から4月末にかけてベストテン入りしています。
また、日本レコード協会の有料音楽配信認定によると、2002年12月に配信が開始された着うたフルが、2017年1月にゴールド認定(10万ダウンロード)されています。
注)高橋ジョージ&THE虎舞竜 公式 Channelの動画
主題は"人を信じる事の尊さ"
歌詞カードには「ロード」が誕生したきっかけが記載されています。製作のいきさつを聴き手に伝える事は珍しく、作り手の強い想いを感じます。
5年前の冬の終わりに、あるファンの少女から一通の手紙が届いた。彼女は19才で妊娠中。彼は一児の父で離婚歴のある30才の男。「子供はもういらない」と言っていた彼に対して、この事をどう言い出したら良いのかという相談の手紙だった・・・・・・。彼女は出産を目の前にして事故で死亡・・・・・・
自分自身、「生老病死」という普遍性のテーマと、人間の持つ業について、両面から、もう一度考えさせられた衝撃的な出来事でした。或る日突然、最愛の人と容赦なく切り離される"死"。そんな時、誰もが気付く・・・・・・「何でもないような事が、幸せだったと思う」と・・・・・・。そして、その一年後に「ロード」という曲が、自分の中で"生"れました。 ザ・トラ・ブリュー 高橋ジョージ(シングルCDより引用)
実話をもとに製作された作品は説得力があります。サビのフレーズの意味を聴き手が深く理解できる制作秘話と感じます。
高橋ジョージさんはファンが事故で亡くなった事を、恋人からの手紙で知ったのでしょう。
おそらくファンとしてではなく一人の人間として、少しでも悩む心の助けになりたいという気持ちで連絡を取り合い続け、出産を決意するように説得を呼び掛けておられたのだろうと想像します。
「ロード」が製作された背景を知って感じるのは、誰にも打ち明けれられない悩みを「きっと返事をくれる」と信じて手紙を書いた女性ファンの心の純粋さです。・・・人を信じるなんてなかなか出来ない事です。
おそらく高橋ジョージさんも、この純粋な心を多くの人に伝えないといけないと感じられたからこそ作品のテーマにされたのだと思います。
聴き手に伝わるのは、高橋さんを信じて手紙を書いたファン、恋人と幸せになる事を願って行動した高橋さんのお互いに信じあう心のつながりと思います。
「ロード」の主題は、悲劇でも純愛の美談でもなく、人を信じる心と感じます。
1曲で収める事は出来ないと思う
「ロード」が凄いと感じるのは、心情がリアルに描かれている事です。フィクションでは描けない心理が歌われていると感じます。
突然の別れから一年経っても、いまだに心の整理が出来ない心境も描かれています。
また、渋滞にくたびれて眠ってしまった恋人を起こそうとした時に、思いがけず願いを耳にした描写もリアルに感じます。有名な作詞家でも描けない描写と思います。
ヒット曲では、恋人が難病を患って亡くなってしまうストーリーが描かれる作品があります。
書籍から誕生した「愛と死をみつめて」(1964)が思いつきますが、徐々に別れの日を感じる病死と、事故で突然の別れとなるのでは残された側の心理はまったく違うと思います。
もし少しでも時間が違っていたら、もし場所があと少し離れていたならば・・・と、いつまでも引きずってしまうと思います。
「ロード」が1つの作品で完結せずに、第二章、第三章・・・と綴り続けられる理由と感じます。
流行り廃りのあるヒット曲の世界で、ひとつの主題を貫く意思は凄いと感じます。それだけ、かけがえのない出会いだったのだろうと思います。
曲情報
品番:MEDR-10032
発売元:株式会社メルダック
販売元:日本クラウン株式会社
発売日:93.1.21
トラック1
「ロード」
作詞/作曲:高橋ジョージ
編曲:THE TRA-BRYU、入江純
演奏時間:4分31秒
TBS系全国ネット「テレビ近未来研究所」エンディングテーマ
トラック2
「祈り」
作詞・作曲:高橋ジョージ
編曲:THE TRA-BRYU、入江純
演奏時間:6分29秒
トラック3
「ロード(カラオケ)」
THE 虎 舞竜<THE TRA-BRYU>
George Takahashi:Vocal
Toshiyuki "Tommy" Honma:Guitar & Keyboard
Yoshiki "Backy" Ikeda:Guitar
Takahisa "Taka" Tanaka:Bass
Kiyoto "Turner" Tanaka:Drums
参考資料
「ロード」CDジャケット
「you大樹」オリコン