ヒット曲けんきゅうしつ

流行した音楽を探して、色々考えるブログ

ヒット曲の歌詞分析~「受話器」

1980年代に初登場

 特定の時代に、歌詞でもてはやされた単語を調べていますが、1980年代に目立つ印象があります。

 

 以前に取り上げた"ララバイ"は80年代特有の単語ですが、今回テーマにした“受話器”も1980年代に初登場しています。

 

 電話にまつわる単語(電話、ベル、テレフォン、ダイヤル等々)は、もっと以前から登場します。

 

 おそらく「受話器」を歌詞に用いたヒット曲は、中島みゆきさんの「悪女」(1981)が最初です。

 

 携帯電話・スマートフォンが普及した事で、2000年代以降は耳にする機会が減少した単語です。

 

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上図で浮き上がっているのが「受話器」。 (いらすとや「ベルが鳴る電話のイラスト」)

 

 

<歌詞に「受話器」が登場する主なヒット曲>

曲名 歌手名
1981 悪女 中島みゆき
1982 心の色 中村雅俊
1984 お久しぶりね 小柳ルミ子
1985 あなたを・もっと・知りたくて 薬師丸ひろ子
1987 バラードのように眠れ 少年隊
1990 告白 竹内まりや
1992 愛のWAVE カールスモーキー石井・松任谷由実
1995 TRY ME~私を信じて~ 安室奈美恵 with SUPER MONKEY'S
1996 幸せになりたい 内田有紀
1997 Shapes Of Love Every Little Thing
1998 長い間 Kiroro
1998 きっと どこかで TUBE
1999 Automatic 宇多田ヒカル

 

 

“ダイヤル”と“受話器”の違い

 自分の想いを伝えようとして回すダイヤルは、登場人物の意志・勇気が描かれます。

 

 掛けるけど切る、掛けようとして止める。「明日があるさ」(1964)、「恋のダイヤル6700」(1974)、「恋におちて」(1985)、「Diamonds」(1989)で描かれる心理です。

 

 ダイヤル=自分で、どちらかと言うと明るい単語です。

 

 

 一方、通話中に握り続ける受話器が登場する作品は、相手の話を聴き、想いを察する場面で用いられます。

 

 受話器=通話相手になります。

 

 そして、相手の表情が見えない電話では、別れ・すれ違いといった悲しい場面が描かれる事が多いと感じます。

 

 歌詞に“受話器”は登場しませんが、「青春アミーゴ」(2005)も同様の心理状態を描いているように感じます。

 

 声だけで情報が不足しがちなコミュニケーションが、お互いの気持ちのズレを暗に例えており、悲しい話が聴こえて来る受話器が、別れの象徴として認識され始めたのかも知れません。

 

 


お久しぶりね # 小柳ルミ子

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Watanabe Music Publishing Co .,ltd.(WARNER MUSIC JAPAN INC. の代理); Muserk Rights Management、その他 6 件の楽曲著作権管理団体

 

 

 

1980年代以降、電話は一家に複数台の時代?

 受話器は1980年代に入ってから流行し始めた単語です。それだけ日常生活になじんだ事を示していると推測されます。

 

 もしかすると、電話は一家に一台の時代では無くなっていたかも知れません。

 

 「あなたを・もっと・知りたくて」、「Automatic」では、想いを寄せている人とのつながりを電話で表現する作品もヒットしています。

 

 …話しながら眠ってしまうなんて、親に怒られそうな状況です(^^;A。

 

 


あなたを・もっと・知りたくて/薬師丸ひろ子

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 UMG(Universal Music LLC の代理); Muserk Rights Management、その他 4 件の楽曲著作権管理団体

 

 

 


宇多田ヒカル - Automatic

注)Hikaru Utada 公式アーティストチャンネルの動画

 

 

あとがき

 歌詞分析はデータを集めるのに時間がかかっています。また面白い事が見つかれば取り上げる予定です。

 

 

参考文献

 『近代日本の心情の歴史ー流行歌の社会心理士』見田宗介

 「形態素解析システム MeCab」京都大学情報学研究科−日本電信電話株式会社コミュニケーション科学基礎研究所 共同研究ユニットプロジェクト