
流行時期(いつ流行った?)
久保田早紀さんの「異邦人 シルクロードのテーマ」は、昭和54年(1979年)末から昭和55年(1980年)はじめにかけてヒットしました。
『レコードマンスリー』の月間ランキングによると、10月に発売されたレコードは12月に首位を獲得しています。
| 年月 | 順位 |
| 昭和54年10月 | レコード発売 |
| 昭和54年11月 | 24位 |
| 昭和54年12月 | 1位 |
| 昭和55年01月 | 1位 |
| 昭和55年02月 | 4位 |
| 昭和55年03月 | 15位 |
| 昭和55年04月 | 30位 |
注)Sony Music (Japan)の動画
イントロの2つのテーマ
作品の主題が曲の冒頭に示されるとすればイントロの役割は重要になります。
「異邦人」は名曲でイントロも印象に残りますが、2つのテーマで構成されているようです。
1つめは始まりの【急に上がってゆっくり下がるメロディライン】です。

このフレーズは曲の終わりのアウトロにも用いられていますので重要なテーマと思います。
1拍で急上昇して3拍かけて下降しており、「下がる歌です」と聴き手に案内していると思います。
しかし続く2つめのフレーズが予想に反して「上がって」いきます。

このフレーズは「アレ?下がらないの?どこまで上がるの?」と期待させます。
限界まで上がろうとする事で【果てしなさ】を聴き手に与えていると感じます。
このフレーズが【大陸やシルクロードを連想させる要素】になっていると思います。
また、「下がるけど上がる」ことで途中で転調する事を予告している印象も受けます。
あまり盛り上がりすぎないようにした?
私が「異邦人」で印象に残るフレーズは下がる方が多いです。
先ほどのフレーズが終わると再び下がるピアノ演奏が始まります。

また、「夢までも」や「この指が届くと」、「振り向いてみただけ」あたりにも下降するベースラインが挿入されます。(黄色のライン)

上のベースラインは同じ時期にヒットした「Sachiko」にも用いられていますが、「異邦人」では登場頻度が高いです。
転調する箇所も「すごく盛り上がるのかな?」と思ったらそれほど上がらない印象です。
「過去からの旅人を」の部分はもっと盛り上げる事が出来そうなのに、早々と転調が終わり元の短調に戻ります。
同年にヒットした「昴」のように派手な盛り上がりを意図的に避けた編曲と感じます。
傷ついた心理を客観的に描く
「異邦人」は完成度の高い作品と感じます。
それは【あえて控えめに表現しているから】かも知れません。
謙虚さは歌詞からも感じる事ができます。
傷心は誰かに打ち明ければ少しは気持ちが楽になるかも知れないのに、胸に秘め続けて自らを客観視する事に終始しています。
一般的にヒット曲の歌詞は主人公の主張が綴られがちですが、あえて描かない"奥ゆかしさ"に惹かれます。
「私は通りすがりだったのか」と冷静に自己分析する失恋した主人公・・・なかなかいません。
似た曲が他にないため、時代を超えて支持され続けていると思います。
参考文献
「異邦人」レコードジャケット
『オリコンチャート・ブック アーティスト編全シングル作品』オリコン
『レコード・マンスリー』日本レコード振興株式会社