ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「恋をするなら」橋幸夫(昭和39年)

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流行時期(いつ流行った?)

 橋幸夫さんの「恋をするなら」は、昭和39年(1964年)にヒットしました。

 

 『ミュージックマンスリー』の月間売上ランキングによると、1964年の8月から12月にかけてヒットしています。

 

 

<「恋をするなら」売上ランキング推移>

年月 順位
昭和39年08月 1位
昭和39年09月 4位
昭和39年10月 2位
昭和39年11月 5位
昭和39年12月 7位
昭和40年01月 16位

『ミュージックマンスリー』、今月のベストセラーズの歌謡曲より

 

 

 月間ランキングですが、オリコン風に表現すると初登場1位を記録しています。

 

 橋幸夫さんは、すでにアイドル的な人気を獲得していた時期と考えられますので、新曲が上位にランクインしやすかったかも知れません。

 しかし、「恋をするなら」は人気に火が付くスピードが他の作品に比べて特に速いと感じます。当時、発売間もなく話題となった作品だったと考えられます。

 

 「恋をするなら」には2種類のレコードジャケットが存在します。おそらくピンク色が初期で、エメラルド色がセカンドと考えられます。

 9月に順位を下げているのは、追加のレコード生産が追い付かなかったからかも知れません。

 

 ランキング推移から、8月から10月にかけて特に人気を集めていたように感じます。

 

 

同時期に流行った曲(昭和39年8月~10月)

 邦楽では青山和子さんの「愛と死をみつめて」和田弘とマヒナスターズ、松尾和子さんの「お座敷小唄」が首位となっています。

 他には、坂本九さんの「幸せなら手をたたこう」「サヨナラ東京」がヒットしています。越路吹雪さんの「ラストダンスは私に」もロングヒットとなっています。

 

 洋楽では、ボビー・ソロさんの「ほほにかかる涙」ジリオラ・チンクェッティさんの「夢みる想い」「ブーベの恋人」サウンドトラック盤が首位となっています。

 ビートルズさんが人気で、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」「恋する二人」がヒットしています。

 

 

 


恋をするなら ☆ 橋幸夫

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Victor Entertainment, Inc.

 

 

 

リズム歌謡の第1号ヒット

 リズム歌謡は、1960年代に洋楽で次々に登場した最新のリズムを取り入れた作品です。

 主に青春歌謡を歌う若手歌手のあいだでの流行ですが、橋幸夫さんがこの作品で開拓したジャンルのため、橋幸夫さんの作品で用いられる事が多い言葉と感じます。

 

 「恋をするなら」は1964年に新しく登場した、エレキギター演奏で表現されるサーフィンサウンドを取り入れた作品です。

 従来の作品に比べてテンポが速く、“洋楽ポピュラーソングを取り入れた歌謡曲”という新しさを備える作品です。

 それまでの流行歌には無かったジャンルで、画期的な企画だったと思います。

 

 

 この作品が登場するまで、スクスク(1961年)やツイスト(1962年)が大きく流行する事がありましたが、それは日本語カバーをするポップス歌手のなかでの流行に留まっていました。

ドドンパ(1961年)は日本独自のリズムでしたので、歌謡曲にも転用されています。

 

 この作品の後、橋幸夫さんはスイム(1965年)やアメリアッチ(1966年)、メキシカンロック(1967年)と、最新の洋楽を取り入れた作品を発表されるようになります。

 

 翌1965年以降、舟木一夫さんや西郷輝彦さん、美樹克彦さんもアップテンポなリズム歌謡を発表されるようになります。

 

 

流行歌に洋楽を取り入れた作曲家

 サーフィンサウンドは、カバーポップス歌手ではヒット曲が無く、歌謡曲歌手の作品に採用された事は興味深い現象です。

 

 それまでのリズムの流行とは違い、スピード感を重視したサウンドだったからかも知れません。原曲がヴォーカル向けの楽曲ではないため、日本語カバーの題材に適さなかったと考えられます。

 

 

 しかし、流行りの洋楽の要素を取り入れてオリジナル作品を製作できる作曲家の存在が気になります。

 

 「恋をするなら」は吉田正さんが作曲されています。洋楽を採用するのは、この作品が初めてではありません。

 1960年にナット・キング・コールさんの「カチート」がヒットしたときに、フランク永井さんの「東京カチート」を作曲されたりしています。他にもあるかも知れません。

 

 

 1970年代以降には、筒美京平さんが洋楽の流行を取り入れる作品を多数製作されますが、このヒットメーカーのお二方は、“洋楽から学び、日本の音楽にアレンジする考え方”をお持ちだと感じます。

 

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「恋をするなら」はG#マイナー(嬰ト短調)です。

 

 用いられている音階は26抜き短音階のため、耳に残りやすいメロディになっていると感じます。

 サビのア行の言葉を歌う部分は、徐々に音の高さが低くなる反復進行(ゼクエンツ)自然的短音階と思われます。

 コード進行で考えると、1つずつ音の高さが下降しており、聴いていて面白い部分です。

 

 

曲情報

1964年 年間11位(邦楽)


レコード

 発売元:日本ビクター株式会社

 品番:SV-87

 

 LIVING STEREO

 

 松竹映画「孤独」主題歌

 

 A面

  「恋をするなら」

  作詞:佐伯孝夫

  作編曲:吉田正

  演奏時間:3分18秒

 

 

 B面

  「孤独のブルース」

  作詞:佐伯孝夫

  作編曲:吉田正

  演奏時間:4分16秒

 

 

参考資料

 「恋をするなら」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 『全音歌謡曲大全集3』全音楽譜出版社

 『歌謡曲の構造』小泉文夫

 「バンドプロデューサー5」