流行時期(いつ流行った?)
リチャード・マルトビー楽団(Richard Maltby and his Orch.)さんの「黄金の腕を持った男」は、昭和31年(1956年)にヒットしました。
同年5月末に公開された『黄金の腕』の主題曲ですが、競作のように、いくつかの楽団が吹き込んだ盤が各社で発売され、同時期にヒットチャートに登場しています。
『ダンスと音楽』に掲載されているSPレコードの「トップ・レコード順位」のランキング推移は下記の通りです。
最も支持を集めたのは、リチャード・マルトビー楽団さんの盤になります。各社の盤がランクインした1956年7月が、最もヒットしていた時期と推測されます。
年月 | リチャード・マルトビー盤 | エルマー・バーンスティン盤 | ビリー・メイ盤 |
昭和31年05月 | 4位 | - | - |
昭和31年06月 | 1位 | 10位 | - |
昭和31年07月 | 1位 | 10位 | 20位 |
昭和31年08月 | 1位 | 10位 | - |
昭和31年09月 | 4位 | - | - |
昭和31年10月 | 11位 | - | - |
昭和31年11月 | 19位 | - | - |
3か月連続で首位を獲得しているため、当時かなり人気を集めた作品と思われます。
『洋楽シングルカタログ』によると、EP盤が発売されたのは、ヒットから3年後の1959年10月です。
Richard Maltby Theme From The Man With The Golden Arm 1956
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主人公の心理をジャズで表現した主題曲
映画のオープニングからこのテーマ曲が流れて来ます。劇中にも何度か登場しますが、主人公の心のうちを演出する目的で用いられた音楽のようです。
"テーマ曲を映画の様々な場面で繰り返す演出"は、昔の洋画で頻繁に登場しているように思います。
ほとんどのテーマ曲はオーケストラの演奏です。そして、ムードを感じる音楽、イージーリスニングと呼ばれるジャンルに近いの作品がほとんどです。
『黄金の腕』は、雰囲気作りのテーマ曲に、リズム感のあるジャズを採用した事が、当時としては斬新な試みだったようです。
主人公が誘惑に負けてしまうシーンでもテーマ曲が流れ始めます。
サウンドトラック盤よりも人気が集まった盤
"ある作品が、複数のレコード会社から発売される現象"は、この年代でよく見かけます。
これは「黄金の腕」にも当てはまります。最も支持を集めたリチャード・マルトビー楽団さんの盤ですが、映画で用いられた音源はエルマー・バーンスティン楽団さんの演奏です。
作品を作曲されたエルマー・バーンスティンさんの楽団が、本命盤となり最も人気が集まるはずですが、なぜか日本ではそれほど支持を集めておりません。
日本で最も支持されたリチャード・マルトビー楽団さんの演奏には、「黄金の腕」と”タイトル不明のヒロインのテーマ曲”の2曲が収録されています。
2つの作品が突然入れ替わるのではなく、『黄金の腕』の主題が徐々にヒロインのテーマ曲の要素を帯びていく編曲で表現されています。
エルマー・バーンスティン楽団さんの『黄金の腕(メイン・テーマ)』だけでも充分聴きごたえはありますが、リチャード・マルトビー楽団さんの演奏は雰囲気の異なる2つの曲を融合させているためか、聴きやすさを備えています。
曲が変化していく導入部分は聴いていて面白いと感じます。本命盤よりも支持を集めたのは、ジャズのみで完結せずに、イージーリスニングの要素も含んだバランスの良さが理由なのかな?と考えてしまいます。
楽曲分析
「黄金の腕を持った男」は変ロ短調(B♭マイナー)です。途中のテーマが変わる部分は楽譜が無いので明確に分かりませんが、並行調のD♭に転調している印象を受けます。
ジャズは映画音楽からヒットする事が多いように感じます。1960年代にも何曲かヒットしていますが、1950年代の方が、ジャズにおけるドラムの存在感が大きく感じます。
曲情報(EP盤)
発売元:日本ビクター株式会社
品番:SS-1167
A面
「黄金の腕を持った男」
原題:THEME FROM THE MAN WITH THE GOLDEN ARM
演奏:リチャード・マルトビー楽団
演奏時間:2分29秒
B面
「恋する乙女」
原題:A WOMAN IN LOVE
唄:ボブ・キャロル
演奏時間:2分23秒
参考資料
「黄金の腕を持った男」レコードジャケット
「黄金の腕(メイン・タイトル)」レコードジャケット
『ダンスと音楽』モダン・ダンス社
『洋楽シングルカタログ RCA編』オールデイーズ
『映画音楽百選』ケイ・エム・ピー
「バンドプロデューサー5」
allcinema『黄金の腕』(Webサイト)