ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「小指の想い出」伊東ゆかり(昭和42年)

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流行時期(いつ流行った?)

 伊東ゆかりさんの「小指の想い出」は、昭和42年(1967年)にヒットしました。

 

 『レコードマンスリー』の月間売上ランキングによると、1967年の5月~9月の5か月の間にベストテン入りしています。

 6、7月には首位、8月も2位となっています。3か月間も首位に近いランクを記録していますので、当時かなり流行した作品と考えられます。

 

年月 順位
昭和42年04月 24位
昭和42年05月 4位
昭和42年06月 1位
昭和42年07月 1位
昭和42年08月 2位
昭和42年09月 6位
昭和42年10月 19位
昭和42年11月 19位
昭和42年12月 12位

参考)『レコードマンスリー』月間売上ランキングの推移

 

 


伊東ゆかり・・小指の想い出

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 KING RECORD CO., LTD.(King Record Co.,Ltd. の代理)

 

 

歌詞が尊重された曲

 「小指の想い出」は、"自分自身の恋心"を主題にした作品です。実際に数えた事はありませんが、おそらく流行した音楽のほとんどが主題にしていると思います。

 

 言葉で表現する事がとても難しい"人を愛する気持ち"をどのように歌詞で描くか?作詞をされる方々を大いに悩ませていると感じます。

 

 「小指の想い出」が多くの人たちに支持された理由は、メロディよりも歌詞の割合が高いと感じます。

 

 曲を作るときは、”詞が先か、メロディが先か”という起点があるようですが、この作品は歌詞が先、詞先と呼ばれる製作工程で誕生したのだろうと思います。

 

 根拠は、伊東ゆかりさんがワンフレーズ歌う度に、呼応するかのように伴奏が反応する構成になっている事です。相槌を打つように伴奏が行われています。

 

 短いフレーズで区切りながら歌ってもらうと歌詞を聴き取りやすいですし、後から付いてくる伴奏は順番的に二番手で、主役の歌唱を引き立たせるための立ち位置である、という印象を受けます。

 

 

聴き手に伝わる愛情の表現

 「小指の想い出」は普遍的な恋愛感情をテーマにしていますが、”好きな人に噛まれた小指”を題材にしています。

 

 この題材は一般的に理解しがたい表現と思います。人生で小指を噛まれる経験をした人は少ないでしょうし…(^^;A。

 

 小指と言えば「白い小ゆびの歌」(1960)や「小樽のひとよ」(1968)で描かれるような、”ゆびきりげんまん”の世界で、二人だけの約束の証のシンボルとして登場します。

 

 

 ”噛まれた小指”は奇抜な表現であるため、ヒットから何十年経っても記憶に残っていると思います。ただ、この点にこだわってしまうと、歌詞の意味が理解できないのではないか?と思います。

 

 歌詞が秀逸な点は、特異な状況で興味を引かせながらも、曲を聴く側に"歌の主人公がどのくらい相手を深く愛しているか?"を理解してもらいやすい表現になっている事です。

 

 それは"指"ではなく”指に残る痛み”を通して、愛する人への恋慕を表現しているからです。

 

 ”二人だけの想い出の場所・物”という言い回しで、遠く離れている恋人に想いを寄せる描写がありますが、その表現では、どこなのか?何なのか?は聴き手には伝わりません。

 

 「小指の想い出」は誰でも理解できる”身体に残る感覚”が、主人公の恋心を刺激するきっかけになっています。

 

 "斬新な発想"は簡単にひらめくと思いますが、その表現が"誰が聴いても理解できるかどうか?"、伝わるのかどうかは分かりません。 

 「小指の想い出」の歌詞は、どちらも両立出来ていると感じます。

 

 他の人が描かない世界観ですので、おそらく作詞された有馬三恵子さんは実体験をベースにして詞を書かれたのではないか?と感じます。

 

 続いてヒットした「あの人の足音」では、聴こえてくる足音で想いを寄せている人だと分かってしまう、と歌われています。痛覚ではなく気配で気付けるくらい、体全体で愛している心理状態が描かれています。

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「小指の想い出」はBマイナー(ロ短調)です。

 

 用いられている音階は自然的短音階です。一部、和声的短音階になっているように思います。

 

 

 サビの部分では、主人公は、抑えきれない気持ちを誰でも良いから話したい!という衝動の心理が描かれています。しかしサビが終わると、考えてみれば現実には言うことは出来ない、と冷静に戻っています。

 

 この部分は、有馬三恵子さんが作曲の事も考慮して作詞しているような気がします。詞とメロディが結合しており、聴いていて「良い感じだなぁ~」と感じます。

 

 

曲情報

1967年 年間2位(歌謡曲)

 

 

レコード

 発売元:キングレコード株式会社

 品番:BS-585

 

 

 A面

  「小指の想い出」

  作詩:有馬三恵子

  作曲:鈴木淳

  編曲:森岡賢一郎

  演奏時間:4分

 

  オール・スター・レオン

 

 

 B面

  「夜霧にかくれて」

  作詩:池英志

  作曲:白石信

  編曲:森岡賢一郎

  演奏時間:3分19秒

 

  オール・スター・レオン

 

 

参考資料

 「小指の想い出」レコードジャケット

 『レコードマンスリー』日本レコード振興

 『全音歌謡曲全集3』全音楽譜出版社

 『歌謡曲の構造』小泉文夫

 「バンドプロデューサー5」