流行時期(いつ流行った?)
植木等・谷啓・ハナ肇さんの「学生節」は、昭和39年(1964年)にヒットしました。
ハナ肇とクレージー・キャッツさんの名義ではなく、ボーカル担当の連名になっています。
『ミュージックマンスリー』の月間売上ランキングによると、1964年の2月から4月にかけてヒットしています。
<「学生節」売上ランキング推移>
年月 | 順位 |
昭和39年02月 | 8位 |
昭和39年03月 | 11位 |
昭和39年04月 | 18位 |
『ミュージックマンスリー』、今月のベストセラーズの歌謡曲より
同時期に流行った曲(昭和39年2月)
邦楽では、前年のレコード大賞を受賞した梓みちよさんの「こんにちは赤ちゃん」が首位となっています。
他には、村田英雄さんの「姿三四郎」、舟木一夫さんの「あゝ青春の胸の血は」、越路吹雪さんの「ラストダンスは私に」がヒットしています。
洋楽では、ヴィレッジ・ストンパーズさんの「ワシントン広場の夜はふけて」が首位となっています。
他には、トロイ・ドナヒューさんの「恋のパームスプリングス」、ジョニー・シンバルさんの「ぼくのマシュマロちゃん」がヒットしています。
真空管ラジオ 三菱電機 5P-710「クレイジーキャッツ 学生節」を聴いてみました。
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 Watanabe Music Publishing Co .,ltd.(EMI MUSIC JAPAN INC. の代理)
ブームを過ぎてからのヒット曲
ハナ肇とクレージー・キャッツさんがブームとなったのは1962年です。「学生節」は2年後のヒット曲になります。
ブームとなっていた時期は「スーダラ節」や「ドント節/無責任一代男」と、サラリーマンが主人公の作品を発表され、人気を集めていました。
しかし「学生節」では、サラリーマンの姿は描かれていません。代名詞だった役柄はなくなっても、無責任さを感じる性格は歌詞に継承されているように感じます。
何の根拠も無いのに人を信じるように説きながら、最後には「明日のことは誰も分からないでしょう。」と論点をあいまいにする歌詞は、ブーム当時に支持された無責任な人物像が表現されていると感じます。
タイトルに“学生”を用いた事も気になります。疑いのまなざしを持つ両親や教師から庇おうとしている学生は、もしかしたら、この時期の流行になりつつあった青春歌謡で描かれた純粋さを感じる少年少女ではないかも知れません。
歌は4番までありますが、最後には恋をする若者たちを応援する歌詞になっています。
しかし、やっぱり恋人を通せんぼするので、純粋に応援する気はないのかも知れません。
…「学生節」の主人公は一体何がしたいのでしょう(^_^;A。
ジャズではなく日本的なサウンド
「学生節」で気になるのは、音楽表現が従来のクレージー・キャッツさんの作品と異なる事です。
なぜか尺八や手拍子がサウンドに取り入れられており、それまでの作品で感じられたジャズバンドの雰囲気はほとんど感じられません。
もしかすると、前年の「ホンダラ行進曲」が思ったより支持を集めなかった事で、レコード会社から「少し路線を変更してみては?」と言われたのかも知れません。
「学生節」はこれまでの作品を担当されてきた青島幸男さん、萩原哲晶さんのコンビによる作品では無くなっています。
楽曲分析
「バンドプロデューサー5」の分析では、「学生節」はFメジャー(ヘ長調)です。
用いられている音階はヨナ抜き長音階で、一部全音階的長音階になっています。
音域は1オクターブ以内で、同じフレーズが繰り返されるため耳に残りやすいメロディになっていると感じます。
メインの歌唱部分では日本らしさを感じる音楽ですが、前奏や歌の合間の演奏では、従来通りのハナ肇とクレージー・キャッツさんの持ち味のジャズらしさを感じる部分があります。
曲情報
1964年 年間28位(邦楽)
レコード
発売元:東芝音楽工業株式会社
品番:JP-1656
A面
「学生節」
作詞:西島大
作曲・編曲:山本直純
唄:植木等・谷啓・ハナ肇
演奏時間:3分31秒
ハナ肇とクレージー・キャッツ
東芝レコーディング・オーケストラ
東宝映画『香港クレージー作戦』主題歌
B面
「めんどうみたヨ」
作詞:塚田茂
作曲・編曲:萩原哲晶
唄:植木等
三味線:豊文
演奏時間:4分7秒
東芝レコーディング・オーケストラ
参考資料
「学生節」レコードジャケット
『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社
『全音歌謡曲全集13』全音楽譜出版社
『歌謡曲の構造』小泉文夫
「バンドプロデューサー5」