流行時期(いつ流行った?)
舟木一夫さんの「高校三年生」は、昭和38年(1963年)にヒットしました。6月に発売されたレコードは、8月から10月にかけて首位となっています。
集計日付 | 順位 |
昭和38年6月 | 9位 |
昭和38年7月 | 3位 |
昭和38年8月 | 1位 |
昭和38年9月 | 1位 |
昭和38年10月 | 1位 |
昭和38年11月 | 7位 |
昭和38年12月 | 17位 |
※『ミュージックマンスリー』歌謡曲部門のランキング推移
レコードが発売された6月に初登場9位にランクインしています。舟木一夫さんのデビュー曲ですから、事前の情報はほとんど無かったと推測されますが、当時としてはヒットに至るまでの期間が短く、人気に火が付くスピードが早いように感じます。
注)舟木一夫 - トピックの動画
同時期に流行った曲(昭和38年7月~10月)
「高校三年生」に続いて発売された「修学旅行」(8月発売)も、同時期にヒットしています。舟木一夫さんへの人気がかなり集中している空気を感じる事ができます。
若手の歌手では、橋幸夫さんの「白い制服」、梓みちよさんと田辺靖雄さんのカヴァー・ポップス「ヘイ・ポーラ」がヒットしています。
石原裕次郎さんの人気も高く、「赤いハンカチ」と、浅丘ルリ子さんとのデュエット曲である「夕陽の丘」もヒットしています。
その他には、和田弘とマヒナスターズさんの「島のブルース」、西田佐知子さんの「エリカの花散るとき」がヒットしています。
洋楽では、映画関連の作品が多く、「太陽の下の18才」、「大脱走マーチ」、「禁じられた恋の島」、「地下室のメロディ」 がヒットしています。
ポップスでは、リトル・ペギー・マーチさんの「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」や、ジョニー・ティロットソンさんの「キューティ・パイ」がヒットしています。
“青春歌謡”の輪郭をかたどった曲
後年のメディアで、青春歌謡の代名詞として扱われている印象を受けますが、実際、学生生活を題材にした青春歌謡はこの作品が初めてです。
この作品が登場するまでの青春歌謡は、「いつでも夢を」や「江梨子」、「若いふたり」などが該当すると思われますが、いずれの作品も若者が主人公で、若さを題材にしているものの、学生や学校の描写はありませんでした。
そして、この作品以降には「美しい十代」や「女学生」、「新聞少年」と、主人公が学生である事が描かれるようになっています。
今では、青春歌謡=学生が主人公の歌、学生時代の想い出が歌われた歌、という固定概念がありますが、そのスタイルを築いたのは、「高校三年生」であると考えられます。
当時、舟木一夫さんが学生服で歌番組に出演されていた事も注目を集めた理由と見聞きした事がありますが、テレビ時代では視覚で与えるインパクトも大きかったと推測されます。
等身大の学生の心理が描かれた歌詞
「高校三年生」の特徴は、若さの表現に“学生が主人公”という設定を加えた事と考えています。
そして、卒業を間近に控えた学生の心情が、具体的に描かれている点が最大の特徴です。この作品は、“若い=明るい”という価値観を持っていません。
卒業が迫っている時期だからかもしれませんが、高校生活を振り返ったとき、楽しかった想い出だけで無く、悲しみや後悔の記憶も描かれています。
当時の若者だけではなく、すでに卒業した大人の世代に対しても、「そういえば学生時代は色々あったなぁ、懐かしいなぁ。」と共感を与える事が出来る視点で描かれていると感じます。
「美しい十代」のような、リアルタイムでの学生生活を描いた青春歌謡では表現できない心理であり、「高校三年生」が多くの人に支持された理由だと感じます。
楽曲分析
「高校三年生」はBマイナー(ロ短調)です。音階は和声的短音階で作られています。意外と47抜き音階の要素はありませんでした。
楽譜は4分の2拍子で記譜されており、確かに曲調も行進曲的な印象を受けますが、Aメロ直前に聴こえてくるリズムは、ポール・アンカさんの「ダイアナ」で耳にしたルンバのリズムに似ているような印象も受けます。
「史上最大の作戦マーチ」も流行った年ですので、遠藤実さんも『史上最大の作戦』を映画館で見て、「次に作る曲はマーチにしようかな。」と着想されたのかも知れません。
曲情報
1963年 年間5位(邦楽)
レコード
発売元:日本コロムビア株式会社
品番:SAS-60
A面
「高校三年生」
英題:KOKO SANNENSEI
作詞:丘灯至夫
作曲:遠藤実
編曲:福田正
演奏時間:3分2秒
ルナ・アルモニコ
コロムビア・オーケストラ
B面
「水色のひと」
英題:MIZUIRO NO HITO
作詞:丘灯至夫
作曲:遠藤実
編曲:福田正
演奏時間:3分39秒
コロムビア・オーケストラ
参考資料
「高校三年生」レコードジャケット
「修学旅行」レコードジャケット
『ミュージック・マンスリー』月刊ミュジック社
『全音歌謡曲全集13』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」