ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。戦前戦中をけんきゅうちゅう。

「Manhattan-Kaboul」Renaud & Axelle Red(2002年)

f:id:hitchartjapan:20191201114116j:plain

流行時期(いつ流行った?)

 Renaud(ルノー)さんとAxelle Red(アクセル・レッド)さんのデュエット曲「Manhattan-Kaboul」は2002年のフランスでヒットしました。

 

 TOP50(フランスのオリコン的ヒットチャート)のランキングによると、Renaud & Axelle Redさんの「Manhattan-Kaboul」は、2002年8月から11月上旬にかけてヒットしています。

 

 お二人とも、フランスではすでに実績を残されており、知名度の高いアーティストです。作品の製作意図に共感されて誕生した楽曲のようです。

 

 

その頃、日本では…

 オリコンランキングによると、浜崎あゆみさんの「independent」「Voyage」平井堅さんの「大きな古時計」が首位を獲得しています。

 

 他には、MISIAさんの「眠れぬ夜は君のせい」氷川きよしさんの「星空の秋子」BoAさんの「VALENTI」がヒットしています。

 

 また、MINMIさんの「The Perfect Vision」がヒットし始めています。

 

 それぞれの作品が人気になった理由は異なるにせよ、リバイバルブームやラップ音楽の流行、浜崎あゆみさんや氷川きよしさんの人気など、支持層が異なるジャンルで多彩なヒット曲が誕生している印象を受けます。

 

 

 


Renaud - Manhattan Kaboul (Clip Officiel)

 

 

アメリカ同時多発テロ(9.11)が題材の反戦歌

 この作品は、2001年に起きた同時多発テロを題材にしています。タイトルの「Manhattan-Kaboul」は、テロの標的となったWTCがあるマンハッタンと、テロを首謀した容疑者の引き渡しを拒否した事により報復で空爆されるアフガニスタンの首都であるカブールの地名になっています。

 

 プロモ映像は、冒頭では事件が報道される前のフランスの日常が表現されています。しかし、2分を過ぎたあたりで、ラジオやテレビで、ワールドトレードセンター(WTC)に旅客機が衝突した事件の速報が報道されます。

 動揺を隠せず、普段は誰も見向きもしない街頭テレビのニュース映像を見守るフランスの人たちの姿が描かれています。

 対照的に、報道を知らない人たちが普段通りの日常を過ごす姿も描かれています。

 

 日本時間では、この事件の第一報は深夜だったと記憶しています。プロモに映る時計は15:33を刻んでいますので、フランスでは昼間にニュース速報が伝えられたようです。

 

 この事件は、あらゆる国の人たちに大きな衝撃を与えたと感じます。大変恥ずかしながら現代史を勉強不足だった私は、この事件が起きたときに、初めて宗教の違いによる対立、過激な思想を持つ組織の存在を知りました。

 

 

犠牲者が主人公として描かれた反戦歌

 作品の主人公は、マンハッタンの世界貿易センタービルに事務所を持つ企業に勤める男性と、テロ首謀者の身柄を引き渡さない国の判断によって、空爆に襲われたアフガニスタンで生活をする少女のふたりです。

 

 お互いに面識はありませんが、この事件をきっかけに亡くなってしまう犠牲者として描かれています。架空なのか実在した方々だったのかは分かりません。

 

 

 作品では、宗教や兵器の発達や国益の優先などが、市民の生活を脅かす火種を次々と生み出している、という意味合いの歌詞が歌われています。

 

 流行歌の世界では反戦歌という定義がありますが、歌詞で表現される心情からこの作品も該当すると思います。しかし、この作品のように、犠牲となった当事者の視点で、戦争を批判した作品というのはあまり存じ上げません。

 

 反戦歌と言うと、日本では「長崎の鐘」(1949年発売)や「岸壁の母」(1976年)、「島唄」(1993年)などのヒット曲が思い浮かびますが、いずれも最愛の方を無くされた人物の視点で描かれています。

 シベリア抑留を経験した当事者の心理が歌われた「異国の丘」(1948年発売)が、作品が伝えたい心情に近いと感じます。

 

 当事者の視点で描かれる歌詞には、帰らぬ人を偲ぶ悲しみは描かれず、争いを起こす人間の愚かさを非難している心理が理解できます。 

 人間同士で行われた残酷な行為を主題にした作品は、音楽に限らず、絵画や文学の世界でも製作されています。おそらく、同じ気持ちで製作された作品であると感じます。

 

 

報道に心を痛めた音楽家

 大きな事件や事故が起きたとき、チャリティーで企画される作品がありますが、あまり心が動かされる楽曲はありません(^_^;A。しかし、アーティストが自ら進んで表現した作品には心が引き寄せられます。

 

 日本でも、メディアの報道をきっかけにヒットした作品があります。1969年にヒットした新谷のり子さんの「フランシーヌの場合」です。

 新聞の夕刊に掲載された、ベトナム戦争に反対の意志を示すためにフランスで若い女性が焼身自殺したという記事をきっかけに、作品が誕生しています。

 

 おそらく「Manhattan-Kaboul」が誕生したのも、自分が生きている時代に起きた事件、人間が起こした悲しい行為に心を痛めた音楽家の行動がきっかけで共通しているように感じます。

 

 

 

楽曲分析

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「Manhattan Kaboul」はAマイナー(イ短調)です。

 

 

参考資料

 TOP50(http://www.chartsinfrance.net/

 「you大樹」オリコン

 「Manhattan-Kaboul」CDジャケット

 「バンドプロデューサー5」