流行時期(いつ流行った?)
中森明菜さんの「二人静-『天河伝説殺人事件』より」は平成3年(1991年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、3月末に発売されたCDは、4、5月にヒットしました。
同時期に流行った曲(平成3年4、5月)
B'zさんの「LADY NAVIGATION」、ドリームズ・カム・トゥルーさんの「Eyes to me」が首位となっています。1990年代に入ってからヒットチャートに登場した新たな人気歌手が活躍している印象を受けます。
小田和正さんの「ラブストーリーは突然に」や、ASKAさんの「はじまりはいつも雨」がヒットしています。
アルバムでは『やまだかつてないCD』が首位、M.C.ハマーさんの『プリーズ・ハマー・ドント・ハーテム』がヒットしています。
注)中森明菜 - トピックの動画
曲名と作品が一致する曲
1980年代に活躍された人気歌手で気になる事があります。それは、曲名を聴いても、作品が頭に思い浮かばない事です。年間ランキングで上位となった作品でも、そういった傾向があります。
中森明菜さんで例えると、「ミ・アモーレ」や「難破船」は、すぐに曲が思い浮かびますが、「BLONDE」や「Fin」は曲名だけでは作品が思い浮かびません…。
実際に曲を聴いて、「この曲のタイトルだったの?!」と感じる事が多くなった理由は、ヒット曲を発表される頻度が短くなった事が一因かもしれませんが、それよりも、曲より歌手に人気の比重が傾く価値観が生まれたからかも知れません。
「二人静」は作品に個性を感じられるため、タイトルを聴いて「あの曲ネ!」と思い浮かべる事ができます。
ミステリアスな雰囲気の曲
「二人静」は、今までの中森明菜さんの作品にはなかった雰囲気を感じます。80年代後半になると、英文字タイトルの作品を多く発表されるようになりますが、この作品では和楽器が用いられているようで、今まで聴いた事が無い日本的な響きを得られる作品となっているからかも知れません。
歌詞では愛の深さを、「殺めたいほど」と表現している点も独特な心理描写がされていると感じます。
映画『天河伝説殺人事件』は視聴したことはありませんが、おそらく映画の登場人物や舞台をモチーフに描かれているのだろう、と感じさせてくれます。
冒頭の「愛しすぎた」というセリフも、何をした理由を告白しているのかは語られていません。
「難破船」のように作品の世界に浸れるようなバラードではなく、テンポは早めの作品です。主人公がどういった心境か、何をした場面を描いているのかが、歌詞からは読み取れないまま、曲が進みますので、聴き手をハラハラさせる演出がされていると感じます。
楽曲分析
「二人静」はCマイナー(ハ短調)です。音階は自然的短音階ですが、部分的に6つ目の音を省いたフレーズがあり、26抜き短音階に似た響きを感じるところもあります。耳に残りやすい特徴を持っています。
楽器や歌詞などで妖しさが演出されていますが、サビのメロディで第5音に♯が付くフレーズが印象的です。
楽譜を見ると、この部分はドッペルドミナントのコード進行になっています。不安定な響きが連続する箇所で、作品の世界に合っているメロディと感じます。
また、歌唱力のある方の作品には珍しく、1オクターブ内でメロディが作られています。この点では、中森明菜さんの歌唱力を生かすというより、曲が主役である事を前提に作品が製作されている印象を受けます。
製作にあたって、「中森明菜さんの低音のお声で歌っていただければ、このミステリアスな作品の雰囲気をさらに演出できる。」と企画されて、中森明菜さんに歌唱していただくようにアプローチされたのかも知れません。
「天河伝説殺人事件」というタイトルで、作曲された関口誠人さんもCDを出されておりますが、中森明菜さんの「二人静」の方が人気となっています。
曲情報
発売元:ワーナー・パイオニア株式会社
品番:WPDL-4229
A面
「二人静-『天河伝説殺人事件』より」
作詞:松本隆
作曲:関口誠人
編曲:井上鑑
B面
「忘れて…」
作詞:中森明菜
作曲:羽佐間健二
編曲:小野沢篤
参考資料
「二人静-『天河伝説殺人事件』より」CDジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲大全集7』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」