流行時期(いつ流行った?)
香西かおりさんの「無言坂」は、平成5年(1993年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、3月中旬に発売されたCDは、3月下旬に初登場した時に最高順位を記録しています。
演歌歌手の作品ですが、ポップス歌手と同様に、発売されてすぐに支持されているため、香西かおりさんの人気はかなり高かったと推測されます。
同時期に流行った曲(平成5年3月下旬)
B'zさんの「愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない」が首位となっています。
CHAGE&ASKAさんの「YAH YAH YAH」、THE虎舞竜さんの「ロード」と、平成5年を代表するヒット曲が上位にランクインしています。
平成5年レコード大賞受賞曲
「無言坂」は平成5年のレコード大賞を受賞しています。しかし、ポップスの作品でより多くの人たちの支持を集めた作品が多いのに、なぜこの作品が大賞に選ばれたのか?明確な理由は分かりません。
80年代中頃から、レコード会社は若者向けのポップスの製作にますます注力するようになります。その影響でヒット曲の中で、ポップスが占める比率が高くなり、大人向けの歌謡曲作品が激減してしまいます。
その実態を考慮してか、平成2年~4年の3年間は、レコード大賞が、“ロック・ポップス部門”と“演歌・歌謡曲部門”の2曲で選ばれる事になりました。
(各部門で1曲を選考するのは良い企画と思いますが、最終的にレコード大賞を1曲に絞り込まなかった理由は謎です…(^_^;A。)
平成5年からは元通りレコード大賞は1曲のみになりますが、その年の大賞に演歌・歌謡曲系の「無言坂」が選ばれています。
玉置浩二さん作曲の演歌
「無言坂」は安全地帯のボーカル、玉置浩二さんが作曲されています。ポップスの方が演歌歌手に作品を提供するというと、よしだたくろうさんが作曲された森進一さんの「襟裳岬」(昭和49年)が思い浮かびます。
もしかしたら、「アリスの堀内孝雄さんも歌謡曲に転向されて人気があるし、ポップスのミュージシャンに香西かおりさんの新曲を作ってもらうのはどうだろう?」と、話題を集めるためにレコード会社が企画したのかも知れません。
作曲をした経験はありませんが、「無言坂」を聴いていると異なるジャンルの音楽表現してきたアーティストが真摯に向き合って作品を製作されていると感じます。
「無言坂」は、「雨酒場」(平成元年)や「流恋草」(平成3年)に通じる雰囲気を持っていると感じますので、玉置浩二さんがご自身の音楽表現を控えめにして、主役の香西かおりさんのイメージを損なわないように楽曲を作られていると感じます。
そのためか「襟裳岬」のように、曲を聴いただけで“フォークと演歌が融合した”というような意外性は感じられません。
楽曲分析
「無言坂」はCマイナー(ハ短調)です。
演歌系の作品で用いられる47抜き短音階ではなく、自然的短音階のメロディです。イントロやBメロ、サビの部分では、47抜き長音階の音を用いた26抜き短音階的なメロディとなっています。
26抜き短音階は「真赤な太陽」や「恋の季節」等、割と様々なヒット曲で用いられており、覚えやすさを備えたメロディの作品が多いです。
歌謡曲らしさを演出するために、玉置浩二さんが意識して用いられたのかも知れません。
曲情報
発売:ポリドール株式会社
品番:PODH-1138
A面
「無言坂」
作詞:市川睦月
作曲:玉置浩二
編曲:川村栄二
B面
「あゝ人恋し」
作詞:市川睦月
作曲:玉置浩二
編曲:川村栄二
参考資料
「無言坂」CDジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲大全集7』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」