流行時期(いつ流行った?)
長山洋子さんの「じょんから女節」は、平成15年(2003年)にヒットしました。
オリコンランキングではベストテン入りしていません。6月末に発売されたCDシングルは、翌月下旬に最高順位を記録しています。
ヒットチャート的に、平成はかなり演歌不遇の時代でしたね…(^^;A。
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 JVCKENWOOD Victor Entertainment Corp.; Muserk Rights Management、その他 1 件の楽曲著作権管理団体
…プロモーションビデオが製作されていたようです。演歌歌手の作品ではあまり見かけませんので驚きました。
情熱的な青森の音楽
津軽三味線がメインの楽器となるこの作品は、テンポが早く、情熱的な印象があります。感情の激しさを表すような演奏法は、日本発祥の楽器にしては珍しい技術と感じます。
私はまだ、津軽三味線の特徴を説明できるほど理解はできていません。しかし、小唄の伴奏で聴こえる音色でもなければ、のどかで暖かみのある沖縄の三線とも違う事は分かります。
津軽三味線の演奏は、歌詞で描かれる主人公の燃えるように熱い心情と呼応しており、作品の個性が充分引き出されていると感じます。
…雪国の青森県で、弦を強く弾くような津軽三味線という熱い感情を連想させる音楽表現が生まれた事はとても興味深いです。
豪快さは、テレビで報道されるねぶた祭の山車を見ても感じます。青森県は、内に秘めた感情を表現する音楽や祭りが支持されてきたお土地柄なのだと感じています。
カラオケでも難易度が高い曲?
「じょんから女節」は、高音で長く伸びる声で始まるところが印象に残ります。
”高音を長く伸ばす歌唱法”は、民謡歌手の作品でよく耳にする印象があります。
流行歌手では、三橋美智也さんの「哀愁列車」(1956)や松村和子さんの「帰ってこいよ」(1980)などが思い浮かびます。
現在では、男性ボーカルのバラード作品で、声量よりも声の高さが印象に残る作品が数多く存在しています。
今も昔も、音程の高い歌声は聴き手の耳を惹きつける要素を持っているのかも知れませんね。
"じょんから"と言えば、青森県民謡「津軽じょんから節」を連想しますが、レコード音楽では、細川たかしさんの「望郷じょんから」が思い浮かびます。
「じょんから女節」も「望郷じょんから」も、NHKのど自慢では今でも人気曲のようで、よく耳にする機会があります。
この2作品は共通して、歌い出しで合否が判断されるような印象があります。おそらくカラオケでは、かなり難易度が高い作品と感じます。
伴奏なしで始まる「望郷じょんから」に対して、「じょんから女節」は民謡的な歌い出しながら、続く歌唱では演歌特有の節回しがきちんと存在しています。
テンポが早い作品ですが、歌唱を聴けば“演歌である”と認識できる作品です。
平成演歌の異色ヒット
平成は演歌の人気が下火となった時代です。レコード大賞がポップスと演歌・歌謡曲の2部門に分かれた時代もありました。
私は民謡=日本の民族音楽で、演歌=1960年代発祥の新しい音楽表現と解釈しています。令和以降、演歌がどのような過程をたどって行くのかを楽しみにしています。
「じょんから女節」は、平成の時代に合った演歌と感じます。ポップスに負けないアップテンポな歌唱には、新しさを感じます。リズム感が秀逸です。
聴いていて歌謡曲と感じない部分は、ポップス出身の長山洋子さんでしか表現できない音楽と感じます。
のど自慢で「じょんから女節」を披露される方には、若い世代が多い印象があります。
最近はベテラン演歌歌手の方々が、フォークソング調やラテン調と、演歌から一線を置いた作品を歌われる事があります。せっかく培ってきたものから離れてしまう淋しさを感じています。
今後、「じょんから女節」のように、演歌の音楽表現を軸にして新たなサウンドを取り入れた作品が登場する事を期待しています。
曲情報
発売元:ビクターエンタテイメント株式会社
品番:VICL-35496
トラック1
「じょんから女節」
作詩:鈴木紀代
作曲:西つよし
編曲:伊戸のりお
収録時間:4分36秒
トラック2
「たまゆら」
作詩:鈴木紀代
作曲:円広志
編曲:伊戸のりお
収録時間:5分57秒
NHK「コメディーお江戸でござる」オリジナルソング
参考資料
「じょんから女節」CDジャケット
『日本民謡選集』ドレミ楽譜出版社
『「演歌」のススメ』藍川由美 文春新書
『全音歌謡曲全集10』全音楽譜出版社
「you大樹」オリコン