流行時期(いつ流行った?)
ヒルクライム(Hilcryme)さんの「春夏秋冬」は、平成21年(2009年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、9月末に発売されたCDは、10月中旬から11月中旬にかけてヒットしています。
また、日本レコード協会の有料音楽配信認定ではミリオンセラーとなっています。下図のような流行の推移をしています。
認定日付 |
着うた® (8/26配信) |
着うたフル® (9/16配信) |
PC配信(シングル) (9/30配信) |
平成21年09月 | - | 10万DL | - |
平成21年10月 | - | 50万ⅮL | - |
平成21年11月 | 50万DL | 75万DL | - |
平成21年12月 | 75万DL | 100万DL | 10万DL |
平成22年01月 | 100万DL | - | - |
平成22年02月 | - | - | - |
平成22年03月 | - | - | - |
平成22年04月 | - | - | 25万DL |
音楽配信は2000年代中頃から登場し始めましたが、残念ながら、詳細な流行を記録した資料は他に見当たりません(>_<)。
年末年始に100万DL(ダウンロード)を達成しています。10、11月にダウンロード数が伸びていますので、音楽配信もCDと同じ時期にヒットしていたと推測されます。
同時期に流行った曲(平成21年10、11月)
いきものがかりさんの「YELL/じょいふる」がヒットしています。その他には、ヒットしている作品は見当たりません。
音楽配信の台頭で、CD売上だけでは流行が読めなくなりつつある時代と感じます…(^_^;A。
Hilcrhyme - 「春夏秋冬」〜LIVE Blu-ray/DVD『Hilcrhyme LIVE 2018「One Man」』より〜
男性側の想いが綴られたラップ詞
この作品で最も印象に残るのは、結婚をする女性に向けて伝えようとする男性の深い愛の言葉です。
歌詞では登場人物の行動が描写されていませんので、心のうちで想っているのか、実際に面と向かって口にしているのかは分かりません。
しかし様々な言葉を用いて想いを伝えようとする歌詞は、ヒップホップでなければ表現できない心情が描かれていると感じます。
演歌、フォーク、ロック等、従来のジャンルでは表現できなかった心理描写です。
ラップ詞は言葉が多く詰め込まれるため、楽曲の世界観に入り込むと、聴き手に深い共感を与える事が出来るのが特徴と感じます。
「春夏秋冬」がヒットした時期は、男性側のあふれる想いを綴ったラップ詞のヒット曲が多く登場しています。
女性に向けてたくさんの言葉で想いを伝えようとする歌詞というと、厳密にはラップではないのかも知れませんが、三木道山さんの「Lifetime Respect」(平成13年)が先駆けと考えられます。
この表現は、「春夏秋冬」がヒットした前後の時期に多く登場しているように感じます。
ケツメイシさんの「さくら」(平成17年)、SEAMOさんの「マタアイマショウ」(平成18年)、音楽配信では、ソナーポケットさんの「好きだよ。~100回の後悔~」(平成23年)などがヒットしています。
それまでのヒップホップのヒット曲は、海外の音楽性をそのまま取り入れたDragon AshさんやMINMIさん、韻を踏むことでユーモア性を備えた歌詞も作られるORANGE RANGEさんやケツメイシさんの作品が人気となっています。
どうもヒットした曲で考えると、多弁なラップ詞は男性の心理を表現するのに適しているようです…(^_^;)。普段は口に出来ず申し訳ありません、という感じでしょうか…。
16分音符の3連符
「春夏秋冬」の楽譜を見て驚いたのが、16分音符が3連符や6連符になっている部分がある事です。演奏技術の無い私は、16分音符が出てくる時点でお手上げなので、それをさらに細かく分けられた楽譜に驚きました。
ただ、3連符というのは歌謡曲で用いられやすい3連(スローロック、ロッカバラード)の性質を備えていると感じられるため、この曲の個性であると感じます。
おそらく他のラップ詞の作品ではこういった楽譜にはなっていないのではないか?と感じます。
メロディに歌詞を乗せたときに、「歌詞が収まりきらないから、ここを3連符にしよう。」となったのかも知れませんし、「レコード会社から『演奏時間が5分以内』って言われているから、このあたりを縮めて3連符にしよう。」となったのかも知れません。
どういう経緯で楽曲製作が進んだのかは分かりませんが、楽譜を見て「珍しいなぁ~。」と感じました。
楽曲分析
「春夏秋冬」はGメジャー(ト長調)です。長音階の作品ですが、聴いた印象では短調の哀しい響きが印象に残ります。
歌い出しは明るいのですが、サビに向かうにつれて、もの悲しさを帯びてきます。
タイトルが1年の季節、そのあいだに最愛の人と過ごした日々を振り返る視点の作品ですので、彼女と付き合っている期間に、悲しい気持にさせてしまった時の事も思い出しているようです。
単に、これからの人生を共に歩む事を喜んでいる心理では無いため、マイナーな響きが用いられていると思われます。
…コード進行は勉強不足で、マイナーに変化する箇所は良く分かりません。サビの直前が、並行調のV7→Ⅰの進行になっているからでしょうか?
しかし明るさと悲しさを感じるサウンドは、歌詞で描かれる悲喜こもごもの感情と結びついているように感じます。
従来の作品では、どれかの季節の出来事を切り取って曲にするしかできなかったかもしれませんが、ラップ詞のおかげで、長年共にして積み重ねられた想いが1つの曲で表現しきれていると感じる作品です。
曲情報
発売・販売元:ユニバーサルミュージック合同会社
品番:UPCH-5623
A面
「春夏秋冬」
作詞:TOC
作曲:DJ KATSU
編曲:ヒルクライム・EQ
弦編曲:今野均
B面
「♪メリーゴーラン♪」
作詞:TOC
作曲:DJ KATSU
編曲:ヒルクライム
参考資料
「春夏秋冬」CDジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲大全集10』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」