流行時期(いつ流行った?)
池田聡さんの「モノクローム・ヴィーナス」は、昭和61年(1986年)にヒットしました。
オリコンランキングによると、8月はじめに発売されたレコードは、10月に入ってからベスト20にランクインし、11月中旬にベストテン入りを果たしています。
注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 TEICHIKU ENTERTAINMENT(コンチネンタルスター の代理)
同時期に流行った曲(昭和61年10月、11月)
昭和61年はおニャン子クラブさんがブームとなった年です。
首位作品が渡辺満里奈さんや国生さゆりさん、新田恵利さんと会員の方の作品で占められた時期ですが、石井明美さんの「CHA-CHA-CHA」や、Kuwata Bandさんの「ONE DAY」が首位を獲得しています。
中森明菜さんの「Fin」や、チェッカーズさんの「NANA」、荻野目洋子さんの「六本木純情派」などがヒットしています。
1980年代中頃の洋楽日本語カバー
「モノクローム・ヴィーナス」がヒットした昭和61年は、女性歌手のあいだで洋楽曲の日本語カバー作品が人気となった年でもあります。
荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」や椎名恵さんの「今夜はANGEL」、長山洋子さんの「ヴィーナス」がヒットしました。
最もヒットしたのは、石井明美さんの「CHA-CHA-CHA」です。
この流行に共通している点として、“アメリカではあまりヒットしていない作品をカバーしている事”も気になります。
「わざわざ、そういった作品を選ぶ事も無いのに。」と感じますが、おそらく当時のアメリカの音楽業界が売り出して人気となっていた作品と、日本が求めるカバー向けの作品の方向性が一致していなかったのだと推測されます。
その結果、「ヨーロッパ方面の方がメロディも良く、日本語でカバーしやすい作品が多いじゃないか。こっちにしよう。」と判断されたのかも知れません。
ヨーロッパのポップスを意識した曲
「モノクローム・ヴィーナス」のレコードには「スズキ アルトCFイメージソング」と印字されていますが、当時、車のCMソングとしてテレビで流れて人気を得たようです。
そういえば1番では、車がキーワードとして描かれているように感じます。おそらく、この部分がCMで放送されていたのだと思います。
CMソングなので、当時の流行を意識して作曲された印象も受けます。
「モノクローム・ヴィーナス」は洋楽のカバー曲ではなく、日本人が作曲された作品ですが、先ほど挙げた当時の流行であるユーロテイストのサウンドを意識して製作されている印象を受けます。
ユーロ・ビートやユーロ・ポップスという言葉が当時誕生したのかどうかは分かりませんが、ヨーロッパ方面の音楽が人気である事を意識してか、珍しくフランス語のセリフが間奏に吹き込まれています。
おそらく日本で作られた曲でフランス語のセリフが入っているヒット曲は、この作品しかないのではないか?と思います。
「モノクローム・ヴィーナス」はCMソングとして企画されたのだと思いますが、その段階で、「男性が歌うヨーロッパ風ポップスがあってもいいんじゃないか?」という提案があり、そのおかげでこの作品が誕生する事になったのだと感じます。
楽曲分析
「モノクローム・ヴィーナス」はAマイナー(イ短調)です。ヨーロッパの作品は分かりやすさを備えている曲が多いため、#や♭が付かない最もシンプルな調を選ばれたのかも知れません。メロディにも#や♭は付きません。
そのままではシンプルすぎると感じられたのか、終盤は半音上がって、B♭マイナー(変ロ短調)になります。
この作品がユーロポップスと感じる理由は明確に指摘できません。しかし気になるのは、イ短調なのに、調の軸となる主音のラの音がなかなか出て来ないメロディになっている点です。
サビのメロディですが、それが理由で調性があいまいになってしまうのか、聴いていて浮遊している印象というか、落ち着かない感じを受けます。
イントロのピアノも印象に残りますが、ピアノが終わってから始まるシンセサイザーの重低音も印象に残ります。色々な点で当時の流行を感じる事が出来る作品です。
曲情報
発売元:テイチク株式会社
レーベル:コンチネンタルレコード
品番:CE-69
A面
「モノクローム・ヴィーナス」
作詞:松本一起
作曲:佐藤健
編曲:清水信之
演奏時間:3分48秒
B面
「砂丘~ハイヌーン・ロマンス~」
作詞:SHOW
作曲:梅垣達志
編曲:清水信之
演奏時間:4分36秒
参考資料
「モノクローム・ヴィーナス」レコードジャケット
「you大樹」オリコン
『全音歌謡曲大全集7』全音楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」