流行時期(いつ流行った?)
ナット・キング・コール(Nat "King" Cole)さんの「キサス・キサス・キサス」(QUIZAS, QUIZAS, QUIZAS)は、昭和34年(1959年)にヒットしました。
『ダンスと音楽』のランキング(下表)によると、昭和34年1月に発売されたレコードはロングセラーとなっています。
4月から翌年2月にかけて、1年近くの間、ベストテンにランクインしています。
集計日付 | 順位 |
昭和34年2月 | 11位 |
昭和34年3月 | 12位 |
昭和34年4月 | 5位 |
昭和34年5月 | 7位 |
昭和34年6月 | 3位 |
昭和34年7月 | 2位 |
昭和34年8月 | 4位 |
昭和34年9月 | 2位 |
昭和34年10月 | 4位 |
昭和34年11月 | 7位 |
昭和34年12月 | 9位 |
昭和35年1月 | 8位 |
昭和35年2月 | 10位 |
昭和35年3月 | 19位 |
6月に3位、7月に2位となっていますので、最もヒットしたのはこの時期かも知れません。
レコードジャケットの解説では、「キング」をわざわざ「“キング”」と表現したり、「今までのナット・コール・ファンは」と記載されていますので、昔はナット・コールさんと呼ばれていたようです。
いつから“キング”が付くようになったのかは分かりません。
Quizás, quizás, quizás - Nat King Cole
同時期に流行った曲(昭和34年6月、7月)
ピーナッツ・ハッコーとボブ・クロスビーのボブ・キャッツさんの「プティット・フルール(小さな花)」が首位となっています。
また、リカルド・サントス楽団さんの盤も人気となっています。
この曲は日本で大人気だったらしく、ザ・ピーナッツさんが「可愛い花」というタイトルで日本語カバーした作品でデビューされています。
ディーン・マーティンさんの「ライフルと愛馬」やニール・セダカさんの「恋の日記」がヒットしています。
スペイン語のヒット曲
スペイン語で歌われる「キサス・キサス・キサス」は、当時の新曲ではありません。歌詞カードの解説には「ラテンの名曲といわれ、今まで多くの歌手によって歌われています」と記載されています。
日本はもちろん、アメリカでもスペイン語の曲がヒットする事は稀です。しかし、ヒットするときは爆発的な人気を得る、という不思議な特徴があります。
「キサス・キサス・キサス」も1年ちかくヒットしていますので、当時ものすごく流行ったのだろうと推測できます。
日本では昭和57、8年のフリオ・イグレシアスさんの「黒い瞳のナタリー」が最後かも知れませんが、アメリカでは「恋のマカレナ」(1996)や、「デスパシート」(2017)と、その年を代表する規模のヒット曲が生まれています。
文化の違う人たちが聴いても「良い曲だね!」と感じさせる楽曲を作れるのはすごい事だと感じます。
楽曲分析
「キサス・キサス・キサス」はDマイナー(ニ短調)です。サビでは同主調のDメジャー(ニ長調)に転調します。
コールさんの歌唱も印象的で、歌い始めのAメロでは、低音が印象に残ります。転調するBメロでは、突然高音のメロディに変化してリズムも難しくなります。そして、再び低音のAメロに戻ります。
ダイナミックな変化を感じる動きですが、巧みに歌いこなされていると感じます。
イントロの部分は、Aメロよりも2度低いCマイナー(ハ短調)のようです。耳に残りやすい箇所をあえて変化させて、聴き手に「なんとなく不思議な感じ。」という印象を与えているようです。
「キサス・キサス・キサス」は旋律的短音階で作られていますが、音楽的な変化を付けやすい(転調しやすい)音階かも知れません。
サビ後のAメロで聴こえてくるピアノの音色も印象的で、美しいメロディが印象に残る作品です。
曲情報
発売元:東芝音楽工業株式会社
レーベル:キャピトルレコード
品番:7P-115
A面
「テキエロ・ディヒステ」
原題:TE QUIERO, DIJISTE(Magic Is The Moonlight)
演奏時間:2分48秒
B面
「キサス・キサス・キサス」
原題:QUIZAS, QUIZAS, QUIZAS(Perhaps, Perhaps, Perhaps)
演奏時間:2分43秒
参考資料
「キサス・キサス・キサス」レコードジャケット
『洋楽シングルカタログ 東芝編』オールデイーズ
『ダンスと音楽』ダンスと音楽社
『ラテン&フォルクローレ名曲全集』ドレミ楽譜出版社
「バンドプロデューサー5」