ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「ハイスクールララバイ」イモ欽トリオ(昭和56年)

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流行時期(いつ流行った?)

  イモ欽トリオさんの「ハイスクールララバイ」は、昭和56年(1981年)にヒットしました。

 

 オリコンランキングによると、8月初旬に発売されたレコードは、8月中旬から11月中旬にかけてヒットしました。

 3ヶ月間ヒットしていますので、当時かなり流行した作品と感じます。

 

 


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同時期に流行った曲(昭和56年8月中旬~11月中旬)

 この作品は首位を獲得していますが、前は松田聖子さんの「白いパラソル」、後は近藤真彦さんの「ギンギラギンにさりげなく」が首位となっています。

 田原俊彦さんの「悲しみ2ヤング」は、この作品に阻まれ2位止まりとなっています。

 

 この時期はアイドルの作品が目立ちます。石川ひとみさんの「まちぶせ」や、伊藤つかささんの「少女人形」杉田かおるさんの「鳥の詩」がヒットしています。

 

 他には、堀江淳さんの「メモリーグラス」松任谷由実さんの「守ってあげたい」西田敏行さんの「もしもピアノが弾けたなら」クリエーションさんの「ロンリー・ハート」などがヒットしてます。

 

 演歌・歌謡曲系の作品では山本譲二さんの「みちのくひとり旅」がヒットしています。

 

 

初めてのバラエティ番組から生まれたヒット曲

 人気テレビ番組から曲がヒットする事があります。テレビが家庭に広まった1960年代からその傾向が見受けられます。

 

 フランキー・レインさんの「ローハイド」(昭和35年)やビクター・オーケストラさんの「七人の刑事」(昭和37年)等、主に、ドラマ主題歌が人気となる事がありました。

 

 テレビの存在感が増すにつれて、1970年代後半から、番組内の企画で曲が製作されるようになりました。

 昭和51年末に発売された「デンセンマンの電線音頭」は、番組内だけの流行のためか、歌は広まったものの、レコードは売れませんでした。

 

 「ハイスクールララバイ」が、史上初の番組企画からヒットした作品と考えられます。

 

パロディ満載の作品

 「ハイスクールララバイ」のレコードジャケットには、『フジTV系 欽ドン!良い子悪い子普通の子』という番組タイトルが印字されています。欽は、萩本欽一さんの欽です。当時、かなり人気だった番組のようです。

 

 この作品が製作された1980年代は、テレビが発信する情報が多くの人に影響を与え始めた時代で、ヒットしたのは、当時の流行が色々詰め込まれた作品だったからではないか、と感じます。

 

 歌手のグループ名であるイモ欽トリオは、当時人気だったたのきんトリオのパロディです。田原俊彦さんの「た」、野村義男さんの「の」、近藤真彦さんの「きん」と、3人の苗字の漢字をつなぎ合わせた愛称でした。

 

 命名したのは萩本欽一さんと思いますが、「バラエティで人気だからといって、畑の違う人間が人気アイドルの呼称を真似るのはおこがましい。…イモならいいか。」とお考えになられたようで、人気にあやかったグループ名にされたと推測されます。

 

 

 また、作詞・作曲は、松本隆さん、細野晴臣さんに依頼されています。作詞を担当された松本隆さんは、松田聖子さんや近藤真彦さんの作品を作詞されていた方で、細野晴臣さんは当時ブームとなっていたYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)さんのリーダーです。

 作詞・作曲ともに、時代の流行を生み出していた方々が担当されています。

 

 バラエティで人気の方々が歌った作品がヒットしたのも、レコードの製作陣が流行を作っていた方々が製作されたからだと感じます。

 

  作るからにはキチンとしたものを、という取り組みの姿勢を感じます。 

 

当時の流行って?

 歌詞面で考えると「ハイスクールララバイ」という英語のカタカナ表記のタイトルが、当時の流行を物語っているように感じます。

 

 80年代はレコード音楽が大人ではなく、若い世代のものにますます偏っていった時代です。そのため歌の主人公が十代の若者であろうと思われる作品がたくさん登場しました。ちょうど高校生くらいの、ハイティーン世代が目立ちます。イモ欽トリオさんも高校生の設定のようです。

 

 この作品の主人公は思春期の男の子ですが、片想いしている女の子に厳しいビンタを浴びせられたり、靴箱に忍ばせたラブレターを破られたりします。

   アイドルの作品ではないためか、松本隆さんは、主人公がさんざん冷たくあしらわれる姿を描かれています。

 わずかに女の子が好意を寄せていると感じられる描写もありますが、タイミングが悪く、結局、真意が分からないまま終わります。

 

 

 楽曲面では、YMOさんのコンピューターミュージックというのでしょうか、打ち込みで作られたような音色が印象に残ります。「ライディーン」のようなイントロが始まり、メンバーのあたかも演奏しているかのような振り付けが印象的です。

 楽譜には♪=160と記載されていますが、当時のヒット曲の中でも、かなりテンポの速い作品と思われます。

 

 

 ララバイと題するだけあって、哀愁のある短音階のメロディです。歌い出しのAメロ部分では6つめと7つめの音が用いられていません。

 用いられる音が少ない分、聴き手はメロディを覚えやすいですが、4つめの音も極力使用しないような印象を受けます。もしかしたら細野晴臣さんは、演歌特有のヨナ抜き短音階を意識して作曲されたのかな?とも感じます。

 

 楽曲を製作する側も「面白い企画だね!」と感じたのか、色々と遊び心が詰め込まれていると感じる作品です。当時を知らなくても、今聴いても楽しいと感じる曲です。

 

 

曲情報

 発売元:フォーライフレコード

 品番:7K-30

 

 A面

  「ハイスクールララバイ」

  作詞:松本隆

  作曲・編曲:細野晴臣

  演奏時間:3分36秒

 

 B面

  「欽ドン良い子悪い子普通の子のテーマ」

  作詞:竹島達修

  作曲・編曲:あかのたちお

  演奏時間:3分56秒

 

 

 Director:中村たつひこ

 Recording Engineer:石塚良一(SIDE・A)、掛潤一(SIDE・B)

 Photographer:松本直

 

参考資料

 「ハイスクールララバイ」レコードジャケット

 「you大樹」オリコン

 『全音歌謡曲大全集5』全音楽譜出版社

 『歌謡曲の構造』小泉文夫 平凡社ライブラリー