ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。現在は明治~1950年代をけんきゅうちゅう。

「愛は傷つきやすく」ヒデとロザンナ(昭和45年)

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流行時期(いつ流行った?)

 ヒデとロザンナさんの「愛は傷つきやすく」は、昭和45年(1970年)にヒットしました。

 

 オリコンチャートによると、5月末に発売されたレコードは、7月末から10月中旬にかけてヒットしました。

 8月中はずっと首位となっておりますので、最も流行したのは8月のようです。

 

 大阪・吹田で日本万国博覧会が開催されていた時期にヒットしていたと考えられます。

 

 

同時期に流行った曲(昭和45年7月末~10月中旬)

  オリコンランキングで首位を獲得した作品ですが、前は、藤圭子さんの「圭子の夢は夜ひらく」、後は、由紀さおりさんの「手紙」が首位となっています。

 

  この年は、藤圭子さんが大人気となった年で、「命預けます」もヒットしています。

 

 歌謡曲系の歌手が人気の時代で、内山田洋とクールファイブさんの「噂の女」や、森進一さんの「波止場女のブルース」がヒットしています。

 

 他には、岸洋子さんの「希望」日吉ミミさんの「男と女のお話」がヒットしています。

 

 洋楽では、ザ・オリジナル・キャストさんの「ミスター・マンディ」サイモンとガーファンクルさんの「コンドルは飛んで行く」がヒットしています。

 

 


ヒデとロザンナ - 愛は傷つきやすく

 

 

独創的な世界観

 歌い出しの“自由に愛する”というフレーズが印象に残りますが、日本人とイタリア人のデュエットグループのヒデとロザンナさんでしか表現できない世界観を持っている作品と感じます。

 

 私は、「好きな人に対して精一杯の愛情表現をして、どうして自分自身が傷つくのだろう?」と、歌詞の意味が分からずじまいでいます。それは、“2人を取り巻く環境がどのようなものであったのか?”が直接描かれていないからだと考えています。

 

 どうやら、主人公の二人は世の中の価値観に背くような恋愛をしているようで、暗に心中を示すような考えも抱くほど思い詰めている場面で、「死んでしまっては意味がないじゃないか。」と、深い愛でお互いを思いやる愛情が描かれています。

 

 男性の指がふるえた理由は分かりません。本当に恋人の首に手を当て、二人して死ぬ覚悟だったのかも知れません。

 

 レコードジャケットの二人のファッションも独創的です。外国人とのデュエットグループだから、という理由ではなく、当時の若者のあいだで流行?だった、ヒッピーやフーテンのファッションを意識していると推測されます。

 

 自分自身の感情を第一に優先して、周りの人たち、親や友人の意見に耳を傾けない若者が主人公として、歌詞が作られたように感じます。

 

 

ハッピーエンドの展開

 この作品は、ドラマチックな印象を受ける作品です。どういう経緯があったのかが描かれていませんが、最終的に二人は恋人として認められるようになったと感じる展開になるからです。

 

 周りも「…まぁ、二人がそこまで愛し合っているなら。」と理解してもらえたのかも知れません。

 

 

 ハッピーな印象を受けるのは、曲の後半で長調に転調しているからです。

 

 

 歌い出しのAメロは、Eマイナー(ホ短調)です。4つめのラと6つめのドが使われていません。聴き手の耳に残りやすいように5つの音でメロディを考えられたのだと思います。

 

 サビでは、同主調のEメジャー(ホ長調)に転調します。突然、長調に変わるため、曲調が明るくなります。そして、そのまま歌唱が終始し、続く金管楽器のソロ間奏のあいだも継続してホ長調で演奏されます。

 

 ちなみに、サビでも4つめのラが使われていませんので、作曲者は47抜き長音階や26抜き短音階を意識したメロディで作曲されたと考えられます。

 

 

 歌詞で肝心な描写がされていない点が聴き手の想像力を刺激しますが、その不足している部分を音楽表現でカバーしているような印象を受けます。

 

 どちらかと言うと、メロディの方が印象に残る作品です。

 

 

 私が、最も印象に残っているのは、長調に転調した後の、ロザンナさんの“優しい言葉”の箇所です。

 この部分は、演歌・歌謡曲等でよくみられる、拍が追加されている箇所です。

 

 ずっと4分の4拍子で進行していたのに、この部分に2拍追加されています。足さなければいけないくらい大切な部分なのだろう、と感じます。

 

 

 楽曲分析

 出だしのロザンナさんの、か弱い声での早口な歌唱が印象に残ります。もしかしたら、同年のヒット曲、森山加代子さんの「白い蝶のサンバ」の歌い出しを参考になさっているのかも知れません。

 

 

 この作品で唯一疑問なのは、イントロのギターの音色のボリュームが小さすぎるように感じる事です(>_<)。歌い出しのロザンナさんのボーカルよりも弱い音になるように調整されたのでしょうか。

 

 

曲情報

 発売元:日本コロムビア株式会社

 品番:P-93

 

 A面

  「愛は傷つきやすく」

  英題:LOVE IS FREE

  作詞:橋本淳

  作曲:中村泰士

  編曲:森岡賢一郎

  演奏時間:3分16秒

 

 B面

  「涙をうばって」

  英題:TANGO AMMORE

  作詞:橋本淳

  作曲:中村泰士

  編曲:森岡賢一郎

  演奏時間:3分

 

 

参考資料

 「愛は傷つきやすく」レコードジャケット

 『you大樹』オリコン

 『全音歌謡曲全集19』全音楽譜出版社