ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「暖流」石川さゆり(昭和52年)

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流行時期(いつ流行った?)

 石川さゆりさんの「暖流」は、昭和52年(1977年)にヒットしました。

 

 オリコンのランキングではベストテンには入っていませんが、9月初めに発売され、翌10月に流行しました。

 

 

同時期に流行った作品(昭和52年10月)

 当時はピンク・レディーさんブームで、「ウォンテッド(指名手配)」が首位となっています。

 ピンク・レディーさんの人気に阻まれ、松崎しげるさんの「愛のメモリー」ジョー山中さんの「人間の証明」が2位止まりとなっています。

 

 秋だからか、アイドルの作品では、山口百恵さんの「秋桜」や、岩崎宏美さんの「思秋期」太田裕美さんの「九月の雨」がヒットしています。

 狩人さんの「コスモス街道」もヒットしています。

 

※Youtubeでは公式と判断できる「暖流」の動画はありませんでした…(>_<)。

 

「津軽海峡・冬景色」三部作の三作目

 紅白歌合戦で歌唱される機会の多い「津軽海峡・冬景色」がヒットしたのは、「暖流」がヒットした昭和52年です。

 石川さゆりさんの代表曲となっていますが、初めてのヒット曲でもあります。

 

 この作品がヒットしてから、次の「能登半島」もヒットし、続く「暖流」もヒットしています。

 徐々に流行の規模が小さくなりますが、3曲とも「津軽海峡・冬景色」で描かれた世界観の中で作られています。

 

 文学や映画など、表現の世界で“〇〇三部作”という言葉を見聞きする事がありますが、流行歌の世界でも存在します。

 

 なぜ3つなのかは分かりません。同じ表現を3回も続けると、受け手に「…またか。」と思われ、慣れが生じるからかも知れません。

 

 

 

支持された歌詞の世界

 3曲とも阿久悠(あく ゆう)さんの作詞です。そしてどの作品も、恋人に別れを告げられ、傷ついた女性が主人公です。

 

 このテーマで作られた歌はたくさんあると思いますが、阿久悠さんの歌詞は、別れによって受けた心の傷の深さや、それでも未練を引きずる主人公の心情の描写が優れていると感じます。

 3分ほどの歌ながら、ドラマや映画のような場面を、聴き手に思い描かせてくれる作品となっています。

 

 「津軽海峡・冬景色」では、別れに傷ついてひとり身を引く主人公、「能登半島」では、やっぱり未練を断ち切れず恋人のもとへ向かう主人公が描かれています。

 そして、「暖流」では、ついに恋人に会う事が出来たけれども、おそらく冷たくされた事で、あきらめの気持ちが芽生える主人公の姿が描かれています。

 

 3曲とも、土地も違えば季節も違うのですが、描かれる主人公は同一人物と感じます。そして、徐々に心情に変化が表れている事も読み取れます。

 

 この作品で完結すると感じるのは、「会って相手の気持ちを直接確認できて、あきらめようと思った。」という心理が歌われているからです。

 

 肝心の元彼との会話は歌詞に描かれていませんが、主人公が頭を下げて彼のもとを去るという事は、「もう、いい加減にしてくれ!」とでも冷たくあしらわれたのかも知れません。せっかく探して訪ねてきたのに。

 

 

3曲とも似た曲調

 「津軽海峡・冬景色」~「能登半島」~「暖流」は、全て短調であり、♪ツツツタツツ×2のスロー・ロック(ロッカバラード)のリズムです。

 このリズムは、なぜか歌謡曲で用いられる頻度が高いです。

 

 

 たいていのスローロックの歌謡曲は、ボーカルの歌唱力というか節回しを聴かせるためのメロディとして用いられていました。

 内山田洋とクールファイブさんのボーカル前川清さんが得意とするリズムです。

 

 しかし、石川さゆりさんの一連の作品では、歌手の節回しのために用いられているとは感じません。

 全ての音符に言葉が付いており、どちらかと言うと、長い歌詞を歌うために用いられていると感じます。

 8ビートなら♪は8個ですが、スローロックにすれば♪が12個になるので、その分、歌詞を多く歌えることになります。

 

 歌詞が先か、メロディが先の作品か分かりませんが、阿久悠さんの歌詞を見た三木たかしさんが、「…こんなに長い歌詞だと1曲じゃ収まらないなぁ…。スローロックにして音符を増やそうかな。」と着想されたのかも知れません。

 

 おかげで主人公の未練の気持ちを、たたみかけるように歌う名曲が誕生しました。

 

 もしかしたら、それでも収まりきらなかった心情が、続編や完結編の誕生につながったのかな?とも感じます。

 

 

 

楽曲分析

 私の「バンドプロデューサー5」の分析では、「暖流」はFマイナー(ヘ短調)です。

 

 何をもって演歌と定義するかが明確ではありませんが、どちらかと言うと歌謡曲に属する作品と思います。

 

 7つ目の音が少なめですが、演歌特有の47抜き短音階ではなく、ラシドレミファソラの自然的短音階でメロディが作られているからです。

 

 

曲情報

 発売元:日本コロムビア株式会社

 品番:AK-92

 A面

  「暖流」

  作詞:阿久悠

  作曲:三木たかし

  編曲:高田弘

  演奏時間:3分32秒

 

 B面

  「秋しんしん」

  作詞:阿久悠

  作曲:三木たかし

  編曲:高田弘

  演奏時間:3分45秒

 

参考資料

 「暖流」レコードジャケット

 「you大樹」オリコン

 『全音歌謡曲大全集5』全音楽譜出版社