ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

東京オリンピック公募当選歌「この日のために」三浦洸一、安西愛子、ビクター合唱団(昭和37年)

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流行時期(いつ流行った?)

  昭和39年に開催された東京オリンピック。その2年前に、東京オリンピックを題材にした作品が、当時のヒットチャートに記録されていました。三浦洸一さん、安西愛子さんの歌う「この日のために」です。

 “この日”とは、東京オリンピックが開催される日の事を指しています。

 

 『ミュージックマンスリー』に掲載されている歌謡曲部門の月間ランキングでは、昭和37年7月に18位を記録していました。

 

 東京オリンピックの歌といえば、三波春夫さんの「東京五輪音頭」しか語り継がれていませんが、ヒットチャートの記録があれば、こういった作品が存在した事を知る事が出来ます。当時の世の中の空気を感じる事が出来てうれしいです。

 

 「この日のために」は、1ヶ月だけのランクイン、しかも18位という低い順位ですので、当時はそれほどヒットしなかったのかも知れません。

 

 


www.youtube.com

注)三浦洸一 - トピックの動画

 

 

東京が開催地に決定したのは何年?

 東京オリンピックが開催される事が決定したのは3回あります。1回目は昭和11年(1936年)のIOC会議で、昭和15年(1940年)に開催される事が決まったのですが、戦時中だったため、開催は中止されました。

 

 参考URL(外務省 外交史料 Q&A 昭和戦前期)

  https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/qa/senzen_04.html

 

 戦後、昭和34年(1959年)のIOC総会で、昭和39年(1964年)の東京オリンピック開催が決定しました。

 

 そして、平成25年(2013年)に、令和2年(2020年)の東京オリンピック開催が決定しています。

 

 しかし、開催を迎えた2020年は、新型コロナウイルスの感染症が多くの国々で拡大しているため、3月24日に“1年程度”の延期が発表されました。

 3月30日に延期日程が発表され、2021年7月23日から開催する事になりました。

 

 

戦後に登場した国民歌

 1964東京オリンピック開催が決定してから3年後に「この日のために」が製作されています。開催時期があと2年と、間近に迫って来たところで、オリンピック気分を盛り上げようとして企画されたのかも知れません。

 

 「この日のために」のレコードには、国民歌というジャンルが印字されています。国民歌というのは、民間企業が利益を得るために製作する流行歌とは異なり、公的機関が企画する歌の事です。

 

 どちらにせよ結局レコード化して発売していますので、流行歌と同じと言えますが、あえて国民歌と記載しています。明記されていませんが、売上の一部がオリンピック関連の団体に寄付されるようなチャリティー企画だったのかも知れません。

 

 国民歌というと、戦時中に製作された作品が多いため、「愛国行進曲」(昭和12年)や「隣組」(昭和15年)が思い浮かびます。

 しかし、戦後にはスポーツを題材にした作品が目立つようになります。

 

 みなさんが学生時代に学校で習った「ラジオ体操第1」も、昭和26年に制定された戦後の国民歌です。

 

 戦後の国民歌は青少年の健全な育成を基盤にして制作されているように感じます。

 

曲調が戦中の国民歌謡に似ている

 「この日のために」が、東京オリンピックを題材にしながらも、当時それほど支持を集められなかった事、後世に語り継がれなかった原因は、曲調に理由があると考えています。

 

 おそらく歌詞は公募で選ばれたものの、作曲はプロが行っています。そして、そのメロディは“公的な音楽はこういう感じである”という発想で作られている印象を受けます。

 

 それは、若者の歌だから明るい長音階のメロディ、男女で歌っているものの男性が1番・女性が2番と別々に歌う編曲などから感じられます。

 

 しかし最も大きな理由は、歌手の個性が失われている点かも知れません。流行歌手の三浦洸一さんが歌っておられますが、失礼ながら誰が歌っても同じではないか?と感じるくらい歌唱に個性が感じられません。

 

 今挙げた特徴は、戦時中に登場した国民歌謡に共通する作風です。その価値観が戦後の国民歌の製作時にも存在していた事が意外に感じる作品です。

 

 

 「バンドプロデューサー5」の分析では、「この日のために」はA♭メジャー(変イ長調)です。

 

 

曲情報

1962年 年間70位(邦楽)

 

 

レコード

 発売元:日本ビクター株式会社

 品番:VS-693

 A面

  「-東京オリンピックの歌- この日のために」

  作詞:鈴木義夫

  補作:勝承夫

  作曲:福井文彦

  編曲:飯田信夫

  歌:三浦洸一、安西愛子、ビクター合唱団

  演奏時間:3分37秒

 

  日本体育協会・東京都・オリンピック東京大会組織委員会 選定

 

  公募当選歌

  日本体育協会・オリンピック東京大会組織委員会

  東京都・文部省

  日本放送協会・日本民間放送連盟 後援

 

 B面

  「東京オリンピック音頭」

  作詞:山川茂男

  補作:佐伯孝夫

  作曲:馬飼野昇

  編曲:寺岡真三

  歌:橋幸夫、市丸、松島アキラ、神楽坂浮子、ビクター少年民謡会

 

  SONGS FOR TOKYO OLYMPIC

  JOC61-E-0105

 

参考資料

 「この日のために」レコードジャケット

 『ミュージックマンスリー』月刊ミュジック社

 「バンドプロデューサー5」

 

東京オリンピック関連のヒット曲

【1964年】

 

 

【2021年】