ヒット曲けんきゅうしつ

なぜヒットする?は証明できないと思います。誤字はちょっとずつ修正します。

「知りたくないの」菅原洋一(昭和42年)

f:id:hitchartjapan:20190626230455j:plain

流行時期(いつ流行った?)

 菅原洋一さんの「知りたくないの」は昭和42年(1967年)にヒットしました。

 

 『レコードマンスリー』のランキング推移を見ると、昭和42年に最も流行した歌謡曲であると思われます。

 グループサウンズが話題となった年ですが、ブームとは無関係に作品の良さが支持されたのでしょうか。

 

 6月から9月にかけて3位を記録していますので、この期間に最もヒットしたと考えられます。

 

集計日付 順位
昭和42年4月 21位
昭和42年5月 9位
昭和42年6月 3位
昭和42年7月 3位
昭和42年8月 3位
昭和42年9月 3位
昭和42年10月 10位
昭和42年11月 9位
昭和42年12月 14位
昭和43年1月 29位
昭和43年2月 27位

 

 11ヶ月ものあいだランクインする作品は稀です。この作品の場合、流行のピークを過ぎてからも5ヶ月間売れ続けた点が特徴です。

 

 菅原洋一さんにとっては初のヒット曲です。徐々に順位を上げていく速度、人気の火が付くスピードは他の流行歌と同じです。

 

 「知りたくないの」の流行り方の特徴は、作品が広く知れ渡った後でも多くの人の心に残ったと感じる推移をしている点です。「やっぱりこの曲は良い曲だ!」と感じた人たちがレコードの購入に至ったのだと推測されます。

 

 


菅原洋一 - 知りたくないの

注)YouTube に使用を許可しているライセンス所持者 UMG(Universal Music LLC の代理)

 

 

 

ヒットの背景に垣間見える「今日でお別れ」

 菅原洋一さんは、この作品がヒットした昭和42年から、3年後の昭和45年に「今日でお別れ」がヒットします。

 そして、その年のレコード大賞に選ばれる事になります。

 

 「知りたくないの」のレコードジャケットには、

 “最近では「今日でお別れ」、「嘆きのタンゴ」が大好評。”

 と、紹介されています。

 

 「『今日でお別れ』が記載されているという事は、もしかして再販盤のレコードかな?」と錯覚してしまいますが、実は「今日でお別れ」は昭和42年当時、話題となっていたようです。

 

 話題といっても、おそらくファンの間で、という小さな規模だったと思われます。結局、昭和42年のランキングには「今日でお別れ」はランクインしていませんでした。

 

 

日本語訳のシャンソン曲

 「知りたくないの」が、『レコードマンスリー』の歌謡曲部門のランキングにノミネートしている点は不思議に感じます。

 

 この作品は、洋楽曲「I REALLY DON'T WONT TO KNOW」に日本語訳をつけて吹き込まれた作品であり、時代は違えど“洋楽の日本語カバー=カヴァー・ポップス”ですので、ポピュラーに分類されるべき作品だと感じます。

 

 音楽の分類はあいまいなところがありますが、昭和42年の価値観では、「ポピュラー音楽=若者が支持する音楽」という解釈に変化していて、原曲が海外の作品であっても、大人向けの和訳シャンソン作品は歌謡曲である、と認識されていたのかも知れません。

 

 日本語で歌われるシャンソンは、昭和40年代中ごろにブームとなりました。その立役者は越路吹雪さんで、「ラストダンスは私に」(昭和38年、39年)や「サン・トワ・マミー」(昭和40年)が大変流行しました。

 

 和訳シャンソンは、なぜか作品が長期間支持される傾向にあります。楽曲の良さがジワジワと浸透するような売れ行きがヒットチャートに記録されています。

 

 このブームは、昭和41年も続いていたようで、岸洋子さんの「恋心(L'AMOUR C'EST POUR RIEN)」がロングヒットしています。

 

 おそらく、この流行で築かれたシャンソンの支持層が、昭和42年の「知りたくないの」を支持されたのだと考えられます。

 

 

男性が歌う女心

 ヒット曲の世界では、男性が女性の心理を歌う作品が登場する事があります。しかし、聴き手にとっては、男性が女性心理を歌っている事に違和感を覚える事はありません。

 昭和41年ごろから、歌謡曲系の男性歌手の作品で、このスタイルの流行が目立ち始めました。きっかけは、昭和40年にヒットした、バーブ佐竹さんの「女心の唄」であると考えられます。

 

 フランスの民族音楽であるシャンソンは、女性の恋心を取り上げた作品が多く、越路吹雪さん、岸洋子さんと女性歌手が続いて、次になぜ菅原洋一さんが支持されたのか?という疑問がありますが、“別に男性が女心を歌っていても違和感がない”と認識する時代になったのではないか?と考えます。

 

 

 バンドプロデューサーの分析では、「知りたくないの」はBメジャー(ロ長調)です。作詞家・なかにし礼さんにとっても初ヒット曲となった作品です。

 

 レコードには、A「恋心」、B「知りたくないの」と印刷されています。A面は岸洋子さんのヒット作となった「恋心」ですが、歌詞は異なります。

 どうやら、B面曲に支持が集まるタイプの流行を記録した作品と考えられます。

 

 

曲情報

1967年 年間1位(歌謡曲部門)

 

 

レコード

 発売元:日本グラモフォン株式会社

 品番:SDR-1149

 A面

  「恋心」

  原題:L'AMOUR, C'EST POUR RIEN

  訳詞:なかにし礼

  作曲:エンリコ・マシアス

  編曲:伊部 晴美

  演奏時間:3分38秒

 

 

 B面

  「知りたくないの」

  原題:I REALLY DON'T WONT TO KNOW

  訳詞:なかにし礼

  作曲:ドン・ロバートソン

  編曲:早川博二

  演奏時間:2分45秒

 

参考資料

 「知りたくないの」レコードジャケット

 『レコードマンスリー』日本レコード振興

 「バンドプロデューサー」